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「ちょっと、下におろしな!!年寄り扱いするんじゃないよ!!」
「ダメです」
背中の老女が発する怒りの声に耳を貸すことなく、ブランは氷の森の中を、来た道から外れないようよう気をつけながら走り続けた。
アリッサがかなり無理を重ねた状態なのは確かなので、何と言われようと、これ以上の負担を彼女にかけるつもりはなかった。
「きゃあぁぁ!!」
ブランの隣を走るミミが後ろを振り返り悲鳴をあげる。
氷狼が一匹、うなり声を上げながら彼らの後を追いかけてきたのだ。
その距離はぐんぐん縮まっていく。氷狼の口元が赤く染まっているのが、すでに犠牲者が出たであろう事をものがたっていた。
「ブラン!!あたしを下ろすんだ。一発ぶちこんでやるから」
「でも……」
ブランが躊躇している間に、氷の魔物は、三人のすぐ後ろに迫ってきた。
「いやっ!!」
氷狼がミミめがけて飛びかかろうとしたその時、両者の間に小さな影が出現した。
「あっ!!あれは」
それは、赤い体に炎をまとったトカゲの様な生き物だった。
赤いトカゲは、口を開くやいなや、激しい炎を氷狼にむけて吐き出した。
『グォォン!!!』
突然の不意打ちに、氷狼は逃れるすべもなく炎に巻きこまれ、あっけなく溶け去ってしまった。
「ブンさん!!」
ブランが、首から下がったドクロに安堵の声をかける。
『ああ、まかせろ』
銀色のドクロの落ちくぼんだ瞳が明滅する。
「えっ…今のは??」
「いいから!!とにかく逃げるよ!!」
新たな怪異におののくミミだったが、いちいち説明している時間はなかった。
「さあ!!」
ブランは再びミミの手をつかむと、森の出口まで一気に走り抜けた。
「あ……」
そこで、ブランは思わず足を止めた。
氷の森を疾走している時には気づかなかったが、ニーゲルンの街にはしんしんと雪が降り始めていた。




