↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
37/65

俊蔭の娘(その14)

 わたくしは、自分が懐妊していたことを知り、一層悲しい気持ちになるとともに、はづかしい気持ちもあり、泣いていました。それを見て嫗が、

「はい、どういたしましょうか。嫗が知っているからには、困られることはありませぬ。御心配なさいますな。野山に分け入ってでも、御仕度は整えます。お子は、我が家の宝におなりでしょう。身二つになられましたら、この嫗が背負いましてでも、お子は育てて見せましょう。姫様のお子のためなら、たとえ骨になろうとも、甘い乳が出ましょうぞ。私の白髪も、黄金(こがね)、白銀(しろかね)となりましょう。どうしようもない、悲しいなどと思わないで下さい。ただお手を清めて神仏に、『安産でありますように』とお祈りください。また、嫗の長寿もお祈りください。」と、泣きながら言ってくれたのでした。


 嫗は、思いめぐらし、まず、嫗の子の片田舎で暮らしている者の所に行き、お産のときに必要な物を用意してきました。


 それから、何気ない様子で、

「留守の間は、いかがお過ごしでしたか。お屋敷の中に、何か、物と交換して役に立つ物がありますか。」と聞きました。

「さあ、どのような物なら、役に立つのでしょうか。」と言うと、

「何でもよろしいのです。ある物をどうにかして必要な物と交換し、お子を産み育てるのに使いましょう。」というので、とても美しく仕立てた唐鞍(からぐら)(儀式用の馬の鞍)を取り出しました。

「そうそう、これはとてもよく仕立てられています。他にも、何かありますか。」と言うが、

「他には何もみあたりません。」と言いました。


 嫗は、この鞍を持っていき、これを売って、絹や布などを買って、準備を整えました。食事はわずかにして、出産の準備のみを心がけて進めていました。わたくしは、荒れた屋敷で、子を産むという自覚もなく涙を流している間に、嫗がすべての準備を終えていました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。