俊蔭(その3)
唐土に向かったのですが、大風が吹いて、三隻あった船のうち、二隻は破損してしまいました。たくさんの人が海に沈み、我が船は、波斯国(東南アジアの島国)に流されました。
その国の渚に打ち上げられて、どうしようもなく、悲しく思い涙を流しながら、
「七歳より我がお仕え申し上げている観世音菩薩よ、現れたまえ。」
と念じると、鳥も獣もいない渚に、鞍を着けた黒馬が現れ、踊り歩いていななきました。
わたしが七たび伏し拝むと、その黒馬は走り寄ってきて、さっと私を鞍に乗せ、飛ぶように走り、涼しい栴檀の木陰に虎の皮を敷いて三人の人物が琴を演奏しているところに下ろして、消えたのです。
わたしは、林のもとに立っていました。すると、三人の人物が、
「あなたは、どういうかたですか。」と聞きました。わたしは、
「わたしは、日本国の帝の使いで、清原の俊蔭という者です。実は、かくかくしかじか…」と答えました。
三人は、
「それは気の毒な旅人のようですね。しばらく宿を貸しましょう。」と言うのです。そして、木のかげに、おなじく虎の皮を敷いてくれたのです。
わたしは、日本の国に居たときから、もっとも好んでいた楽器は琴でしたので、この三人がひたすら弾いている琴を習って全ての弾き方を習得したのでした。
(この物語が、平安時代のファンタジーらしくなってきましたね。ちなみに、『竹取物語』は、宇宙人がやってきて、超能力を使う平安時代のSFです。)




