82ー交流の場
「ねえ、僕」
なんだ、俺か? キョトンとしていると、話しかけてきた。
「ちびっ子なのに、あなたも従者なの?」
「ちょうらじょ」
「あら、どちらの従者かしら?」
「ほる……えっちょぉ、ほりゅはてぃー」
「ふふふ、ベルちゃん言えてないわよ。ホルハティ公爵家ですわ」
「まあ、私はヴェント公爵家なのですよ。ベルちゃんて言うの? よろしくね」
ヴェント公爵家とは、風属性魔法の国一番の使い手だ。
確か、ホルハティ家の火属性魔法とは相性が良いとかで、よく一緒に任務に就いていた記憶がある。
旦那様の弁当を持って行った時に当主と会ったけど、とっても気さくな人だった。ああ、甘いものが好きな人だったな。
「なんだ? フランヴァ様とこか?」
隣に並んでいた従者の兄ちゃんがこっちを見た。
「ちびっ子じゃないですか」
「ふふふ、可愛いわよね」
「ちびっ子、本当に従者なのか?」
「おー」
「俺もヴェント家の従者だ。坊ちゃん専属の子はまだ幼いから、俺が代わりに来たんだ」
「ちびっこなのか?」
「坊ちゃんより2歳上なだけだからな」
「おれはおじょうと、いっちょら」
「へー、よくちびっ子を連れてきたな」
「おれ、ちゅよいから」
「アハハハ、そうなのか」
なんだ、全然信じてないな。けど、兄ちゃんより強いぞ。
この従者は黄緑色の瞳をしているから、風属性魔法が使えるのだろう。もう一人のメイドは、黄色っぽい茶色の瞳だから土属性か?
四公爵家は強大な魔法を使えるので、従者の魔法属性にはそう拘ってはいない。
だけどそうでない家系は、自分の家の属性魔法が打ち消されるような属性を持つ人を雇うことはない。
それでもお嬢の家は火属性魔法なので、同じ火属性か相性の良い風属性を持つ者がほとんどだ。
お嬢の家側だけでなく、雇われる側も同じことが言えるからだ。
ヴェント家は風属性魔法だ。土属性魔法には強い。だからなのだろう。
ただし例外もある。ブレイズ様の従者、ヴァシリーだ。
ヴァシリーは水属性魔法で、ある程度の火を打ち消すことができる。
これはブレイズ様が、自分で制御できないほど強い魔力を持っているからだ。自分の身を自分で守れる従者ということになる。
とはいっても、ブレイズ様の魔法が強すぎて、前の時は火傷が絶えなかったけど。
「ベルちゃん、座りましょう」
「おー、じゅーしゅのみたいな」
「はい、いただきましょうね」
お茶会も取り敢えずお茶だ。テーブル毎に会話をしながら、和気あいあいといった雰囲気だ。
しばらく俺の出番はねーな。と、アイレにジュースをもらっていた。
そしたらお嬢がニコリとしながら俺を見た。それを俺が見逃すはずないじゃないか。とっさに短い親指と人差し指の指先を、交差させて見せた。あれれ? お嬢がキョトンとしているぞ。
「ベルちゃん、それは何ですか?」
「らぶ。おれの、らぶ」
「アハハハ! どこがラブだよ」
「わかんねー? これ、ハート」
「おお、なるほどな。よく思いついたな。短い指だけどな」
短いは余計だ。だって前世でアイドルがやってたもん。これが分からないなら、もっと大きなハートにするか?
俺はジュースのグラスを置いて、両手でハートを作る。お、今度はお嬢が、ふふふと笑ってるぞ。伝わったらしい。
「おっきな、らぶ」
「やだー! ベルくん可愛い!」
「ふふふ、ベルちゃんったら」
「本当にお嬢様が好きなんだな」
「おー、あたりまえ」
だって俺は、マジでお嬢を嫁にしようと思っているからな。アタックするのは早い方がいい。
またグラスを両手で持って、ジュースをコクコクと飲む。
「うめーな」
やっぱ王城のジュースは違うのか?
「今の時期だと、ぶどうジュースですね。美味しいでしょう?」
「おー」
アイレはよく知っている。これってうちでも仕入れてくれないかな。
「ちょううめー」
飲みながら下に着いていない足をプランプランさせる。ご機嫌だぜ。
「アハハハ、やっぱちびっ子だな。俺はレーニスだ。よろしくな」
「私はアネッタよ。よろしくね、小さな可愛い従者くん」
アネッタは俺の頭を撫でる。アイレと同じようなメイド服に、ヘッドドレスをつけたグリーンの髪を高い位置でツインテールにしている。
頬に少しだけあるそばかすが、チャームポイントになっている可愛らしい感じの女性だ。
アイレよりまだ若いな。
お互いに自己紹介をしている。仲良くなれたらいいね。
「アイレのほうが、とちうえ?」
「はい、そうみたいですね。私は乳母として入りましたから」
「え、アイレさんって乳母だったのですか?」
「そうなんですよ。奥様に拾っていただきました」
「えー、めっちゃ若いー! 綺麗!」
そうそう、アイレは乳母には見えない。お嬢に授乳が必要なくなってから、そのままお嬢付きになっている。
スタイルも良いし美人さんだ。凛としているという表現が似合う。
アネッタと自己紹介したメイドさんは、どちらかというとキュートだ。まだ若いし。
「もし、話が聞こえたのですが」
そう言って声を掛けて来たのは、ヒュドール公爵家とティエーラ公爵家の従者たちだ。
アイレが言っていたように、このお茶会は従者たちにとっても顔合わせになっているらしい。
ま、俺は関係ないのだけど。なんて思いながら、足をプランプランさせながらジュースを飲んでいた。もちろん、お嬢からは目を離さない。
お読みいただき有難うございます!
応援して下さる方、続けて読んで下さる方は是非とも下部↓の☆マークで評価をして頂けると嬉しいです!
宜しくお願いします。




