最初の収穫は半分でした
「豊作ではありません。平年の五十二パーセントです」
秋の第一月十八日、ベルン村。
麦倉の前に積まれた袋を見ながら、ヨハンは収穫集計を読み上げた。
三か月前、黄ばんだ畑を前にしていた十一村の人々が、静かに数字を聞いている。
歓声は上がらなかった。
この五十二パーセントは、村別の割合を平均した数字ではない。十一村の今年の総収穫重量を、同じ十一村の過去五年の平年総重量で割った値だった。
平年の半分近くを失ったのだ。
それでも、種麦保管室の封印は破られていない。
王家備蓄と商会荷車の輸送は、四日目から途切れず続いた。
三十日目には、残存備蓄、到着済みの麦、畑ごとの収穫見込みを同じ単位で再計算した。十一村の代表は結果と配給記録を確認し、次の三十日分の輸送延長を受領した。
六十日目にも同じ再計算を行った。早刈りできた区画の実収量を加え、それでも不足する二十二日分だけ、王家備蓄と商会荷車の契約を再延長した。最初の六十日を、説明なしに延ばしたのではない。
緊急配給名簿に登録された世帯で、食料不足を理由とする死亡は報告されていない。
今年を越す麦と、来年播く種が、別々の扉の向こうに残っていた。
「救われた、と書いてよいでしょうか」
ヨハンが尋ねた。
「何が救われたかを書いてください」
アウレリアは答えた。
「収穫は平年へ戻っていません。土地も回復していません。ただ、食料輸送が間に合い、種麦を食べずに残せた。誰か一人へ無制限の祝福を強いずに、次の作付けへ進めた。それぞれを分けます」
数字を小さく見せるためではない。
半分の収穫を大成功と飾れば、失った家の痛みが消える。
失敗とだけ書けば、泥の中で荷車を直し、配給を運び、種を守った人々の仕事が消える。
* * *
アウレリアとルカがベルンへ戻ったのは、三日前だった。
ミューレから王都まで四日。王都で農政会議へ中間報告を提出し、西へ一日。
今回の旅費と五日間の現地確認費は、三か月前の緊急支援とは別に、農政会議の回復監視費から出る。村の配給麦やミューレの共同箱は使わない。
調査のために収穫作業を遅らせない。
農家が量り終えた袋と収穫帳を確認し、追加測定は同意した区画だけで行う。
十一村すべてをアウレリアが回るのではなく、村ごとの記録者が同じ様式で集計し、三村を無作為に現地照合する。
最初に訪れたのは、北風で月眠り苔の容器が乾燥停止した畑だった。
夏には黄色かった麦が刈られ、短い切り株だけが並んでいる。
「苔を置かなかったから、ここだけ悪くなったんですか」
畑の持ち主が尋ねた。
「比べられません」
「また、わからないですか」
「はい。停止した後に同じ条件の代替容器を置いていません。苔を続けた場合の結果はありません」
持ち主は唇を曲げた。
「正直だけど、役には立たんな」
「その代わり、麦藁の薄い被覆を試した三畝は比べられます」
アウレリアは記録を開いた。
三戸のうち二戸で、被覆区は無処置区より土の乾燥が遅かった。一戸は差が測定のばらつき内。
収穫重量は、二戸で被覆区がわずかに多く、一戸はほぼ同じ。
害虫は一戸で増え、途中から藁を薄くした。
「藁を敷けば収穫が戻る、とは言えません。ただ、風の強い畑で水分を保つ候補にはなります。害虫と蒸れを監視する条件付きです」
「苔より地味だ」
「今年の麦へ先に役立ったのは、地味な方でした」
持ち主は初めて少し笑った。
「来年も、半分だけ敷いて比べる。今度は俺が札を立てるよ」
研究者が答えを持ち帰るのではない。
農家が次の比較を選べるところまで渡す。
アウレリアが第二部で学んだ町の育て方が、別の村にも根を下ろし始めていた。
* * *
六村の月眠り苔試験は、一つが乾燥で早期停止。
一つが病害基準で打切り。
残る四つでは、三か月時点で境界逸出はない。
三地点で、無処置より土壌魔力の低下が緩やかな方向を示した。うち二地点は非魔法保湿材との差が測定のばらつき内。一地点は月によって方向が変わった。
「月眠り苔が土地を救った、ではないんですね」
ニーナが言った。
彼女は今回、祝福を使うためではなく、自分の体調記録と使用停止規則を十一村の記録者へ説明するために来ていた。
「はい。少なくとも三か月では、そう結論できません」
「でも、役に立たなかったとも言えない」
「可能性は残りました。乾燥地では管理方法を変える必要があることもわかりました」
ニーナは観察帳へ書いた。
効いた、ではなく、続けて確かめる価値あり。
以前なら、弱い結論に見えただろう。
今は、その言葉が無理な祝福を断り、農地へ未確認の苔を広げないための支えになっていた。
* * *
麦倉では、別の問題が起きていた。
「倉を調べてください。倉を調べてください」
甲高い歌声が、北壁の箱から繰り返されている。
初めて聞いた村人たちが、ぎょっとして足を止めた。
石壁に取り付けられていたのは、掌ほどの二重容器だった。内側には、薄紫色の小さな傘が一つある。
ミューレで仮称を付けた、歌うキノコ。
王都の菌類標本庫との照合でも既知種とは一致せず、正式分類はまだ終わっていない。食用禁止、吸入影響未確定、開放培養禁止の条件は変わらない。
その後、検査所と共同で、胞子を外へ出さない二重膜容器と管理処分手順を作った。乾燥状態では黙り、内部湿度が一定範囲を越えると、事前に聞かせた短い言葉を再生する。
数値を測る器具ではない。
同じ湿度で必ず歌う保証もなく、正式な湿度計の代わりにはならない。
それでも、見回りの間に壁際の湿気が急に増えたとき、調べる合図には使える。
「北壁です」
イングリットが鍵束を鳴らした。
三か月前に排水溝が詰まっていた場所だった。
彼女ともう一人の鍵保管者が倉を開ける。歌う箱へ触れず、先に正式な湿度計を読む。
平常値より高い。
外へ回ると、秋の落ち葉が排水口へ溜まっていた。雨水が再び北壁へ寄っている。
「また同じ失敗をするところでした」
イングリットが言った。
「同じではありません」
アウレリアは答えた。
「今回は、麦が傷む前に見つけました」
住民が排水口を開け、湿った袋がないか二人一組で確認する。
異常なし。
歌う箱の内側では、紫の傘が少しずつ声を弱めていた。
「あのキノコ、結局、何なんです?」
ヨハンが尋ねた。
「古い醸造藁に休眠していた、音の振動を一時的に保持する未分類の魔法菌類です。湿度が上がると蓄えた音を再生します。ミューレでは水受けの漏れで発生しました」
「安全なんですか」
「安全とは言いません。食べず、開けず、二重容器で期限管理し、破損時は近づかない。正式な湿度計と人の点検を省かない。その条件で、警告補助として試しています」
「役に立つ呪い、ですか」
「呪いではありません」
アウレリアが即答すると、箱の中から少し遅れて歌声が返った。
「呪いではありません」
麦倉に笑いが広がる。
かつてアウレリアへの疑いを歌ったキノコは、今では麦を湿気から守る注意を歌っていた。
* * *
夕方、十一村の代表は次の一年の計画を決めた。
豊穣加速法の新規使用停止を継続する。
被害の深い区画を順番に休ませ、休耕で失う収入には農政会議の回復補償を申請する。
種麦は一か所へ集めすぎず、三つの倉へ分散する。
月眠り苔試験は四区画だけを継続し、乾燥停止区へは再導入しない。
非魔法被覆は害虫記録と組み合わせ、希望する農家が翌年も比較する。
歌うキノコ箱は三倉で一年だけ試し、湿度計、点検簿、破損時手順を必須とする。継続は一年後に倉庫管理者が決める。
「全部、続けるわけではないんですね」
リナが言った。
「続けないと決めることも、結果です」
アウレリアは答えた。
救済は、一人の悪人を倒した日でも、一つの植物を置いた日でも終わらなかった。
食料を運び、種を分け、失敗した容器を止め、地味な藁を試し、次に測る人を残す。
その積み重ねで、十一村は今年を越えた。
平年の五十二パーセント。
決して美しい数字ではない。
けれど、来年の最初の一粒を播ける数字だった。
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