俊蔭(その13)
七つ目の山のあるじが言うには、
「おのれは、天上からいらっしゃった人の御子である。その天女は、この山に降臨し、七年住まわれた。一年に一人ずつ御子を産み、同胞は七人となった。ところが、おのれらが生まれたばかりのころ、幼きおのれらを見捨てて天上に帰ってしまわれた。おのれらは、花の露を吸い、紅葉の露をなめ、育ったのだ。母は、風の便りもなく、誰にも知られず、この地におのれらをとどめ、何十年も訪れることがない。かすかに、ここより東の花園に春と秋とに天から下ると聞く。あなたが花園から来たということで、母恋しさに、娑婆世界のひとであるのに、こうして会うのだ。」ということでした。
わたしたちは、琴を八つ並べて、七日七夜弾きました。この響きが仏の御国まで聞こえ、仏が文殊菩薩に、
「この東、娑婆世界より西で、天女の植えた木の音がする。急いでいき、見てくるように。」とおっしゃたので、文殊菩薩は獅子に乗って瞬時にここに来たのです。
「汝はどういう人であるか。」と問われるので、山のあるじは、
「おのれらは、昔、弥勒菩薩のすみかである兜率天の内院にいた衆生です。ちょっとした罪を犯し、三十三天の天女を母としてこの世に生まれました。しかし、七人の同胞は、同じところには住むことかなわず、会うことも難しかったのです。そうであったのに、母の下る花園より渡ってきた人の懐かしさに、七人の同胞が集まって話を聞いているのです。」と申し上げる。
それを聞き、文殊菩薩が仏にそれを申し上げると、仏は、文殊菩薩を連れて雲の輿(かぐや姫も乗った空を飛ぶ乗り物)に乗ってこちらに渡って来られました。




