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【書籍発売中】融合スキルで武器無双!ゴブリンソードから伝説へ  作者: 田中ゆうひ
第四章

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混種のダンジョン第二層

 肩を軽く叩かれる感触で、僕はゆっくりと目を覚ました。


「起きたか、ユニス。朝だぞ」


 目を開けると、すぐ近くにリリエットの顔があった。

 澄んだ青い瞳が、こちらを覗き込んでいる。


「うわっ」


 思わず小さく声が漏れる。

 けれど、すぐに状況を理解した。


 ――そうだ。

 昨日から僕たちは討伐キャンプに来ていたんだった。


「おはよう……えっと、僕が最後かな」


 身体を起こしながら周囲を見回す。

 テントの中では、みんなすでに毛布から出ていた。


「結構前に起きてたわよ。なかなか大物ね、ユニス」


 マリィが呆れたように肩をすくめる。


「僕はまだ少し眠いかな。やっぱりベッドじゃないとね」


 ナズカはそう言って、大きなあくびをした。

 白銀色のローブを羽織ったまま、ぼんやりした顔で目を擦っている。


 ……別に、大物だから寝坊したわけじゃない。


 むしろ逆だ。


 昨日はなかなか寝付けなかった。


 慣れない野営だから、というのもある。

 けれど、それ以上に――すぐ近くにみんなの気配があるのが、妙に落ち着かなかったのだ。


 同じテントの中。

 下手をすれば寝息が聞こえてきそうな距離に、女の子が三人いる。


 意識しない方が無理だった。


「自然に起きるまで待とうと思ったのだが、周りが騒がしくなってきた。朝食の支給が始まったようだ」


 リリエットがそう説明する。


「マリィが、早く行かないとなくなるんじゃないかって言うからさ。起こしたんだ」


 ナズカが続けた。


「ちょっと、私が悪者みたいじゃない?」


 マリィが不満そうに眉を寄せる。


「ごめんごめん、そうだったんだ。起こしてくれてありがとう。じゃあ行こう」


 * * *


 朝食を済ませた僕たちは、さっそくダンジョンへ向かった。


 ちなみに朝食の内容は、昨日の夕食とほとんど同じだった。


 大鍋のスープに、固めのパン。

 一度に大量の食事を作るのだから、こういう形になるのはしょうがないだろう。


 もっとも、温かい食事がちゃんと出るだけでもありがたい。


 なお、次の食事からは配給札が必要になる。


 つまり、食事が欲しいなら一日一度はダンジョンへ潜らないといけないわけだ。


「しっかし、こんな朝早くにダンジョン行くなんて、少し不思議ね」


 歩きながら、マリィがそんなことを言った。


「そうだな。その分、長く潜れる。上手くいけば探索をかなり進められそうだ」


 リリエットが頷く。


「まあ、他の冒険者も同じ条件だけどね」


 ナズカが肩をすくめた。


 実際、ダンジョンへ向かう道中でも、ちらほら他の冒険者パーティの姿が見えていた。


「そうだね。でも焦ることはないよ。疲れたら一度地上に戻るのもありだと思うし。とにかく、いつもと勝手が違うから慎重にいこう」


 三人が頷く。


 ダンジョンへ入り、一階層を進む。


 二階層への階段は、昨日すでに発見済みだ。


 最短ルートも把握している。


 ただ――

 耳を澄ますと、通路の奥から微かに金属音や話し声が聞こえてきた。

 先に潜っている別パーティだろう。


「……こっちの道へ行こう」


 僕は小声で最短ルートとは別の道を指さした。


 ダンジョン内で、他のパーティにむやみに近づくのはご法度だ。


 戦闘中に鉢合わせれば混乱の原因になるし、ドロップアイテムを巡ったトラブルに発展することもあるらしい。


「昨日の感じだと、こっちからでも階段のある場所へ通じているはずだよ」


 そう言いながら、手元のメモを確認する。


 少し遠回りになるが、仕方ない。


 ……それが嫌なら、もっと早起きして、他のパーティより先に潜ればよかったのだ。


 そのためには、あのテントで熟睡できるくらいの図太い神経が必要そうだけど。


 僕は小さく息を吐きながら、先頭に立って通路を進んだ。


 * * *


 無事に二階層へ続く階段までたどり着いた。


「一応、もう一回確認するよ」


 昨日の時点で、ある程度の作戦は話し合っている。


 それでも念のため、階段を降りながらもう一度確認する。


「二階層からは、大蜘蛛が出るはずだ。大蜘蛛が出たら、ナズカは魔法をお願い。一体だけなら僕が前で止めるから、リリエットとマリィはゴブリンやコボルトが後ろへ抜けないように気をつけて」


 三人が真剣な顔で頷く。


 僕の持つ《蒼花紋の盾》には、虫系統の魔物から狙われやすくなる効果がある。


 盾役としては非常に強力な効果だ。


 大蜘蛛が愚直に僕を狙っている間に、左右からリリエットやマリィが攻撃することができる。大蜘蛛のダンジョンでは、この戦法でかなり安定して戦うことができていた。


 だが、問題もある。


「それと、大蜘蛛が二体以上同時に出てきて、僕に攻撃が集中した場合だけど……その時はサポートしてほしい。無理に倒そうとしなくていいから、脚を狙って動きを止めてほしい。脚が減れば、かなり動きやすくなるはずだから」


 以前、大蜘蛛のダンジョンへ行った時は、複数の大蜘蛛を同時に相手にすることはなかった。


 だが、この混種のダンジョンでは単体で出てくるとは限らない。


 その時は、《蒼花紋の盾》の効果が仇となり、僕へ攻撃が集中する可能性がある。

 敵の数だけで言えば、最大で三体同時に出てくることもあり得るだろう。


 ――もっとも、以前とは状況が違う。


 今はナズカがいる。


 距離があれば、そもそも接近される前に魔法で一体減らせる可能性が高い。


 それに、敵が三体集まったからといって、同時に三体が自由に攻撃できるとも限らない。


 通路の幅を考えれば、攻撃が単純に三倍になるわけではないはずだ。


 その間に耐えていれば、ナズカの魔法で数を減らせる。


「承知した」


 リリエットが短く答える。


 以前、大蜘蛛のダンジョンで戦った時、リリエットは《アイスブランド》で大蜘蛛の脚をまとめて切り裂いていた。


 今のパーティで純粋な近接火力なら、リリエットが一番頼りになる。


「やってみるわ」


 マリィも頷きながら、左手に持っていた《ホブゴブリンダガー》を腰のベルトへ戻し、代わりに《ヴェノムエッジ》こと《大百足の毒刃》を取り出した。


 マリィは現在、三本の短剣を状況に応じて使い分けている。


 今は右手に《パラライズファング》、左手に《ヴェノムエッジ》を握っていた。

 一階層ではゴブリン相手に有効な短剣を使っていたが、大蜘蛛に備えて持ち替えたのだった。


「それと、背中に模様がある個体が出たら要注意だ。遠くから粘着性の糸でこっちを拘束してくる。でも、倒したら糸も消えたから、出てきた場合はナズカはそいつを優先して狙って」


「分かったよ」


 ナズカは頼もしく頷いてくれた。


 * * *


 二階層へ降りてすぐ、通路の先に大蜘蛛の姿を見つけた。


 一体。

 しかも、まだ距離がある。


「ナズカ、お願い」


 僕が指示したころには既にナズカが杖を構え、集中に入っていた。


 大蜘蛛はこちらへ気づくと、八本の脚を忙しなく動かしながら駆け出してきた。

 だが、その速度よりも――


「撃つよ!」


 ナズカの雷魔法の方が早かった。


 青白い雷撃が一直線に走り、大蜘蛛の頭部へ直撃する。


 バチィッ!!


 激しい音と共に、大蜘蛛の身体が痙攣した。

 そのまま数歩だけ前へ進み――光の粒となって霧散する。


 一撃だった。


 流石は“最強”と言うだけはある。

 ナズカの雷魔法は、大蜘蛛相手でも十分すぎる威力を持っていた。


「ふふん、見たかい?」


 ナズカが少し得意げに笑う。


「うん、すごいね。本当に助かるよ」


 僕が素直にそう言うと、ナズカは少しだけ照れくさそうに咳払いした。


 * * *


 その後の探索も、しばらくは順調だった。


 敵は最大で三体まで出現したが、大蜘蛛が同時に複数現れることはない。


 組み合わせも、

 大蜘蛛一体とゴブリン。

 あるいはコボルト二体。

 そんな構成ばかりだった。


 どのダンジョンも、階層が下がるほど強い魔物が増える。


 二階層は、まだ“大蜘蛛の階層”というほど出現頻度が高くないのかもしれない。


 何より大きかったのは、ナズカの魔法だ。


 今のところ、大蜘蛛は接近される前にすべてナズカが撃ち抜いている。


 僕たちは、残ったゴブリンやコボルトを処理するだけでよかった。


「……少し、探索範囲を広げよう」


 僕は手元の地図を見ながら言った。


 ここまでは、いつでも階段へ戻れるよう慎重に動いていた。

 けれど、この調子ならもう少し奥まで進めそうだった。


 三人も異論はないようで、小さく頷く。


 僕たちは、まだ踏み込んでいない通路へ足を向けた。


 そして――


「……っ!」


 通路を曲がった瞬間、僕は足を止めた。


 いた。


 大蜘蛛が三体。


 しかも、そのうち一体は背中にまだら模様が浮かんでいる。


 粘着糸を吐く個体だ。


「ナズカ、模様のあるやつを優先して!」


「分かった!」


 まだ距離はある。


 三体の大蜘蛛が、競うようにこちらへ駆け出してきた。


 だが、その途中で――


 まだら模様の個体だけが、不意に足を止めた。


 腹部を持ち上げ、こちらへ向ける。


 やはり、糸だ!


「撃つよ!」


 ナズカの声。


 間に合う。

 そう思った。


 だが――青白い雷が放たれた瞬間、まだら模様の大蜘蛛の姿がふっと消えた。


「――え?」


 思わず声が漏れる。


 次の瞬間。


 まだら模様の大蜘蛛が、目の前で大きく脚を広げ、覆い被さるように飛びかかってきていた。


 糸だ。


 天井へ糸を張り、それを利用して一気に飛んできたんだ。


 そう理解した瞬間――


 巨大な身体が僕へ叩きつけられた。


【あとがき】

 GW期間7日目の更新です。

 引き続き、5月10日までは毎日更新していきます。

 さて、毎度恐縮ですが書籍版の宣伝をさせてください。


 書籍版の魅力⑥

 「大量に加筆修正をした」です。

 書籍化にあたり、第一章の内容を最初から見直し、全体的に加筆修正を行いました。


 先に紹介した書き下ろしエピソードとは別に、ネルコやリリエットとの会話もかなり増えています。


 ウェブ版では入らなかった何気ないやり取りや、二人についてより掘り下げた会話も追加されていますので、「ウェブ版は読んだしな……」という方でも、新鮮な気持ちで楽しんでいただけると思います。


 引き続き、本作をよろしくお願いいたします。


 以下、Amazonの商品ページURLです。

(リンクにできないため、お手数ですがコピーしてご利用ください)


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