77ーふざけてねー
「おやかた、おとをのこちぇない?」
「ピコンか?」
「ちげー」
「アハハハ! あの話せる魔道具の会話をか?」
「ちょうちょう」
「それは無理だな。あれは話すだけの物だ。魔石が足らねーぞ」
「なら、おやかた。これにおとはのこちぇるのか?」
「あんだって?」
もうじれったいな。今俺が魔力を流している魔道具は、正面にあるものを記録できるのだろう?
その時に、会話も一緒に記録できないかって聞いてるんだ。
「親方、ベルはそれに会話も残せないかって聞いているんだ」
そうそう、ブレイズ様さすがだね。伊達にいつも絡んでない。
「会話も一緒にか? 離れた場所に音を飛ばさないといけない訳じゃないから、魔石自体はこれで対応できるだろうが難しいな。回路を組み直さないといけないぞ」
それは残念だな。証拠を残したかったのだけど。ちょっとダメ元で言ってみよう。
「おやかた、いまからちよう」
「何言ってんだ!? そんなに急ぐことはないだろう!?」
それがあるのだよ。今日のお茶会に持って行きたいんだ。
王子がどんなことをお嬢に言うか、王妃がどんな対応をしてくるのか、残せるのなら残しておきたい。
「ブレイズちゃま、きろくできたら、ちょうこになる?」
「なんだって? 証拠と言ったか?」
「ちょう、おうじやおうひが、いったことのちょうこ」
ブレイズ様に、今俺が魔力を溜めている魔道具の話をした。
この正面にあるものを記録する。一緒に話している内容を記録できたらいいなって。それって完璧な証拠にならないか?
「それは良い考えだ。親方、僕も手伝うから今からそれを修復しよう!」
「なんだと!? どういうことだ!?」
だから話を聞いて読んでくれ。今日のお茶会で、お嬢と王子の会話を記録したいんだって。
俺がじれったくて口ごもっている間に、ブレイズ様が説明してくれた。
いいよな、ちゃんとハキハキ喋れる人は。
「お嬢に持たせるのか!? ならこんなゴツイ物は似合わないだろう!? 目立つぞ」
「あーちょっか」
その上お嬢は話せる魔道具のブローチも付けている。ちょっとそれって目につくぞ。
目立たないに越したことはないのに。どうしよう?
「ベル、母上だ」
「ちょっか!」
いや待て、奥様だって話せる魔道具を着けているぞ。それはどうするんだ?
「ネネが魔道具を持っているのだろう? それにベルも持っている。なら母上はこっちの魔道具を持ってもらおう」
「ほうほう、いいのか?」
「僕が話す。僕だってあの魔導具を持ちたいんだ。リアルタイムで何が起きているのか知りたい!」
じゃあ、頼んでみて。といっても、修復できるか分からないけど。とにかく親方やってみようぜ。
お、魔石の色が変わってきたぞ。もう少しじゃないかな?
「おやかた、いろ」
「おう、変わってきたか? ならもうすぐだ」
俺とブレイズ様が今からやろうと言うから、親方は仕方ねーなと言いながら準備してくれた。
魔道具を作動させるにはまず魔力を流す。
その魔力が目的通りに作動するように、回路を組む必要がある。
それって本当は魔道具師の仕事なのだけど、ドワーフの親方ができて良かった。
何気にとっても頼りになる親方だ。
お茶会が無事に済んだら、カートを作ってもらって俺の武器も作って欲しいな。
前の時も親方に作ってもらったし。まだちびっ子だけど、持っていたい。今度こそお嬢を守るために。
「おやかた、もういい」
「おう、じゃあやってみるか!」
「おー」
「親方、ありがとう!」
作業場に移って、親方は魔道具の魔石をパカッと外した。
魔石を嵌めてあった台座に、とっても精密で訳の分からない模様が書いてある。これを魔力回路と呼んでいる。前世だとPCの頭みたいなもんだ。
魔力回路を、専用のペンを使って書いていく。この作業を魔力回路を組むと言っている。
鍛冶が専門のドワーフの親方が、どうしてこんなことができるのか知らないけど。
「ベル、このペンに魔力を流すんだ」
「わかった」
これは前にもやった。俺は親方が持っているペンに向けて、短い人差し指を出した。
「ベル、ふざけてんじゃねーぞ」
「ふじゃけてねー」
「指一本かよ!」
「いける、らくちょうら」
「そうかよ」
はぁーッと呆れたみたいに、親方が大きなため息をついた。
なんでだよ、俺の人差し指じゃ不満か? 確かに短いけど。
「ベル、そんな問題とちゃうな」
おや、そうかよ。親方はペンでジジジと回路を書いていく。
まるで基板のようになっている回路をよく見ると、模様の一部が途切れていたり消えている箇所がある。そこを親方は修復していく。
「これは……なんだ?」
「親方、分からないのか?」
「ブレイズ様、ワシは魔道具専門じゃないからな。見たこともないぞ。だけど待てよ、ここがこうなっているから……」
親方はブツブツと言いながらペンを動かしていく。
全く分からない俺からは、迷いなく書いているように見える。親方って天才じゃないか?
「おやかた、てんちゃい」
「ガハハハ! 褒めてもなんも出ねーぞ!」
「ああ、親方! 笑ったら駄目だって! ベルも笑うようなことを言うんじゃない!」
ふふふ、ブレイズ様に叱られちゃった。
笑うとこじゃないもん。褒めたのに。それに俺も、一応集中して魔力を流しているんだぞ。
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