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孤高の才女は毒に溺れる  作者: kuroyomi4


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会話

 彼女のスマホに東野から連絡が来る。

 あと10分ほどで到着するとのこと。


「東野さん、しののんが行方不明になってから誰かにつけられてるらしいよ。元使用人だったから疑われてるんだろうね」


 ここに来ているのをばれないように色々やっているため遅くなっているらしい。

 東野には迷惑をかけてばっかりだ。


 後10分、その間この病室には私と彼女の二人きり。

 さっきの会話をした後なので少し気まずい。

 何か話題はないかと思っていると窓の方から甘い匂いがする。


 この匂いは?

 窓の方を向くと先ほど彼女が花瓶に入れていた花が目に入る。

 あの花の匂いが風に乗ってこちらに来たのだろう。

 何て名前の花なのだろう。

 そういえば起きて最初に言ったのもこのことだった。

 答えるどころじゃなかったけど。


「ねえ、あの花なんて名前なの?」


 彼女にもう一度同じ質問をする。


「あの花はね、イエロージャスミンっていうんだ~」


「良い匂いね。私は好きよ」


 人によっては嫌いな匂いだと思うが私は好きだ。


「私も好き~。あと明るい感じが良いよね、元気になるって言うか」


「そうね」


 ジャスミンの和名は茉莉花であなたの名前は茉莉。

 花弁は黄色、髪は金髪。

 両方とも明るくて元気になる。

 まるであなたみたいね。


「気に入ってくれた?」


「ええ、ありがとう」


「よかった~」


 嬉しそうだ。


「そういえば、私のスマホってどうなったの?」


「う~ん、私は知らないな~。病院まで付き添えなかったからそこらへん全然分かんないんだよね」


「そうなのね」


「東野さんが付き添って色々手続きとかしてくれたらしいから東野さんなら知ってるかも」


「来たら聞いてみるわ」


「それが良いと思う」


 スマホの中にあった写真や動画などのデータはクラウド上に保存してあるので、そこ辺りは大丈夫だ。

 連絡手段が無くなるのは痛いが。


「そういえば東野さんに連絡はしたけど、ママに連絡するの忘れてたや。ちょっと電話してきてもいい?」


 彼女はスマホを持って部屋から出ていこうとする。


「別にここで電話してもいいわよ」


「他にも話したいことがあるから外で話してくるよ。東野さんが来る前には戻ってくるね」


 やんわりと断られてしまった。


「いってらっしゃい」


 彼女が部屋から出ていく。

 部屋が静かになる。

 前までは静かな方が好きだったが、今は少し寂しく感じる。

 目覚めたばかりと言うのもあるだろう。


 改めて辺りを見渡す。

 一般的な一人用の病室。

 私の腕には点滴の管がつながっている。


「これは?」


 ベッドの横にある机の上に本が置かれている。

 手を伸ばして本を取る。

 ブックカバーがされており、題名は分からない。

 本を開いて確認する。


「これは......」


 この本は私が彼女に渡したやつだ。

 なぜか分からないが栞が何か所もある。

 彼女はこの本を最後まで読んだのだろうか。


「そういえば感想教えてって言ったわね」


 本をもとの場所に戻し、窓の外を眺めならがら黄昏る。


「夕日で赤く染まっていて綺麗だと思えるのも命があるからなのよね」


 駄目だ、今の私はとてもセンチメンタルな気分だ。

 空がきれいだとか静かで寂しいだとか、今まで思わなかったことも感じるようになっている。

 今ならこの私でも恋愛小説が書けるかもしれない。


「まあ、無理か」


 私は付き合った人もいなければ人を好きになったこともない。

 何なら男性に対しては嫌悪感しか抱いていない。

 あの時の事はもう思い出したくないし経験したくない。


 そんなことを思っていると病室のドアが開く。

 スマホを耳に当てたまま彼女が入ってくる。

 どうやらまだ通話中のようだ。


「しののん、ママが挨拶したいから今からここに来ていいかって言ってるんだけど大丈夫?」


 電話しながら帰ってきたのは確認のためだったらしい。

 私も挨拶したいと思っていたからちょうどいい。


「いいわよ、私もお話ししたいから」


「オッケー。ママ、良いって~」


「うん、わかった。は~い、じゃまた~」


 スマホを耳から離す。

 彼女が部屋を出て行ってから3分ほどたっただろうか。

 思ったより早く帰ってきた。


「早かったわね、話すことは終わったの?」


「うん、別に今話さなくてもいつでも話せるしね。それにしののんが一人で寂しくならないように早く帰ってきたんだよ!」


「別に寂しくなんかなかったわよ。逆に静かになって良かったくらいよ」


 なんで彼女は私が思っていることをそんな簡単に当てれるのだろう。

 本当にやめてほしい。


「うんうん。やっぱりしののんはこうじゃなくちゃね」


 彼女は私がきつく言ったことに対して腕を組んで頷いている。

 私がいつも彼女にきつく言っているみたいな言い方だ。

 いや、いつも言っているか。


 これからは言い方も気を付けていこう。


「なによそれ」


 そう思うが今までそういう言い方しかしてこなかったので簡単に治りそうにない。


「調子が戻ってきたみたいで良かったってことだよ」


「あっそ」


 私は不貞腐れたように彼女から顔をそらす。


「ごめんって~冗談だってば~」


 見えてはいないが彼女が後ろであたふたしているのが分かる。

 別に怒っていないしちょっとからかってみようと思っているだけだ。


「別に怒ってないわよ、私も冗談言っただけ」


 顔を元に戻す。

 彼女は少し驚いたような嬉しそうな顔をしていた。


「しののん、やっぱり変わったね」


「ええ、これからはもう我慢なんてしないから」


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