小さな弟
「白い……男の子ですってよ……」
「そりゃすごい、これはどちらが依代に選ばれるか……しかし……」
「……しきたり……一番上の子……」
今日は、皆随分と騒がしい。何を言っているのかわからず、ただただ、大人たちの突き刺さるような目が、私の白い髪に向けられていることを、何となく、私は感じ取っていた。
あれから数年……私は5歳になっていた。
「ゆえくん!あーそぼ!」
「うん!」
てちてちとぎこちない足取りで、弟、月がこっちに歩いてくる。真っ白な髪、赤い瞳。素直にそれらを、きれいだと思った。大人たちの話で、弟がアルビノと呼ばれる特性を持った子であること、蛇の依代への適性がある可能性が高いことなどを、私は幼いながらに知っていた。そしてそれが、何を意味するのかも、薄々ながらに感じ取っていた。大人たちはずっと話し合いのようなことをしていて、昔のように構ってはくれなくなった。次第に私は、大人たちへ要求することを諦めるようになった。その代わり、月と沢山の時間、一緒に遊ぶようになっていた。
バタバタと履物の音がして母がすごい勢いでこちらに向かってくるのが見えた。いけない。そう思った時にはもう遅く。
「駄目でしょ!!星!何度言ったら分かるの!月が怪我をしたら!!」
「…はぁい」
見つかってしまった。今日こそこっそり月を外に連れ出そうとしたのに。
「ケケケッ、残念だったなァ!」
「カルド!!さては告げ口したんでしょ!!!ひどーい!!」
「俺が何をしようと勝手だろう?」
くけけ、と笑い声を残して蛇の神様……カルドの気配は消え去った。そして。ぱしん、と小気味のいい音が私の頬から聞こえたのが分かった。次に焼けるような痛み。
「っ!!」
「星!!!蛇神様になんて口を聞くの!!!何遍いったら崇めなきゃいけないことを覚えるの!!!」
「だ、だって…ぇ……」
叩かれた痛みと、母に鬼のような形相で睨まれた怖さで私の目からはぽろぽろと涙が零れる。
「とにかく!月はどこにも連れていってはいけません、分かりましたね?」
すたすたと月を連れて立ち去る母の後ろ姿を見ながら、私は一人あふれる涙をぬぐった。こっちの方を、心配そうに見つめる、月の姿を見送りながら。




