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「えっ??」


光が収まり、おそるおそる目を開いたブランは、間の抜けた声を上げた。


一見すると、温泉の様子は何も変わってないように見えたからである。しかし…


「ああっ!!」


温泉の中央に浮かんでいた石に目をやったブランは、驚きの声を上げた。


「ひ、人がいる…」


先ほどまでは確かに、丸い灰色の石だったそれは、今や肌色の目鼻がついた、髪の毛一本ない老人の頭に変わっていたのだ!!


「こっちへ来よるぞ」


老人は、ブラン達の方へとスーッと近づいて来る。


湯気に邪魔されない距離まで来ると、それは確かに「肩まで風呂につかった禿頭の老人」である事がわかった。



ザバァ



老人は、無造作に皆の前で風呂から上がると、右手の人差し指を軽く振った。


「あっ!!」


途端に、老人の枯れ木のような体にどこから現れたのか、一枚の白い布が巻きつき、簡素なローブとなった。


また驚いた事に、先ほどまで確かに湿っていた老人の体は、一瞬の間に乾いてしまっていた。


太陽の家の熟練の冒険者達は、いつもとは違う慎重な表情を見せ、この老人の様子をうかがっている。


「おい、そこの魔女」


高く乾いた、幾分ひょうきんな声が室内に響く。


老人がアリッサに顔を向けて呼びかけたのだ。


「あたしゃ魔女じゃない、魔法使いだよ」


アリッサはいつも通りのこだわりを見せ、ぶっきらぼうに返答する。


一見するとわからないが、ふてぶてしい声の中に、いつもとは違う緊張感が混じり込んでいることにブランは気づいた。


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