俊蔭(その19)
娘が四つになる年の夏ごろ、成長も早く大きくなって、聡明で気立てもよく、稽古ができるようになりましたので、わが身を捨てる思いをして習った琴をこの娘に習わせようと思いました。
かの波斯国から持ち帰ったことを取り出しました。なん風、はし風の二面の琴は誰にも知らせず、山の人に名付けられた十面の琴を取り出しました。そして、
りゅうかく風ふは、娘のものにしました。
ほそお風ふは、自分のものにしました。
やどもり風ふは、残しておくことにしました。
残りの七つを持って、内裏に参上しました。そして、
せた風ふは、帝に献上しました。
やまもり風ふは、后に献上しました。
はなぞの風ふは、春宮に献上しました。
みやこ風ふは、春宮の女御に献上しました。
かたち風ふは、左大臣忠経に献上しました。
おりめ風ふは、右大臣千蔭に献上しました。
(なぜか、あわれ風のことを言い忘れています。帝の女御は何人かおられたから、その方かしら。)
帝が琴を弾いてみられますと、驚くべき音が鳴った。帝は、
「この琴らは、どうやって造ったのか。誰も手を触れないで長い時がたったのに、音が弱くもならず、七つとも同じ音が出るのは、どのように調律したのか。」とおっしゃる。
(琴は、弾く前に七本の弦を一本ずつ調律する必要があります。)
わたしは、これらの琴を得た経緯を詳しく申し上げました。帝はたいそう驚かれて、感嘆されること限りないご様子でした。




