俊蔭の娘(その7)
「あなたが、趣深く寂しそうに一人おられる姿を垣間見ましてより、あなたの事を恋しく思っておりましたが、このように近くでお会いしましたからには、何千重ねにも、心が強く揺さぶられるような気持ちでいます。父母のもとに帰りたいとは、まったく思いませんが、父母は、わたしがいなければ大騒ぎをなさるでしょう。」とおっしゃいます。そして、
「こうなりましたからには、隠し事はなさいますな。こうなる前世からの定めであったのでしょう。あなたをお世話したいのですが、先ほど申し上げたように、わたしには親がおります。父は、内裏に参上するのさえ、わたしとはなれるのを不安に思われるほどですから、昨夜から姿が見えず、大騒ぎをしているでしょう。まだ、女性のもとに通ってはいなかったので、うまくここに通ってくることができません。しかるべき後、ここに参ろうと思うのですが、あなたはここに本当にずっといらっしゃるのですか。親はいらっしゃるのですか。誰かここに通ってくる恋人がおありなのですか。ありのままにお話しください。」と尋ねられる。恥ずかしく思いながら、
「親がおり、世話をしてくれる方がおれば、このようなところに、仮にでも、一人住んでおりましょうか。このままここで朽ち果てるよりほかにどうしようもないのです。」と答えますと、
「それはともかく、どなたのお子なのですか。もし心ならずも。ここに来ることができなかったとしても、あなたのお名前をしっかり憶えておきたいのです。」とおっしゃるのですが、
「世に知られぬ人でしたから、ご存じないと思います。」とだけお返事をし、涙を流しながら、ひたすら琴を弾いておりました。




