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「こ、これは…」
吹き上がる冷気とも吹雪ともいえるものの勢いに、思わず目を閉じたブランだったが、再び目を開いた時、その口からは驚愕の声がもれた。
「ひぃぃっ」
近くでは、腰を地面につけたままのガロン村長が、悲鳴をあげている。
ほんの一瞬で、辺りの景色はすっかり一変していた。
周辺の森と切り株と地面は、雪と氷で覆われており、穴の周辺で冷気をまともに浴びた男たちは、もの言わぬ氷の固まりに変わりはてていた。
アリッサの張った結界の中だけは、かろうじてその洗礼を免れたようで、まるい形の茶色い地面が、白くなった大地の中にポツポツと点在している。
『フフフフフ……』
冷たく不気味な笑い声があたりに響き渡った。
穴の上…すなわち中空に、冷気の乱気流が渦巻いており、その中心には、女性の形をした氷の彫像が浮かんでいた。
『人間共よ、ごくろうであった』
しかし、それはただの彫像ではなかった。
冷気に包まれているため、その全貌をはっきりと見てとることはできなかったが、氷でできていながら、その髪や手足は、明らかになめらかな動きをみせている。
『ほぅ、ずいぶんと変わったものだ』
言葉の調子から、ブランはその怪異が、あたりの景観について感想を述べているのだと感じた。
「そりゃ三百年も経ちゃ、変わって当然だろうが」
ブランの隣でアリッサが皮肉たっぷりにつぶやく。
印を結び、おそらくは全魔力を駆使し複数の結界を維持しながらも、皮肉だけは普段通りに言ってのけるのが、いかにも彼女らしいと言えるだろう。
「三百年!?そ、それじゃまるで……」
アリッサのつぶやきを聞いたミミの口から、驚きの声があがる。
そして、少女が予感した言葉を老女ははっきりと口にしてみせた。
「あいつはヴィシュメイガ……雪妖ヴィシュメイガだよ」




