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孤高の才女は毒に溺れる  作者: kuroyomi4


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協力者

 少しした後、病室のドアがノックされる。

 時間的に東野が来たのだろう。


「どうぞ」


 ドアが開いて人が入ってくる。

 60歳にしては高身長で白髪の男性。

 いつもスーツをしている姿しか見ていなかったので私服を見るのは新鮮だ。


「失礼します」


「東野、久しぶり......ってほどでもないわね」


 あの日々が地獄で東野と離れたのが1ヶ月ほど前の事のように感じる。


「目が覚めて本当に良かったです」


 東野にも相当心配をかけただろう。

 最後にあった時よりやつれている。


「心配をかけてごめんなさい。もうこんなことはしないと誓うわ」


 頭を下げ、謝罪をする。


「どうか頭を上げてください。私は今、こうやって敦那様が生きているだけで充分ですよ」


「東野......」


 優しく子供に対して間違いを許すときのような声でそう言う。


「それに、私が言わなくても茉莉様が充分言ってくれたでしょう」


「はい!ちゃんと言ってやりました!」


「なら私から言うことは何もありません」


 東野と彼女はずいぶん仲が良くなっているようだった。

 仲良くなってくれるのはうれしい。

 二人とも私にとって大切な人だ。


「東野、茉莉さん、聞いてほしいことがあるの」


 私は真剣な眼差しで二人を見る。

 二人も私の方に向き直り、背を正して聞く姿勢を取ってくれる。


「これから話すのはあの日私がされた事。そして、死のうと思ったきっかけになった出来事よ」


 私はあの日あった事を話し始める。

 私が着た服の事、映画館の話、食べたものの事、その後に行った場所の事。

 順を追って一から話す。

 話している間は二人とも静かに聞いてくれる。


「その後は......」


 言葉に詰まる。

 そう、この後私は。


「原田に......ホテルに......連れてかれて.......」


 駄目だ。

 あんなこと思い出したくないし口にしたくない。

 でも、言わないと。

 何があったか知ってもらわないと。

 頑張って口を動かす。


「そこで私は」


「もういいよ、しののん。それ以上は言わなくて良いから」


 彼女が私の手を握る。

 苦しそうな顔をしている。


「それ以上は言わなくて大丈夫ですよ。私達も敦那様の反応を見て理解しました」


「つらいなら無理に話さなくていいんだよ」


 二人は私が言おうとしている事を理解してくれた。

 深呼吸して気持ちを落ち着ける。


「ごめんなさい。トラウマになってしまったみたい」


 私の口から語れなくても知ってもらわないといけない。


「これが二人が知らないあの日あった事よ。その後は抜け出して死のうとした」


 あの日あったとこを話し終わる。

 ここからが本題だ。


「東野、私はここまで追い詰めた奴らに復讐することを決めたわ。復習をすると言っても命を奪ったりするわけじゃない」


 私の目的を達成するためには東野の協力が必要だ。


「私を助けてほしい。もちろんこれは命令じゃないから拒否してくれとも構わないわ」


 もう私と東野は主従関係ではない。

 でも、東野なら。


「敦那様はなぜ復讐をしたいと思うのですか?」


 私が復讐したい理由。

 もちろん、今まで私にしてきたことの報いを受けてほしい。彼らも地獄を味わってほしい。

 でも、一番は。


「私は、東雲 敦那として生きたいの。東雲 菊の娘としてでも原田一真の許嫁としてでも無く。一人の人間として」


 そう、もう私は物として生きるのは止める。

 この復讐は過去との決別のためでもあるんだ。


「そんな心配そうな顔をしないでください。私は敦那様が幸せになれるのなら何でもします。あなたの幸せが私の幸せですから」


 東野は快く承諾してくれる。

 やはり東野だけはあの家で私の味方だった。


「ありがとう。あなたが手伝ってくれるとものすごく助かるわ。これからもよろしくね」


 私は右手を差し出す。

 彼は驚いた顔をしたが、すぐに嬉しそうな顔になり左手を差し出してくれる。


「よろしくおねがいします」


 私達は握手を交わす。


「では、私はお医者様の話を聞いてきます」


「ありがとう」


「いってらっしゃ~い」


 東野が部屋から出ていく。

 また私と彼女、二人きりになる。


「良かったね。東野さんが承諾してくれて」


「ええ、本当に良かったわ」


 東野は絶対に必要だった。

 私の復讐のメインとなるものを用意するために東野の人脈が無いといけない。


「復讐、うまくいくと良いね」


「そうね、これは絶対にやり遂げるわ」


「私達もいるからね。全部一人で背負わないでね」


 彼女は私のメンタルを安定させてくれる。

 彼女もこの計画に必要不可欠な存在。


 プルルルル......プルルルル......


 彼女のケータイから着信音が流れる。


「あ、ママだ。多分着いたんだと思う」


「迎えに行ってあげたら?」


「そうする~。ママ、着いた?うん_______」


 電話しながら部屋を出ていく。

 少しすると彼女が母親を連れて部屋に帰ってくる。


「はじめまして、東雲敦那と言います。この度は命を救っていただきありがとうございます」


 私はベッドから立ち上がり、深々と頭を下げる。

 少しふらついてしまうと彼女が私のもとに来て支えてくれる。


「大丈夫?」


「ええ、ごめんなさい」


 不甲斐ない。


「敦那さん、頭を上げて。助かって本当に良かったわ」


 顔を上げて彼女の母親を見る。

 髪は黒髪で、顔は彼女によく似ていて歳は私の母親より若く見える。


「茉莉からよく話は聞いててね、元気になったっていうからあいさつしに来ちゃった。迷惑じゃなかった?」


 彼女より落ち着いた雰囲気の人だ。


「いえ、全然。私もお話ししたいと思っていたので」


「なら良かった。私は橋本(はしもと) 優子(ゆうこ)よ」


「優子さん、少し聞いてほしい話があります」


 私は、東野と彼女にもした話をまた話し始める。

 あの部分は彼女が補足をしてくれて優子さんも理解してくれた。

 聞き終わったころには彼女も苦しい表情を浮かべていた。


「敦那さん、あなたはまだ幼いのにそれほどの地獄に耐えて生きてきたのね......」


 優子さんは私の境遇を重く受け止めてくれる。


「つらかったわね。私にできることがあったら言ってね。できる範囲の事は手伝ってあげるわ」


 親子は同じようなセリフを言ってくれる。

 彼女たちは本当に優しい。

 だから、私も正直に話そう。


「優子さん、茉莉さんは私を助けてくれると言ってくれました。しかし、これからの道は想像できないようなことが起きます。危険な目に合うかもしれません」


 娘がまだ出会って間もない人間を危険をはらんでまで助けようとしている。

 このことは母親なら知っておくべきことだ。


「もし優子さんが駄目だと言うのであれば、私はもう彼女とは関わらないようにします」


「ちょっと、しののん」


「いいから。優子さん、茉莉さんを私の事情に巻き込んでも構わないでしょうか」


「いいわよ」


「え?」


 あまりにも即答だったので思わず声に出てしまう。


「茉莉が助けたいと言うんだったら私は何も言わないわ」


「でも」


「第一、もう命を救ってしまった時点で後戻りなんてできないでしょ?」


「それは......」


 確かにそうだ。


「いいんだよ、私もあなたの話を聞いて助けるのなんてやめなさいって言えないわよ」


「ありがとう。ママ」


「茉莉、足を踏み入れたんなら最後まできちんとやり通すのよ」


「うん」


「でも......」


 そう言って優子さんは私と彼女を抱きしめる。


「あんたたちはまだ若いんだから、私たち大人を存分に頼りなさい!」


 優子さんも暖かい。

 彼女と同じ温もりだ。


「ありがとうございます」


「うん!」



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