72ーガンちゃんの好物
ガバッと飛び起きたガンちゃん。
「親父! スコッチエッグ!」
「アハハハ! 起きたか?」
「なんやねん、嘘かいな」
「いや、今朝はスコッチエッグだぞ」
「やりぃー!」
朝からスコッチエッグかよ。ガンちゃん、卵好きだもんな。
「おー、ゆで卵が一番好きやけどな。シンプルイズベストやで」
朝から元気だね。俺、朝は軽くでいいや。
「ベルはまだ戻ってないんだ」
「え、ちょう?」
「ああ、食欲はまだないだろう?」
「ちょういえば、ちょうだな」
「なんや、ベル! しっかり食べなあかんで! 大っきくなられへんで」
朝からうるせーよ。俺、寝起きはそっとしておいて欲しいの。
気怠い感じが、また良いだろう? ちょっとカッコよくね? 大人っぽくね?
「どこがやねん、意味分からんわ」
「ほら、朝メシだ」
「おー」
トコトコと親父に連れられて、食堂へ向かう。えっと、今日のお茶会だけど。
「おやじ、なんじからだっけ?」
「子供たちばかりだからな、おやつの時間に合わせてあるらしいぞ」
「ちょっか」
ふむふむ、じゃあ昼を早めに食べて少しお昼寝しよう。それからだな。
「ベルはまだちびっ子やから、お昼寝しやなあかんもんな」
「ガンちゃん、ちびっ子だからってだけじゃないぞ。ベルはまだ本調子じゃないだろう」
え? そう? 俺、元気だぞ。
「そんなほっそい身体やと、力出えへんやろ?」
「あー、ちからはねーな」
「ないんじゃなくて、出ないんだ。前もそうだっただろう」
「ちょうだっけ?」
覚えてないや。お嬢の可愛さならバッチリ覚えてるんだけど。だってキラキラしてるもんな。
「ベル、朝から絶好調やな」
「ふふふん」
お嬢はもう食べてるのかな? 今日は準備もあるだろうから、遊べないのかな? またお嬢を後ろに乗せて走りたいな。
「ぶっぶー」
「アハハハ、もう遊ぶことを考えているのか? 今日はお嬢様は無理だろう」
「やっぱち?」
「ああ、ベルも朝メシを食べたら呼ばれているぞ」
「おれ? だれに?」
「奥様だ」
なんだ? 俺は用はないぞ。
「ベルの一張羅を買ってくださったんだ。時間がなかったからオーダーができなかったと、おっしゃっていた」
「えー」
そんな、俺はこれでいいのに。一応、執事みたいな感じだし。そうそう、小さな執事くん、て言われた気がする。第1王子の護衛にさ。
あれ? 第1王子に護衛がいるのだから、第2王子にも護衛がいるのか?
「なあ、ガンちゃん。きいてみて」
「ベル、丸投げはやめとき」
だって、ちょっと長くなると分かってもらえないからさぁ。
「しゃーないな。親父、第2王子にも護衛はいるんか?」
「当然だ」
「ちらねーな」
「前の時にもいただろう? 一言も喋らない岩みたいな護衛が」
「おぼえてねー」
「今日もいるだろう」
「ちゅよいのか?」
「そりゃ、第1騎士団だからな」
ほうほう、でも岩みたいな護衛か。全く全然記憶にない。
前の時にお嬢が爆裂魔法をぶっ放して、城が崩壊した時にそいつが助けたのかな?
あのえせ聖女は置いといて、王子はきっと助けたのだろうな。
「めっちゃ良い匂いやな!」
食堂近くになると、ガンちゃんがピューッと飛んで行った。元気だね。
「ベル! おはよう!」
元気なのがもう一人いた。料理長だ。厨房の中から大きな声を出している。
おー、と一応片手をヒョイとあげる。ガンちゃんが呼んでいる席に着いたら、親父がトレイに載せて持ってきてくれた。
「ベルはフレンチトーストにしておいたぞ。トロフワなオムレツもだ」
「ありがと」
「ガンちゃんは、スコッチエッグだ」
「めっちゃ美味そうやん、いただきー!」
ガンちゃんはモモンガだから手掴みなんだ。あらら、ガンちゃんの顔より大きいんじゃない?
両手でガッシリ掴んで、スコッチエッグに齧り付いている。テーブルに足を伸ばして座ってさ。お行儀悪いよ、小さいから仕方ないけど。
俺はトロフワなフレンチトーストをパクリと食べる。
「ちょーうめー」
「そうか! たくさん食べろよ」
もしかして、料理長も気を付けてくれてるのかな? 俺だけ別メニューだもん。
「しっかり食べなさい」
「おー」
「ベルがへばってしまったら、お嬢様も助けられないぞ」
みんなはスコッチエッグを美味しそうに食べているけど、実はこれ三食連続で出てきている。それは何故なのか教えてあげよう。
俺が目を覚ました日に、料理長にスイーツを伝授した。プリンとかふんわりパンケーキを。その後、料理長に相談されたんだ。
「なあ、ベル。この肉なんだけどな、何か美味いもんにならないか?」
そう言って出してきたのが、色んな種類の肉だった。この邸にいる人全員分には足らない程度の数種類の肉があった。いつもは、これを一緒に煮込んでしまうらしいのだけど。
「それもな、煮込むのが続くと飽きるだろう?」
「ほうほう」
そう思って考えていた時だ。まいどー! と御用聞きの兄ちゃんが、厨房の搬入口のドアから入ってきた。
腰にはエプロンを巻いているし、なんだかサ◯エさんみたいだな、なんて思っていたんだ。
実はその時御用聞きの兄ちゃんは、困っていた。なにやら兄ちゃんが注文を間違えたらしくて、多く仕入れてしまったという。
それで親方に、自分のミスは自分で責任を取れ! とか言われちゃって、困っていると。
「行く先々で買ってもらってるんスけど、なにしろ生ものなので」
なにを間違えたんだ? と見ていると、兄ちゃんが出してきたのは卵だった。
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