俊蔭の娘(その8)
夜が明けて来たので、いつまでもこうしていることもできないと、若小君は、嘆かれます。まだ元服もなさっておられぬ身では、親が女君のもとに通うことを許されるわけもないのです。
「ああ、どうすればよいのであろうか。今日くらいは、このままここでこうしていたいのだが。父は、同じ家に居てさえも、片時も傍から離されない。ほんのちょっとした訪いにも連れていかれる。昨日は、気分が悪かったので、参拝するまいと思ったのに、どうしてもといわれるので、お供したのであった。今思えば、ここに来るべき運命であったのだ。たとえ夢でも、あなたをおろそかにする心はないのですが、ここまで来ることはできないでしょう。」と若小君は、おっしゃって嘆かれました。
わたくしは、
「秋風の 吹くをも嘆く 浅茅生に いまはと枯れん 折をこそ思え」
(秋風が吹く浅茅生の寂しさを嘆いておりましたが、今はこれまでと、その浅茅生さえ枯れてしまうことを思うと、耐えられません。)とほのかに口にしたのでした。
「あなたの事と、父母の事と、どちらも思い悩んでしまいます。
葉末こそ 秋をも知らめ 根を深み それみち芝の いつか忘れん
(葉先は秋の訪れを知るでしょうが、木の根は深く息づいています。あなたに飽きてこの根(共寝)のことを忘れ、ここへの道を忘れることなどありません。)
わが君、わたしをいいかげんな男と思わないで下さい。元服し、親に遠慮しなくてもよくなるまでの間です。」と若小君は、おっしゃって起きだされました。




