適性の儀
今日は、私の誕生日。ケーキや美味しいお料理、親族皆が集まって……そんな幸せな誕生日を夢見ていた。いつもはそうだったのだ、私が期待するのも仕方のないことだと思う。巫女服のような特殊な衣装を身にまとわせられながら、私は不満をこぼす。
「ねー、ぎしきなんていやだよーー」
「そのようなことをおっしゃってはなりません、星様。今日は星様にとって大事な日。大切な依代になるための適性の儀が行われるのですから」
「でもでも、いつもみたいにお料理食べたーい……」
そうつぶやいたのとほぼ同時に、がらりと扉を開けて、母が入ってくる。いつもとは違う和風の衣装。それもまた、儀式の衣装なのだと何となく分かった。傍らで私の衣装を直していた召使いが、さっと頭を下げる。私もすぐに背筋をしゃんと伸ばし、お辞儀をした。
「母様、おはようございます」
「ええ、おはよう星。今日は頑張りなさいね」
笑顔でそういう母の瞳の奥は、なぜか笑っていないような、そんな気がして、私は少し寂しくなった。
何も口にしないうちから、儀式が始まった。心の中で面倒くさいと思いながらも、必死に形式通りの動きで儀式を進めていく。
「此の神床に仰ぎ奉る掛けまくも畏き大蛇之大神の大前を拝み奉りて恐み恐みも白さく……」
父が何か小難しいことを言っているが、あれは神様に語り掛けるお言葉なのよ、とこの前教えてもらった。最後までその言葉を聞き終ると、ついに私の番となった。息を大きく吸い込むと、大声で叫ぶ。
「我が胎内に宿り給え、護り給え……カルド!」
私は思い切って手に持った短剣を生贄となった兎に突き刺した。もう死んでいるとはいえ、酷い行為だ。そんなことをちらと思いつつも、やめるわけにはいかない。静かにじっと目をつむって直立する。不気味な笑い声を響かせてカルドが現れ、すぐに私の体に重なる。辺りが光り輝き、少しずつ私の意識が混濁していく。そして、私とカルドはひとつに…………ならなかった。すぐさま、カルドの笑い声が儀式の場に響き渡る。
「ケケッ、この小娘、適正足りていやがらねぇぞ!とんだ欠陥品だなァ!!俺がわざわざきてやったってのによぉ!!」
一気に騒然とする場に大声があがる。
「っ……!なんたる……なんたること……一族の恥さらしめが!!!この場でその首掻き切ってやるわ!!!」
見ると、困惑している大人たちの間をぬって、祖母がやってくる。その手には、儀式で使われたのと同じ短刀が握られており、誰にも止められることなく、私の首に突き付け、そして。
「おやめください!!!」
母が私を突き飛ばす。私はなすすべもなくその手に突き飛ばされて、床に叩きつけられた。
「っぐ……」
短い苦悶が私の口から洩れる。剣につけられた傷から、鉄の臭いのする液体がだらだらとこぼれおち、床を赤に染めていく……。私の意識は、そこで途切れた。




