36
ヒュゥゥ……
「なんだ??穴から風が」
「うわっ、寒いっ!!」
ロジ・マジのほこらがあった場所にできた穴から、冷たい風が吹き上がりはじめた。
風は強くなったかと思うと、次の瞬間には一気に弱まり、なんとも落ち着かない吹き方であった。
「お前たち!!早くこっちへ!!……ええい、仕方ない!!」
再び、穴の周辺の男達に声をかけたアリッサだったが、もはや効果がないと悟るやいなや、すばやく手を動かし印を切りながら、何やら複雑な呪句を唱え始めた。
「ちょっと君、彼女はいったい何を…」
「しっ!!」
アリッサの様子に気づいたガロンの言葉をブランは遮った。
「今、魔法を使うために集中しています。大きな声を出さない方がいいです」
「魔法!?それじゃ彼女は魔術師なのか」
「そうです。とにかく静かにしていてください」
普段アリッサが魔法を使う時は、指を軽く鳴らすだけである。
今のように複雑な手順を行うのは、彼女が本気の時…つまりは、相当な危険が迫っている時だといえた。
「おっ??」
「風が止んだぞ…」
穴の中から吹いていた風が鳴り止むと同時に、アリッサの術法が完成していた。
ヴヴヴヴヴヴッ
「なっ、なんだ!?」
ガロン村長がうわずった声を上げる。
彼の周囲は、ドーム状に鈍く光っていた。
それはアリッサおなじみの結界であり、ガロンだけでなく、彼の傭兵やミミ、比較的こちら近くにいた労働者達、アリッサ自身とブランの周りにも、無数の光るドームが出現した。
「アリッサさん、大丈夫なんですか??一度にこんな結界を張って」
以前の経験から、ブランはアリッサが無理をしているのではないかと不安になった。
「まあ、楽じゃないのは確かだね」
額に脂汗を浮かべながらアリッサがそうつぶやいた時だった!!
ゴォォォォォッ!!!!
穴の中から一気に冷気が吹き上がった!!




