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空中で左手を突き出したアリッサの体は、正確にガロンの元へと飛んで行った。
グシャッ
彼女の突き出した手刀は、ガロンの胸部にある巨大な瞳のすぐ下に突き刺さった!!
(………!!!!!!!)
怪物の瞳が見開かれ、声にならない声が波動となってロビーに伝わっていく。
パキパキパキ……
アリッサの左手を中心に、怪物の体はこぼれた水が広がるような速さで、灰色の石へと化していく。
中心近くの手が、いまいましい侵入者をひきはがそうとアリッサの方へ殺到したが、彼女が右手を鳴らすと同時に結界が張られ、すべてはじき返されてしまった。
(があああああ!!!!)
ついに、ガロンの本体部分が醜い石像に変わり、それと同時に、この短時間で多くの人をあやめてきた無数の手は、一瞬で灰のようになり崩れ去った。
巻き上がった粉塵は、瞬く間にロビーを満たす。
「アリッサさん!!」
視界のきかない中、彼女のいた方へ見当をつけ駆け寄ったブランは、せき込みむせかえりながらも、ようやく老魔法使いの姿を見出した。
「アリッサさん、それは……!!」
「ああ、イビルストーンだね」
アリッサの右手には、黒い小さな玉が置かれている。
彼女の目の前に転がる、かつてはニーゲルン村長として剛腕をふるった男の石像、その胸に浮かんだ巨大な瞳の中心部分には、その玉がぴったりとハマるへこみがあった。
「また、この石を見ることになるなんて…」
それは、かつてキリー村の哀れな青年が最期に残したものと、全く同じ色と形である。
「まったく……こんなもんがホイホイ出回ってるようじゃ、北方も終わりだね」
軽い不満を述べた後、アリッサが何事かつぶやくと、イビルストーンは粉々に砕け、床に広がる灰の上にバラバラとこぼれ落ちた。
「アリッサさん!!その手…」
ようやく粉塵がおさまる中、ブランは、アリッサの左手首が不自然に曲がっている事に気づいた。
「ああ、折れちまってるようだね。ま、仕方ないさ」
青ざめるブランをよそに、当人はいたってのんきな顔をしている。
「やれやれ、とんだ足止めを食っちまったね。とっとと本筋に戻ろうじゃないか」
そう言うと彼女は、他の老人達の方へと歩き始めた。




