78ーてちゅてちゅ
親方の側に木箱を持ってきて、そこにヨイショと座ってずっと短い人差し指を立てている。
「そんなもん、ベルはどうってことないやん」
「ガンちゃん、ちょうらけど」
「ベルはずっと魔力を流していて、平気なのか?」
「どうってことねー」
「そうなのか」
話せる魔道具の時にブレイズ様も、魔力を流して手伝ったと言っていた。
ブレイズ様だって、魔力量はとっても多いのだから余裕じゃね?
「ブレイズちゃまも、へいき」
「平気ではなかったな。僕は魔力を別の物へ流すことに、慣れていないから」
「ちょうなのか?」
「そうなんだ。集中してないと、途切れてしまう」
そんなの俺だって慣れてないぞ。こんなの初めてやるし。
「せやからベル。竜族と人間の違いやで。竜族は、そんなん考えやんでもできるんや」
「ちょう?」
「ああ、そういうもんや。種族によって色々違いがあるからな」
「けろ、ブレイズちゃまも、おおい」
「そうやな、人間にしてはめっちゃ多いわ」
「ガンちゃん、僕もそう思っていた。でもベルを見ていると、別格だと思うよ。まさか指一本なんてな」
「そら、しゃーないって。さっき言ったように、種族の差やって」
ほうほう、時々ガンちゃんは賢そうなことを言う。
ガンちゃんが俺の肩の上から、ペチペチと頭を叩いてくる。
全然痛くはないのだけど、気が逸れるからやめろ。今俺は魔力を流しているのだぞ。
「時々ってなんやねん! わいは常に賢いっちゅうねん! 竜族の使い魔やで、賢くないとなられへんねんで!」
「へえー」
「こら、ベル。信じてへんやろ」
「ちょんなことない」
使い魔って、竜族しか持たないのかな?
「そんなことないで。エルフも持ってるやつは、おるんとちゃうか?」
「ほおー、エルフちゃんて、あったことねーな」
「この国にもおるんとちゃうか? どの国にも数人は派遣されてるはずやで。派遣大使ってやつや」
「ガンちゃん、何がだ?」
ガンちゃんが俺の思っていることを読んで話すから、ブレイズ様は半分しか内容が分からない。
ガンちゃんがちょっぴり偉そうに話した。
「ブレイズ様、使い魔や。竜族の他にエルフも使い魔を持ってるやつは、おるやろなって話や」
「それは、やはり魔力量の多さなのか?」
「そらそうや。使い魔は絶えず魔力を貰ってるからな」
「そうなのか!?」
「そうやで。わいもベルから、いつも魔力を貰ってるで。な、ベル」
「ちらねー」
「な、こんなもんや。わいが魔力を貰ってても全然気にもせーへんねん。それだけの魔力量があるってことや」
ブレイズ様はガンちゃんが説明したことに驚いているみたいだけど、俺は興味のないことだ。それより親方、どんな感じ?
「おやかた、どう?」
「おう、もう少しだ」
いけそうじゃん。といっても、かれこれもう一時間くらい魔力を流している。ちょっと面倒になってきた。
「ブレイズちゃま、かわらね?」
「どうしてだ? ベルは魔力量が多いのだろう?」
「おちょとで、あちょびたい」
「ベル! ネネを守るためだぞ!」
「ちょうらった」
ふぅ~、そうだそうだ。お嬢を守るためだ。電動バイクにのって、ぷっぷーってやってみたいけど。
あれ? そういえば、親方は付けてくれたのかな?
「おやかた、ぷっぷーって」
「ああ、ラッパか?」
「ちょう、ちゅけた?」
「いや、まだだぞって話し掛けるなって!」
あら、ごめんね。だって俺、暇なんだ。親方が駄目なら。
「ブレイズちゃま、なんかはなちて」
「どうしてだ?」
「おれ、ひまだから」
「何を言ってるんだ! ちゃんと魔力を流しているのか!?」
「ながちてる。けろ、ひま」
「アハハハ! ベルは緊張感ってもんが、あれへんな」
「だってガンちゃん、まりょくをながちてるだけだち」
そんなことを言いながら魔力を流し続けて、やっと親方が顔を上げた。
「できたぞ!」
「やった!」
「本当なのか、親方!」
「これで記録できるはずだ! 試してみよう!」
テストだ、テスト。本当に声が記録できるかどうかだな!
魔石の正面に立って、少し距離を取る。だって近くにいるとは限らないから。
マイクを持っているつもりで、グーにした手をお口の近くにもっていき喋る。
「あー、てちゅてちゅ」
「アハハハ! ベル、何言ってんだ?」
「だから、てちゅと」
「テストがどうして、てちゅてちゅなんだ?」
「ブレイズちゃま、ちらねーの? ちょういうんだ」
まあ、俺は舌足らずな喋り方だからちょっと違うけど。まあいい。
「てちゅてちゅ、おじょうはちょうかわいい」
はい、記録できてるか見て。
「いいのか?」
「うん」
これって見る時はどうするんだ?
「おやかた、どうやってみるんだ?」
「これを手に乗せるんだ。そしたら台座が手のひらにつくだろう? そのまま魔力を流すといい」
ほうほう、よく考えてるな。記録する時はもっと簡単にただ魔力を流すだけ。再生する時はちゃんと手に乗せないといけないと。
俺の小さな手に乗せて魔力を流す。
『あー、てちゅてちゅ』
「あ、映ったぞ。ちゃんと声も入っている」
俺の超キュートな姿が空間に映し出されるのと同時に、俺のイケボも聞こえてきた。
『てちゅてちゅ、おじょうはちょうかわいい』
完璧じゃん。これいいな。魔石が大きいから、ちょっと存在感を主張しすぎているけど。
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