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上野の宮(その6)

 このような謀(はかりごと)を、父左大将正頼様が耳にされ、大笑いをされました。

「わたしを取るに足りないものだと思って謀(はかりごと)をされたに違いない。どうして諮られてなどいられようものか。」とおっしゃって、家司である滋野和政の少将に、

「道隆寺で上野の親王が盛大な法会を営まれるそうであるから、政所の家司たちを遣わして、見物の場所を取らせよ。若い娘たちに見物をさせよう。」とおっしゃいました。


 和政の少将は、そのお寺に行って、正面の一番良い席を取りました。すると、上野(かんづけ)の宮の家来たちが、

「わが宮に対して扱いの悪い方になど、どうしてよい席を取らせて差し上げることができましょうか。」というので、和政は、

「ただ、御車一台ばかりの事です。中の御殿の姫君(あて宮)が、『おもしろそうな法会ですね。』とおっしゃって、見たいとおっしゃいますから。」というと、

「よろしい。『仇(あだ)には、徳を持ちて当たれ』と言うからな。」と言って、よい席を取らせたそうです。


 その法会の日になって、下仕えの者の娘で、年若く器量の良い人を選んで、美しい装束を着せ、牛使いの娘を二人、木こりの童女《わらわめ》を一人つけて、黄金の金具で装飾した牛車に乗せられました。枇榔毛(びろうげ)(枇榔の葉で装飾した牛車)のくるま二台には、左大将正頼様の女房達を載せて出立しました。


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