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孤高の才女は毒に溺れる  作者: kuroyomi4


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遊びに行く①

「それでは敦那様、楽しんできてください」


「ありがとう、帰るときになったら連絡するわね」


 東野に駅前まで送ってもらい、車から降りる。

 今日は晴れている。

 快晴ではないが程よい感じで雲があるおかげで暑くもないし過ごしやすい。

 これなら体調の心配もしなくていいだろう。


 猫の銅像のところまで歩く。

 時刻は9時10分。渋滞などを考慮して少し早い時間から出たが何の問題もなく、予定より早く着いてしまった。

 彼女から着いたという連絡も来ていないし銅像近くのベンチに座って待っていよう。


 スマホを取り出し彼女にLONEする。

『着いたわ』

『銅像近くのベンチに座って待ってる』


 送信するとすぐに既読が付いた。

『はやっ!』

『私は今電車にのってるよ~』

『あと5分くらいで着くよ~』


 あと5分か。

 何をするにも微妙な時間だ。

 適当にスマホで時間をつぶすとしよう。



『駅着いた!』

『もうちょっとでそっち着くからね~』

 彼女からだ。


 駅の方に視線を移すと、彼女らしき人がこちらに向かって走ってきているのが見えた。

 そんなに急がなくてもいいのに。


「しののん、おはよ!」


「おはよう、そんなに走ってこなくてもよかったのに」


「大丈夫だよこれくらい」


 確かに走ってきたというのに息も切らしてないし疲れた様子もない。


「しののんって私服そんな感じなんだ~」


「そうね、昨日あなたに貸したのは部屋着だから」


 上は白のシャツに黒のカーディガンを羽織って下は黒のパンツ。

 黒を基調としたシンプルなマニッシュコーデ。

 可愛い系の服は私に合わないため、基本的にマニッシュコーデだ。


「いいね!大人のかっこいい女性って感じ」


「ありがとう、あなたはイメージ通りって感じね。似合ってるわよ」


「かわいいでしょ~。これ、私のお気に入りなんだ~」


 彼女はアプリコットカラーのブラウスにグリーンのオーバーオールワンピース。

 ガーリー系のコーデ。

 メイクもコーデに合わせた可愛らしいものになっている。

 髪は結んでいない。


「私はそういう服は合わないから少し羨ましいわ」


「そんなことないと思うよ!ご飯食べた後、私がいつも服買ってるお店が近くにあるからそこ行こうよ。しののんに似合う服を私が見繕ってあげる」


 すこし興味もあるしお願いしようかな。


「お願いしようかしら」


「まかせなさい!じゃあ、まずは映画館へゴー!」


「チケットは私の方で取ってるから」


「ありがとう、いくらだった?」


「お金は良いわ、私が見たかった映画を見るんだから」


「良くないよ、そういうのはちゃんと貰わないと。はい、これくらいでしょ?」


 彼女は財布から千円を取り出し渡してくる。

 渡されたものを断るのは失礼なので受け取ることにした。


「わかったわ、ありがとう」


「よろしい」


「そういえば、今日見るのってどんな映画なの?」


「そういえば言ってなかったわね、今日見るのはミステリー小説が原作の映画よ。解体屋っていうのだけれど聞いたことある?」


「前に映画の予告で流れたような気がする。でも、忘れちゃった」


「小説は表現の仕方や終盤にかけての伏線の回収がすごくきれいでね、私もすごい勉強になったし面白かったから好きなのよ」


「へ~、映画だったらどういう風になってるのか楽しみだね」


「そうね」


 話しているうちに映画館についた。

 チケット販売所でチケットを発行する。


「はい、これチケット」


「ありがと~、しののんって映画見る時にポップコーンとか食べる派?」


「いいえ、映画に集中したいから買わないわ」


「私も~」


 映画の上映時間までまだ時間があったため、グッズコーナーでパンフレットを購入した。

 彼女も欲しいグッズがあったようで買っていた。


 映画上映のアナウンスが流れ、案内されたスクリーンへ向かう。

 あまり人がいないので静かな雰囲気で映画に集中することができる。

 席は中央列の階段側に座る。


 映画の予告が流れ、映画が始まる。



 エンディングが流れ終わり、照明が付く。


「お昼は私が決めていいかしら」


「うん......いいよ」


 私はいつも東野と行く店に向かう。

 映画館から出て5分ほど歩くと店に着く。


 ここの店は行きつけなので、いつ行っても決まった個室に案内してくれる。

 後ろで「え?ここ?」などと心配そうな声を出しているが無視して通してもらう。


「東雲様はいつものでよろしいですか?」


「ええ、お願い。あなたはどうする?」


 そう言ってお品書きと書かれた紙を彼女に渡す。


「ええっと......って高くない?私そんなにお金持ってないよ?」


「いいわよ、ここは私のおごりだから」


「さすがにそれは悪いって」


「いいから」


 言葉強く言うと彼女もしぶしぶ了承したようで、選び始める。


「しののんは何にしたの?」


 どれが何の料理なのかいまいち理解できないようだ。


「私は小町懐石よ、あなたもそれにする?」


「じゃあ......それで」


「かしこまりました」


 仲居の人が部屋から出ていく。

 彼女が恐る恐る口を開く。


「ねえ、しののん」


「なによ」


「映画、物語は良かったよ。伏線も綺麗に回収されてたし、映像もきれいだったし」


 そう、物語"は"良かった。

 問題は演者だ。

 どれだけいい物語でも物語に入り込めれなければ意味がない。だから、役者の演技は大事なのだ。


「そうね、私もその点に関しては良かったと思うわ。でもあの演技は無いでしょ。彼ら彼女らは本当に役者なの?」


 彼女も私の言いたいことが分かるのだろう。

 しかし、さすがに言い過ぎて彼女が黙ってしまった。

 私が言ってることを否定せずに、何て言ったらいいのか分からないという顔をしている。

 上がった熱を下げるために深呼吸する。


「ごめんなさい、熱くなり過ぎたわ」


「謝らなくていいよ、私もしののんの言いたい事分かるし物語が面白かったのは本当だから」


「ありがとう」


「本当になんであんなに演技下手だったんだろうね?やっぱりアイドルとかじゃなくてちゃんとした俳優とか女優を起用してほしいよね~」


 彼女もそう言って私の意見に同意してくれる。

 我慢せずに言ってもいいということだろう。

「ね」と同意を求めてくる表情をしている。


「特にミステリーなんて役者の演技ありきよ、本当にがっかりしたわ」


「私、原作の小説呼んでみようかな~。あんまり小説呼んだことない私でも読める?」


「ええ、小説の中では読みやすい部類だと思うわ」


「じゃあ、今度読んでみる」


 それから、料理が届くまでは映画について話していた。


「こちら、小町懐石になります。東雲様の方はいつも通り量を少なくしております。お連れ様は普通の量にしてあります」


「ありがとう」


「ありがとうございます」


「それでは、ごゆっくりと」


 仲居が出ていく。

 さっきから彼女が目を輝かせて料理を眺めている。


「ねえしののん、すごいねこれ!」


「見た目に劣らず味も美味しいわよ」


「写真撮っていい?ママに見せてあげたい!」


「ご自由にどうぞ、私は先に食べるわよ」


 彼女がスマホを取り出し写真を撮ろうする。

 私は料理に手を付けようとする。


「あ、ちょっと待って!しののん、写真撮ろうよ」


「なんでよ」


 写真なんて撮らなくてもいいのに。


「ママに今日遊びに行った事話すときにしののんの写真無いと話しづらいじゃん」


 そういう物なのか。

 まあ別に撮られて不自由になることなんて無い。


「まあ、いいわよ。はい」


 箸を箸置きに置き、姿勢を正す。


「ちょっとしののん、そんな固い感じじゃなくてピースとかしてよ~」


「ピース?こ、こう?」


「そうそう!ちょっと表情が硬いけどまあいいや。はい。チーズ!」


 彼女は私単体と、私と彼女のツーショットの二枚の写真を撮った。


「うん、いいね。しののんにも送っとくね~」


 LONEで撮った写真を共有してくれる。

 私の表情は死んでるし、ピースは指が少し曲がってる。


「ありがとう」


「じゃあ、たべよ。いただきま~す」


「いただきます」


 箸を手に取り、料理を口に運ぶ。

 やはりここの料理は美味しい。

 味も濃くなくて優しい。


「美味しいね、特にこのお刺身」


「そうね、季節の旬の魚を使った刺身よ。今の時期ならイサキとスズキかしら」


「こっちは甘くて、こっちは脂乗ってて美味しい」


「甘いほうがイサキで脂の乗ってるほうがスズキよ」


「イサキか~初めて聞く魚だ」


「あなたと食べていると一段と美味しく感じるわね」


「そう?なら良かった」


 私は基本的に食事は静かに食べるタイプだ。別に、喋るのが嫌というわけではない。静かな方が落ち着くだけ。

 彼女は美味しいなどの言葉を口や表情に出してくれるので、一緒に食べていて面白いし嬉しくなる。


「「ごちそうさまでした」」


「いや~こんなにおいしい料理初めて食べたよ、ありがとしののん」


「満足してもらえたなら良かったわ」


「本当にお金出さなくていいの?」


 心配そうに聞いてくる。

 値段を見たからだろう。たしかに普通の女子高生だったら、いや大人でも高いと感じる値段だ。


「大丈夫よ、私を誰だと思っているの?それにお店を決めたのは私だから」


 個室を出ると大将が挨拶をしに来る。


「お久しぶりです東雲様、本当ならいらっしゃった時に挨拶しに行きたかったのですが忙しかったので」


「今日も美味しかったわ、特に魚の刺身が。彼女も気に入ったらしいわ」


「それは良かったです。今日の早朝に釣ったばかりの新鮮なイサキとスズキを使わせていただきましたので。お連れ様も満足されたようで何よりです」


「はい、とても美味しかったです!」


 畏まった感じで彼女がそう言う。


「お会計をしたいのだけれど」


「いえいえ、お代金は結構です。私たちは東雲様によくお世話になっておりますので」


「そう?じゃあお言葉に甘えさせていただくわ。ありがとう」


 後ろで「すご~」と小さな声で言っているのが聞こえたが気にしない。


「また来るわね、ごちそうさま」


「ごちそうさまでした」


 店を出る。


「さて、お腹も膨れたからぶらぶらしましょうか」


「そうだね、まずは服を見に行こうよ」


「いいわよ」


「じゃあ、近くのショッピングモールにレッツゴー!」


 私達は歩いてショッピングモールに向かった。遊びに行く①

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