好敵手
お待たせして申し訳ありません。年度末で様々事情が重なり投稿が難しい状況でした。
また再開していきますので、よろしくお願いいたします。
鬼灯先生との共同生活が始まって三日目。俺は専攻練前の形稽古をしていた。
ランク3、シュテンとの戦いの時に見た映像。
あれは間違いなく親父の姿だった。
そして同時に洗練された振槍。何故あの時親父の姿見えたのかは分からない。
重要なのは、俺の毀鬼伍剣流がまだ未熟もいいところだということだ。
思い出せ。
親父は俺に技を教える時、一つ一つ丁寧に型を見せてくれた。
親父が居なくなってからの数年間で、俺の技は徐々に崩れていたのだ。
鬼灯先生にももちろん型は教わっているが、鬼灯先生の動きは鬼灯先生の身体に最適化されている。型をなぞるだけじゃ駄目だ。
本質を理解し、自分の身体に落とし込む。
どれだけ繰り返していただろうか。後ろに気配を感じた。
「鬼灯先生‥‥」
振り返った先にいたのは、鬼灯先生ともう一人。
まったく予想していなかった人間が立っていた。
金髪の坊主頭が虎のような野生を思わせる男子生徒、百塚一誠だ。
「百塚、久しぶりだな」
「おう。しばらくはミッションで忙しかったからな」
「ふーん」
手を上げて応える百塚は、夏休みの一件で煉瓦の塔から離れ、桜花魔法学園に預かられる形になった。
ミッションはそれ関係なのかもしれない。
「百塚君には魔法の訓練に付き合ってもらいたくてお願いしました。私よりも適任ですから」
俺の火焔は人の魔力を食って大きくなる。エナジーメイルだけで戦う鬼灯先生は奪い辛いし、仮に奪えてもそんなに火力が上がらない。
鬼灯先生曰く、元々魔力が多い方ではないのだそうだ。
「俺はありがたいですけど、百塚はいいのか?」
「当たり前だ。真堂と鬼灯先生の助けになるのならば、なんでもする」
マジかよ。それはそれで少し重いぞ。
俺は夏の合宿で百塚に拉致され、教授という煉瓦の塔のヤバい奴と戦うことになった。
今は恨んでないが、今回の件で百塚の罪悪感が薄れるなら、ありがたく協力してもらおう。
俺たちは訓練場のど真ん中で向かい合った。奇しくも合宿の時、桜花前哨戦を思わせ宇立ち位置だ。
「随分といろいろな経験をしたらしいな」
「ほとんどが不可抗力だけどな」
百塚がニッと笑った。
「お前も強くなったんだろうが、俺も遊んでたわけじゃない」
「‥‥確認だけど、俺の魔法訓練のために来てくれたんだよな」
「そう言ったろ。ただ、やり方は任せると鬼灯先生が言ってくれたんでな。好きにやらせてもらうぞ」
「えー」
なんじゃそりゃ。
まあ、より実戦に近い形になったと思えばいいか。
俺も百塚がどれくらい強くなったのかは興味がある。あの時の戦いも消化不良で終わったしな。
「今度こそぶっ潰してやるよ」
「ぬかせ」
俺たちは互いに魔法を発動した。
火焔──位階×──炎駆。
瞳に×を灯し、全身に炎のラインを刻む。
血が沸騰し、ギアが入れ替わったように身体が軽くなる。
一方で百塚にも変化があった。
アイコンが弾けた瞬間、全身を風が覆ったのだ。服の裾がバタバタとはためき、魔力の粒子が螺旋となって百塚を取り巻く。
百塚といえば圧倒的なショックウェーブの波状攻撃だが、新しい魔法を習得したのか。
それはお互い様だ。
俺たちは同時に踏み込み、拳を振るった。
「五煉振槍!」
「ストームブリンガー!」
拳と拳が衝突するよりも先に、炎と風がぶつかった。
炎が五枚の花弁となって炸裂するのに対し、螺旋の突風が火を削る。
「──」
「──」
爆発。俺たちは衝撃に圧され、互いに距離を取った。
そういう技か。身体にショックウェーブを装備する魔法だ。派生魔法なのか、エナジーメイルとの複合魔法なのかは分からないけど、常時魔法を発動し続けるのは凄い。
ただそれならそれで、俺にとっては好都合だ。散った風を炎で飲み込み、身体に戻す。
これを繰り返すだけでもこちらの火力が上がっていく。
ゴッ! と顔面を衝撃が打ち抜いてきた。
「そうすると思ったぞ、真堂!」
炎を貫いてラッシュが全身を打ちつけた。
──しまった。百塚の魔法は中距離戦でも十分な威力を発揮する。
百塚の乱打は止まない。
こちらは捕食を差し込めず、回復に炎を割かなければならない。
「ふぅ」
呼吸を整え、冷静に炎を操作する。
『鋼盾』。
牙の盾がショックウェーブを受け止めた。
止められるのは数秒。
その間に炎を集め、火力を上げる。
目の奥で光が弾け、炎が暴れ始める。
雷脚。
盾が砕けた瞬間を狙い、一直線に駆ける。
「っ──!」
百塚の動きを見極め、見えない拳の軌道を予測してすり抜ける。
この距離なら、一発避ければそれで十分。
間合いに入った俺は、振槍を百塚の胴へ叩き込んだ。
風の鎧、エナジーメイル。二重の障壁に止まることなく、強引に振り抜いた。
百塚が後ろに吹っ飛んだ。
自分で跳んで衝撃を和らげたな。
「は、相変わらずふざけた威力だな。腹が少し焦げたぞ」
「そっちこそ。武機無しでも十分強いじゃんか」
俺たちは再び拳を構えた。




