予感
「ただいま!」
「おかえり~どうだった?」
帰ると母が洗濯物を畳んでいた。
私は畳むのを手伝いながら今日の出来事を話す。
「まずね、しののんの私服めっちゃ綺麗だったの!もうなんかそこだけ雰囲気違うって言うか、おんなじ人間とは思えないくらいだったんだ~」
「東雲さんの写真とか無いの?」
「あるけど、その話になった時に見せるからもうちょっと待ってね~」
「はいはい。で、映画はどうだったの?」
「それがね、物語の構成とか映像は良かったんだけど役者の演技が下手くそでね!もうホントに台無しって感じだった」
「そうだったの、それは残念ね」
「しののんもめっちゃ怒ってて、ご飯食べて発散しようとしてさ」
「で、入ったお店がもうすごかったの!料亭って言うのかなああ言うお店。なんかしののんがよく行くお店らしくて入ったらすぐ個室に案内されたんだ~」
「さすが、お嬢様って感じね。お金は大丈夫だったの?」
「ね~。ご飯も全部めっちゃ高くて名前も聞いたことない料理ばっかだったから、しののんと同じの頼んだの。これ写真」
私は彼女と料理が映った写真とツーショットの写真を見せる。
「すごいわね、ママも初めて見たわこんなに豪華な料理。東雲さんも美人さんね、茉莉の言ってることも分かるわ」
「でしょ~。お金はしののんが出すって言ってくれたんだけど、お店の大将がいつもお世話になってるからお金はいらないって言ってくれてタダで食べれちゃった」
「すごいわね、私達とは住む世界が違うって感じがするわ」
洗濯物を畳終わって母がタオルを洗面台に置きに行く。
母は彼女に関心を越えて少し引いている印象だ。
「そうかな~。別にしののんは普通だよ?」
「ご飯食べた後は私がいっつも服買ってるお店の系列店に行って、しののんのに似合う可愛い系の服選んであげたんだ~」
「すっごい似合うやつがあってしののんも気に入ってたからプレゼントしちゃった」
母からもらったお金で人にプレゼントしたことに少し罪悪感があったためお金の使い道は正直に話す。
「あげたお金はあんたが好きに使うためにあげたのだから、別にそんな申し訳なさそうに言わなくてもいいわよ」
「ありがと」
母なら否定はしないと分かっていたが、だからと言って言わなくていいわけではない。
「服を見た後は何したの?」
「その後はゲーセン行ってレースゲームとかUFOキャッチャーとか色々遊んだよ。しののん、ゲーム上手で私全然勝てなかった~」
「茉莉が下手すぎるだけじゃない?」
「それしののんにも言われた、私ってそんなに下手なのかな」
確かにいつも皆とゲームで遊ぶときは私が最下位だ。
私ってゲーム下手なんだ。
「まあ、そんなことはどうでもよくて。駅でサヨナラするときにしののんからプレゼント貰ったの!」
「良かったじゃない、何を貰ったの?」
「じゃ~ん、今日見た映画の小説!私が読みたいって言ったらトイレ行くふりして買ってきてくれたんだ~」
私は彼女からもらった小説を前に掲げる。
「茉莉に小説の面白さを知ってほしかったんでしょうね。可愛い子じゃない」
「でしょ~」
そう私が誇らしげに言うと、母はクスリと笑う。
あんたは彼女の何なのよ。とでも言いたそうだ。
「最後に握手して解散したんだけどね、しののん前より暖かくなってた!」
そう、今日私はこれが一番うれしかった。
もちろん、小説を貰った事や次遊ぶ約束をした事もうれしかった。
「それって、ただ遊んだ後で体温が上がってたんじゃないの?」
「それでも、前より暖かくなってた!しかもしののん楽しそうな顔してたし!」
楽しそうな顔と言っても少し口角が上がっていただけ、温度も体温というより彼女の周りの温度が。
「じゃあ、これからも頑張りなさい」
「うん!次遊ぶ約束もしたし!」
「そうなの、良かったわね」
母は驚いた表情をしている。
それもそうだ、私も彼女からまた遊ぼうと言われるだなんて思いもしなかったのだから。
でも、また次がある。
そう思うだけで嬉しい気持ちになる。
小説も早く読んで感想言いたいな。
「小説読みたいなら呼んでいいわよ、今日は私が晩御飯作るから」
「いや、いいよ。しののんからもゆっくりでいいって言われたし」
「そう?読みたいって顔してたけど」
ばれてら。
でも、ママも休日だしゆっくりしてほしい。
「ママはテレビでドラマでも見てて。私がご飯作るから」
「じゃあ、お言葉に甘えようかな」
「まかせんしゃい」
ご飯を食べ、お風呂に入ってあとは寝るだけ。
「楽しかったな~」
ベッドに横になる。
やらないといけないことがあったような気がする。
思い出さなくていい。
そういえば月曜日くらいに台風直撃するんだっけ。
帰るときもなんだか嫌な感じも空模様だったし。
でもいいや。
今日は余韻に浸っていたい。




