91ーラブで癒す
お茶会でのお嬢を見て、俺は思ったんだ。
「とらうま」
「ベル、なんだと?」
「とらうまらって」
「わいが分かりやす~く説明したろ」
「えー、ガンちゃん、わかるのか?」
「当たり前やっちゅうねん」
舌足らずな俺の代わりにガンちゃんが説明してくれた。それはガンちゃんも気付いていたのだろう。だって不自然だから。
お嬢は巻き戻す前の記憶がある。自分がキレちゃって、最上級爆裂魔法で王城を吹き飛ばした記憶がだ。
鮮明に覚えていなかったとしても、魔法で何かしたことは分かっているだろう。
王城が崩れ落ちるのを覚えているのかも知れない。それを俺が止めに入った。
自分の魔法でそうなったのだと、お嬢の性格なら自分を責めていても不思議じゃない。
「それってな、やった本人はどう思うかってことやん。な、ベル」
「ちょうちょう」
「ベルがやってきて、あの記憶が本当にあったことだと分かった時に気付くべきだったわ」
「ええ、奥様。失念していました」
だろう? 俺はちゃんとお嬢を見ているからな。それもすぐに気付くんだ。
お嬢が傷付いているのは分かっていた。時々夜泣きをしているのだってそうだ。
だけど、魔法を使わないってどうなんだ?
「ベルが来てから、お嬢様が魔法を使わなければいけないことなんてなかっただろう?」
「まあ、ちょうらけど」
「じゃあ、どうしてそう思ったんだ?」
「おじょうが、まどうぐにまりょくをながちゅとき」
「今日のお茶会でかしら?」
「ちげー。まえに、てちゅとちたとき」
ほんの一瞬なんだけどな。興味深そうに話せる魔道具を見ていたお嬢に『魔力を流す』と言ったら、目が不安そうに曇ったんだ。
それも一瞬のことで、お嬢はすぐに魔力を流して使っていたから気のせいかと思っていた。
だけど今日のお茶会で、第2王子がお嬢の腕を掴もうとした時に確信した。
「おじょうなら、まほうでなんとかできる」
「ほう、それはそうだな」
「でも王子殿下を相手に、魔法を使えないと思ったのかも知れないわ」
「単純に驚かれたのかも知れないぞ」
「おじょうは、ちょんなことねー」
あの冷静なお嬢が第2王子に腕を掴もうとされたくらいで、魔法を使うこともできないくらい驚いたりしない。
火の魔法を使わなくても、シールドを展開して掴めなくすることだって朝メシ前だ。
奥様の言うことも一理あるんだけど、でもあの時お嬢は震えていた。
「おじょうは、ふるえてた」
「ベル……」
「こわかったんら」
前のお嬢なら、第2王子を怖がったりなんかしない。堂々と駄目なことは駄目と指摘する。
もし手を出されそうになったとしても、魔法で返り討ちにできる。
その能力があるはずなのに、お嬢は怖がった。身体が動かなかったんだ。
泣きながら俺の背中に掴まっている手が、小さく震えていた。
思わず振り返って、抱きしめたくなったのを覚えている。
「だからあれやん、トラウマやん。ベルはそう思ったんやんな?」
「ちょうちょう」
お嬢は俺たちが思っている以上に傷付いているんだ。平気な顔をして笑っているけど、傷付いていない訳がない。
もっとそれを重く見るべきだった。お嬢はどれだけ不安だっただろう。一人で我慢していたんだ。
遅くなってごめん。だけど俺は今からでも癒してあげたい。
「おれのらぶで」
「ぶはッ!」
だから親父、笑うなって。俺は真剣なんだ。超真剣。
「な、ベルは不憫な奴やで」
「いちじゅといって」
「アハハハ! まあ一途やな、なにしろ巻き戻す前からやからな」
そうそう、だから言ってるじゃん。筋金入りだって。
「ベル、よく気付いてくれたわ」
「おー。けろ、どうちゅる?」
心に深い傷を負っているのだとしたら、一長一夕では回復しない。時間が必要だ。焦らず気長に癒すしかないぞ。
「おれのらぶ」
「だからベル。それは置いとき」
「え、ガンちゃん。らぶしかねーじょ」
「ベル、ありがとう。そんなにネネのことを思ってくれて」
今更何言ってんだ。前の時はお嬢が幼い頃に婚約が決まってしまったけど、今回はそうはさせない。
だから俺も遠慮はしない。ガンガン俺のラブを伝えていくぜ!
「でもね~、ベル」
「あい?」
「あのモーニングコールはどうかと思うわ」
ええー、奥様は聞いてないはずだ。だって魔道具を持っていないから。
「旦那様のを借りて、聞いたことがあるのよ。ふふふ」
「ちまった」
これはいかん。マジで早く親方に改良してもらわないと。
ちょっと親方のところに、行ってきてもいいかな?
「ベル、だからお嬢様のことはどうするんだ?」
「えっちょ、どうちよ?」
えっと、確か俺の前世で何かあったぞ。リハビリ的なやつだ。それが必要なのだと思うんだ。
俺は専門家じゃないから、よく知らないけど。
だけどあまり刺激したら駄目なんだっけ?
まずは心と体を休めて、疲労とストレスの回復だ。
俺がやってくるまで、どうしてあんな記憶があるのか分からなくて不安もあっただろう。
それがストレスになっていたとは考えられないか?
ならその原因ははっきりしたはずだ。だけど悪夢と言っても良い記憶だ。
それが本当にあったことだとなると、お嬢はどう思っただろう?
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宜しくお願いします。
またまた遅くなりまして、申し訳ありません(*>ㅅ<)՞՞




