93ー筋金入りのシスコン
お嬢と一緒に、キャッキャうふふって笑いながら遊ぶんだ。
「ぷっぷーって」
「ああ、あれな。また乗って遊ぶんやろ?」
「ちょうちょう。おじょうをのちぇて」
「ネネは僕が乗せる!」
「うじぇー」
「ベル! ウザイって言うな!」
だからブレイズ様がいると話が進まないんだって。
「まあ、時々なら代わってやらなくもないぞ」
お、これってお久しぶりのツンデレさんの登場じゃないか?
素直に一緒に遊ぼうって言えないのかな?
「母上、僕は魔道具で聞いてました。シュテファン殿下が出て行かれたことも知ってます。だから、ベル。ありがとう」
おっと、やっぱ聞いていたんだ。ブレイズ様なら絶対に聞いていると思ってたんだ。そのために、奥様から魔道具を譲ってもらったのだし。
「ブレイズ様、距離があったのでかなり聞き辛かったでしょう? 私は途切れ途切れにしか聞こえませんでした」
「ゲイブ、それは邸の中にいたからだ」
な〜る。そういえば、親方が壁がどうとか言ってたな。ふむふむ。
「僕は庭に出てじっと聞いていたから、何があったのか理解できた」
「ブレイズ……」
奥様がちょっぴり引いている。シスコンもここまできたか、みたいな?
「だって母上、心配だったのです。できることなら、ついて行きたかった!」
「ブレイズったら、将来お嫁さんをもらう時が心配だわ」
だよな、俺もそう思う。このままシスコンがエスカレートしたらどうするよ?
「きっしょ」
「きしょいって言うな! 心配なんだ!」
「もう二人とも、その言葉使いはやめなさい」
「はい、すみません」
叱られちゃった。テヘ。
ブレイズ様が入ってきて中断しちゃったけど、お嬢の話に戻そう。
このままって訳にはいかない。いくらお嬢が考えたくなくても、忘れることはないだろうし。
「いっちょのこと、きおくをけちゅ?」
「ベル! 何を言ってるんだ!」
まあ、それは最終手段なのだけど。
「ねえ、ベル。そう言うってことは、ベルは記憶を消せるのかしら?」
「おー」
え? なんでみんなそんな目で見るかな? だって俺は竜族だって。ブレイズ様の大きな火も平気だっただろう?
「ベル、それとこれとは違うで」
「ガンちゃん、ちょう?」
「ああ、そうやな。それはきっと人の中では、したらあかんことや」
「りゅうじょくでもちねー」
「竜族でもしないことを、ネネにしようと言うのか!」
「ちっ」
「だから舌打ちはするなー!」
だから、ちょっとガンちゃん説明して。俺、面倒になってきた。
「何言うてるねん、しゃーないなー」
モグモグと蒸しパンを食べている間に、ガンちゃんが説明してくれた。
それは最終手段だって。何もそれを推奨しているわけじゃない。
「そんなことをしてネネは無事なのか?」
「おー」
まあ、丸一日くらいは寝るかも知れないし、しばらく頭が痛いかも知れないけど。
「ちょれでも、じゅっとなやんで、からだをこわちゅよりまち」
「病むよりはいいってことか?」
「ちょうちょう」
まあ、しばらくは様子を見るしかないけど。
あの時、お嬢だけが悪いんじゃないって。家族の誰も、お嬢を責めてないって分かってもらわないと。
きっとお嬢は自分を責め続けるだろう。
時を巻き戻したんだ。だからこれからは、前みたいにならないように対処するんだって、前向きに考えて欲しい。
「もどちたから、やりなおせるんだって」
「そうね、そう思って欲しいわね」
「でもネネは責任感が強いから……」
てか、前の時はどうだったんだ? 俺は今頃からしかお嬢を知らないから、出会った時はもう火属性魔法が使えていたと思うのだけど。
「まえはどうらった?」
「今頃だと……そうね。中級の火属性魔法が使えたはずだわ」
「母上、そうですね。ネネは才能がありますから」
どうしてそこで、ブレイズ様が自慢そうにしているんだ?
「ブレイズちゃまは、ちゃいのうがねー」
「なんでだよ!」
「だって、コントロールできてなかった」
「そ、それはだ! あまりにも自分の中の魔力量が多かったからだ!」
「へー」
はいはい、言い訳は見苦しいぞ。そのコントロールができるようになったのは、誰のお陰だったかな? ん? 言ってみ?
「たちか、まえのときは、おれが……」
「あー! そうだ! ベルのお陰だ!」
「ふふふん」
勝ったね、今日は俺の勝利だ。
「ベル、いい加減にしなさい」
「あい、おやじ」
俺たちがそんな話をしている間、お嬢はずっと眠っていた。
アイレが心配して付いていたけど、泣いたりはしなかったらしい。
気疲れしたってこともあったのだろう。巻き戻してから初めて人前に出たのだから。
翌日からはいつも通りのお嬢だった。俺が親方と一緒に、話せる魔道具を改良しているのを見たりして。
もちろん、俺のモーニングコールも続いていた。
「おやかた、できちょう?」
「おう、任せな! もうすぐだ。この回路を個々に繋げたらできるぞ」
「ちょれって、いくちゅくらいと、はなせる?」
「ん? なんだって?」
「せやから親方、何人くらいと話せるかって聞いてんねん」
「そりゃ、これを持っている人全員と話せるぞ」
「ちゅげー」
これって何を聞いているか分かる? 今親方は、個別に話せる機能を追加しているんだ。誰と話すかは発信する人が選ぶ。
じゃあ、同時通話は何人くらいと話せるのかな? てことだ。
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