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孤高の才女は毒に溺れる  作者: kuroyomi4


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地獄

 部屋の扉がノックされて使用人が入ってくる。


「敦那様、晩御飯の準備ができました」


「分かった、あとこれからは部屋に入ってこないで。要件があったら扉の前で言って頂戴」


「かしこまりました」


 使用人に連れられて部屋に行くと、原田と彼の両親が既に席に座っていた。

 どうやら、私を待っていたみたいだ。


「遅くなり申し訳ございません」


 謝罪をしながら席に座る。


「いやいや、大丈夫だよ」


 それぞれの前に料理が並ぶ。

 ステーキやスープなど洋食が多い。


 皆、何も言わずに食べ始める。


「いただきます」


 私も食べ始める。


 味が濃い。ステーキも脂が多くて気持ち悪い。


「美味いな」


 彼の父が料理をほめる。

 他の人もそれに同意する。


「そういえば聞いてよ、今日さ____」


 彼らは会話を始める。

 今日あった事、最近の出来事、あの人がうざい嫌い、金が政治が、なんでも。

 うるさい。

 彼らは会話の所々で笑っているが何が面白いのか分からない。


 半分ほど食べると満腹になる。

 東野の作った料理ならこの量以上に食べれた。

 あの優しい味。


「すみません、少し気分がすぐれないので部屋に戻らせていただきます。ごちそうさまでした」


 彼らの返事を聞かずに席を立ち、部屋から出る。

 作ってくれた人には申し訳なかったが私の口には合わなかった。


 部屋に戻りベッドに横になる。

 満腹になっただけではなく、少し気分がすぐれないのも事実だ。


 たった数日前に当たり前だった東野の料理がもう食べれなくなってしまった。

 これからはずっとあの味。

 金持ちのための豪華な見た目の料理。


「敦那、いるかい?」


 部屋の外から原田の声が聞こえる。

 何をしに来たんだろう。


「いるわよ、何?要件があるなら部屋に入ってこないでその場で言って」


 そう言ったにもかかわらず彼は部屋の扉を開けて入ってくる。


「話聞いてた?入ってこないでって言ってるの」


 私はベッドから起き上がり、彼を睨みつける。


「まあまあ、そんな怖い顔をせずにさ。僕たち許嫁じゃないか」


 彼は許嫁と言う言葉をよく使う。

 自分の立場を簡単に示せるからだろう。

 私が否定したって変わることの無い事実。


「要件は何なの?」


 もういい、どうせ言ったって出ていかないだろう。


「いや、急に出て行ったから心配してさ」


「少し気分がすぐれないだけよ、急に出て行ってごめんなさいね。要件はそれだけ?終わったのなら早く出て行って」


「もう少し愛想よくしてくれよ、頼むからさ」


「なんで?好きでもない相手に愛想よくする必要ないじゃない」


「本当にお前は......」


 言葉を強めながら私の元へ歩いてくる。

 いつもの彼と違う、怒っているのか?


「な、なによ......って痛い!」


 彼は私の髪の毛をつかむ。


「よく聞けよ、お前は俺のなんだ。お前に拒否権は無いし自由なんて無い」


 私の目を鋭く見つめながら怒りに満ちた表情でそう言う。

 怖い、痛い。

 自分では敵わない相手だと分からせられる。


「お前は俺の言うことだけ聞いとけばいいんだよ。分かったか?」


「......」


「分かったなら返事しろよ!」


 目の前で怒鳴られる。


「は、はい」


 答えると掴んでいた髪の毛を離され床に倒れる。

 体の震えが止まらない。


「なんだ、ちょっとは可愛らしいところもあるんだな」


 彼に見下ろされる。


「飯も残さず全部食べろよ、いいな?」


「はい、ごめんなさい」


「あと、さっさと風呂に入れ」


 彼が部屋から出ていく。

 あれが彼の本性なのだろう。

 人を力で服従させ、自分のものにする。


「お風呂、入らなきゃ」


 体の震えを抑えながら風呂場に行く。


 さっきのことが思い出される。

 まだ体の震えは無くなってはいない。


「怖い、誰か助けて......」


 自分しかいない浴槽で虚しく響き渡る。

 誰にも届かないまま、消え去る。


 風呂から出た後は部屋に素早く戻り、ベッドに布団を被って横になる。

 怖いものを見た子供みたいに。


 それからはいつの間にか眠っていたらしく、スマホのアラームで目が覚めた。


 朝食を食べて、支度をする。

 登校の送迎は家の使用人がやってくれる。

 彼はやらないといけないことがあるらしく、先に行っている。

 良かった、彼も一緒じゃなくて。


 学校に着くと皆からの視線がいつもに増して多い。

 昨日の校門前での一件と一緒の車に乗って帰ったせいだろう。


 クラスに入ると全員が私の方を見る。

 流石にこれだけの視線を一気に向けられると少し怖い。


 何ともない顔をしつつ席に座り、横を見る。

 彼女は来ていない。

 いつも私が先に着くからいつもの事だ。しかし、今日は予鈴が鳴っても彼女は来なかった。

 先生曰く風邪をひいたらしい。

 私のせいだ。でも、彼女が来たとしてなんて話せばいいのか分からないし、そもそも話してはいけない。


 昼休みは彼が来ると思ったが来なかった。

 来るかもしれないという事だけで私の怯えていた。

 どうやら私は彼に恐怖で支配されてしまったようだ。


 帰りは彼が教室まで来て「一緒に帰ろう」と言ってきた。

 私は素直に受け入れ一緒に帰った。


 晩御飯は今日も味が濃く脂っこいものが多かったが彼の昨日の言葉を思い出し、すべて食べた。

 食べた後は気分が悪くなり、吐きそうになったのでトイレに駆け込み吐いた。

 苦しい、辛い、怖い、寂しい。

 こんな地獄みたいな生活を私はこれからずっとしていくのか。

 

 それならいっそ......と考えるがそんな勇気、私にはない。


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