94ーゆ〜らゆら?
改良前は、全員と話せる。てか、それしかできない。改良後も、当然同じことはできるらしい。
だから、その時々で臨機応変に使えるようになる。
俺のラブを、毎朝のモーニングコールでお嬢一人にだけ伝えられる。
本当、魔法ってファンタジーだ。俺は前世でスマホを使っていた経験から、通話する人を選ぶイメージがある。
でも親方はそんなの知らない。離れた場所にいる人と、話をするなんて考え自体がないんだ。
だけど魔法があって当たり前の世界だ。その超ファンタジーな魔法を駆使する。
魔道具に魔力を流す時に、この人と話したいとイメージするらしい。
それだけで、あら不思議。その人と話せるってわけだ。
だから魔道具を持っている人全員と話したいと思ったら、それも可能だ。
「ちゅげーな」
「そうだろう? だがなぁ、やっぱ魔力がなぁ」
ずっと同じ一定量の魔力を流せる人はいない。どうしても多少は変動する。
それは当然だ。だって流す魔力量を測っているわけじゃないから。
「それがどうも音声を届ける時に、不安定になるんだ」
「ほうほう」
やっぱりどこかで、中継できる物がある方が安定するらしい。
でもこれで十分だ。親方は完璧を求めるからだって。
「まあ、この家の人たちなら大丈夫だろう」
「じゃあ、ほかのひとは?」
「王族とかなら平気じゃないか? ああ、同じように魔力量の多い公爵家もだな。だけど貴族も庶民も、魔力量の少ない人はいるからな」
おっと、だから親方。大事なことを忘れてはいけない。
「おやかた、これは、ひみちゅ」
「ガハハハ! そうだった!」
そうそう、何も世に出す物じゃないんだ。飽くまでも秘密なのだけど、もう王と第1王子にバレちゃってる。
国のトップにバレてるって、どうなんだ?
それも大事なんだけど、ちょっと早急に作って欲しい物があるんだ。
「おやかた、あちょこのきに、ブランコちゅくって」
「ブランコってなんだ?」
「ええー」
「アハハハ! だからベル、竜族の国とちゃうって」
そうだけど、ブランコも知らないのか?
この国のちびっ子って、遊具がほとんどないじゃないか。
俺は絵を描いて、親方に説明した。これは魔力とか全然関係ないから、ずぐにできるだろう。
「ほう……あれか、ベル。またお嬢様と一緒に乗ろうと思ってんだろう?」
「あたりまえ」
「ワッハッハッハ! じゃあ、そっちを先に作ってやろう」
やったね。この裏庭の一番大きな木に作ってもらおう。ちょうど、日陰になっていいじゃん。大きな木の方が安心だし。
「あちょこ」
「おう、あの太い枝にするか」
「うん」
また何かやってるぞと、ブレイズ様が見にやって来た。
ブレイズ様って俺を見張っているのか?
もしかして、俺のファンか? 俺って推しだったりするのか?
「ベル、何か気持ち悪いことを考えているな」
ちょっと想像してしまった。俺を熱烈な瞳で見つめるブレイズ様を。うちわやペンライトなんか持ったりして。
「きっしょ」
「キショイとか言うな! 何を勝手に想像したんだ!」
ふふふ、でもこれができたらブレイズ様だって遊べるぞ。
「これは、何だ?」
「キコキコって」
「また、キコキコなのか?」
ああ、そっか。三輪車の時もキコキコ言ってたか。
「ゆ~らゆら」
「なんだそれは?」
まあ見てなって。親方が木に太いロープを吊り下げる。それを座板に通すのだけど。
「おやかた、ちょこふたちゅあなをあける」
「二カ所か?」
「ちょう、したにつけるロープがいたとさんかくになるように」
「ほう、よく考えてるな」
座板のロープを通す部分を二カ所ずつにしてもらう。その方が安定感があるだろう?
万が一にも、お嬢に怪我をさせるわけにはいかないからな。
それと忘れてはいけない。座面の木の表面や角を滑らかにする。もちろん魔法でな。
「ベル、何をしているんだ?」
「おじょうが、けがちないように」
「ブレイズ様、こうしてベルは木の表面を滑らかにしているんだ」
「ベルも偶には気が利くじゃないか」
はいはい、口だけだね。ブレイズ様は何か役に立ったかな?
「ベル、何かムカつくような気がする」
「ちっ」
「また舌打ちをしたな!」
さて、出来上がりだ。まずは俺が乗ってみよう。
「おやかた、のってもいい?」
「おう、いいぞ。高さを見てくれ」
「おー」
ちょっとロープが太かったかなとも思ったけど、まあ許容範囲だ。板に座り、足が地面に届くギリギリまで後ろに下がった。
「いくじょ!」
いや、だからブレイズ様。そこどいて。キョトンとしているんじゃないって。なんで目の前にいるんだよ。
「ブレイズちゃま、どいて」
「え? なんだ? どうするんだ?」
ブランコを知らないからだ。これから俺が何をするのか、分かっていない。
訳が分かっていないけど、ブレイズ様がブランコから距離を取ってくれた。
「よち、ごー!」
地面を足で蹴って、勢いよくブランコを漕いだ。足をピンと伸ばして、前に押し出す。一番高いところにきたら、足を曲げて漕ぐ。
バランスもいいし、枝が軋むこともない。良い感じだぜ。これにお嬢と一緒に乗るんだ。キャッキャ、ウフフってな。
「どうだ、ベル!」
「ちゃいこー!」
「ワッハッハッハ! そうか!」
そこに俺のオヤツを持って親父が出て来た。
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