92ーうぜー
「ガンちゃん」
「おう、わいが説明したるわ。まずはお嬢のストレスになっている原因やな」
「ちょうちょう」
「それはあの悪夢が現実だと、分かったからでしょう?」
「けろ、やりなおちてる」
「ベル、それは原因は解決されていると思っていいのか?」
「ちょれも、ちょっちちげー」
ショックなのは確実だろう。
だけどもう一つ原因があるだろう? 第2王子だ。あいつと婚約したから、ああなったと思わないか?
ガンちゃんが俺の考えていることをちゃんと理解して言った。
「そうやな、第2王子やな。根源やん」
王家から無理矢理結んだ婚約なのに、あんな祝いの場で第2王子の独断で婚約破棄を言い渡したんだ。
「なんとしても婚約はさせないわ。今日のことで婚約の可能性は、限りなく小さくなったと思っていいわね」
「ちょうちょう」
だって王妃はもう駄目だろう? 公の場に出さないって言われてたし。
そんな力のない王妃の言うことが、すんなり通るとは思えない。ただ、王がどう思っているかだ。
「おうはどうかな?」
「当然、第2王子を矯正しようとされるでしょうね」
「そうですね、その結果如何かと」
「ええ、まだ安心できないわ」
第2王子が矯正できたら、また後ろ盾を望むようになる。そうしたら真っ先に白羽の矢を立てられるのはお嬢だ。
それに王自身がお嬢を気に入ってしまった場合も、考えておかないといけない。
「うじぇーな」
「こら、ベル」
だってさ、あんな奴いくら矯正したとしても元々の性格が悪いじゃん。なんて言ったら駄目なんだけど。
「でも王子殿下は天才なのでしょう?」
「てんちゃいとなんとかは、かみひとえ」
「アハハハ、ベルはそんな言葉を知っているのか」
親父、笑うなって。勉強ができるのも天才なのだろうけど、でもそれだけじゃ人としてどうなんだって話だ。
ドラゴンの俺が言うのもなんだけど。
お嬢は専門的な治療やカウンセリングを受ける方が良いのだろうけど、この世界にそんなものはない。だからこそ、俺のラブで癒すんだ。
「やっぱ、らぶちかねーな」
「どうやっても、そこにもっていくんやな」
「ガンちゃん、だってちょうら」
「そうね、ベルのそんな気持ちがネネを癒してくれるといいわね」
あれれ? 奥様ったら生温かい目で俺を見てる? また言ってるぞとか思われちゃってる?
「だってベルはしつこいからな」
しつこいって言うな。ストーカーか何かみたいじゃないか。
「結構、ヤバイと思うで」
「なんで!?」
どこがだよ! 献身的に俺のラブで癒そうとしているんじゃないか。
お嬢が自分から少しでも話せるようになれば良いと思うんだ。
人って言葉にするには、一度頭の中で考える。その時に、向き合うことになる。
それができるようになったら良いのだけど。
お嬢はまだあの時のことを何も言わない。触れようとしない。それが余計に心配なんだ。
それにお茶会のことを初めて聞いた時に、お嬢が何て言ったか覚えているか? 『ガツンと言ってやる』ていったんだぞ。
そんなお嬢が動けなくて泣いちゃったんだ。お嬢は自分で思ってた以上に、恐怖心があったってことだろう?
「母上、戻ってきていたのですか?」
そんな話をしていると、ブレイズ様が顔を出した。
「あら、ブレイズ。どうしたの?」
「ネネが眠っていると聞いて……心配になったのです」
まあ、普通に疲れたってのもあるさ。あれだけ初対面の人が、たくさんいる場所に行ったのだから。
「ちゅかれたんら」
「ベル、ごまかさなくていい」
「ちっ」
「なんでそこで舌打ちなんだ!」
むむむッとブレイズ様と睨み合う。いや、本当にウザイぞ。
そんなことを言ってはいけない。ブレイズ様だってお嬢を心配しているんだ。それは分かっているのだけど。
「ベル、本当のところどうなんだ?」
「きっと、ちゅかれた」
「だから!」
「ブレイズ、それもあるのよ。でもネネは、トラウマになっているんじゃないかって話していたの」
「トラウマですか?」
ほら、気付いてねーじゃん。俺は気付いたからな。ふふふん。
「ネネは魔法を使ってないでしょう?」
「えっと、母上。ネネは魔道具に魔力を流してましたよ?」
「ちょれだけじゃねー」
ホルハティ家の火の魔法を使おうとしない。練習もしない。
魔法自体から距離を置いているみたいに見える。そんな内容を奥様に説明してもらった。
「あの時の記憶が、事実だったと分かったからでしょうか?」
「それもあるでしょうね」
「おじょうは、きじゅちゅいてんら」
「そんなことは分かっている!」
「おれたちが、おもってるいじょうに」
「そう……そうだな」
「だから、おれのらぶ」
「それは関係ない!」
ええー、あるんだって。やっぱラブが必要なんだって。え、ちょっと俺ってしつこいか?
「ああ、そろそろやめとき」
「わかった」
仕方ないから大人しく蒸しパンでも食べていよう。
「ベル、最近蒸しパンばっかりやな」
「ちょう、りょうりちょうがこってる」
「そろそろ別のん食べたいやんな?」
「うん」
俺とガンちゃんを見て、ブレイズ様が呆れた顔をしている。
だって深刻になったって仕方ないじゃないか。まだそうだって分かったのだから、対処しようもあるってもんだ。
しっかり食べて、ちゃんと寝て、柔らかい陽射しの下で遊べば気も晴れるさ。だから俺はお嬢と遊ぶ。
お読みいただき有難うございます!
応援して下さる方、続けて読んで下さる方は是非とも下部↓の☆マークで評価をして頂けると嬉しいです!
宜しくお願いします。




