70ー寝落ち?
「だんなちゃま、どうちて?」
「どうしてか? それは天才ゆえだからとも言える」
は? 余計に分からん。なんだよ、その天才って。
前の時も天才とは言われてたけど、だけど性格に難ありだろう?
「じぇんじぇん、わかんねー」
「ベル、だから前の時もそうだっただろう」
旦那様に説明してもらった。
第2王子は、人が分からないと思っていることが分からない。それは幼いころからそうだった。
第2王子が楽しいと思うことは、同年代の子供たちはそうじゃないらしい。
だから、同年代は無理だと判断された訳だ。もっと年上の子じゃないとってことだ。
でないと王子がすることや言動を、我慢できないらしい。
「あー、|みちゅごのたまちいひゃくまれ《三つ子の魂百まで》」
「ベル、何を言ってるか分からないぞ」
「ブレイズちゃまったら、おばか?」
「なんでだよ!」
「ちんでもなおらねー」
「アハハハ! ベル、難しいことを知ってるな!」
笑いながら言うと、褒めてるように聞こえないぞ。
前の時もそうだった。人の機微が全く分からない。あれは俺に言わせると、理解しようとしていないんだ。
だって自分からわざわざ歩み寄らなくても、王子殿下と持ち上げる人たちがいたから。
そのお陰で、お嬢がどれだけ苦労したと思っているんだ。
第2王子は自分は偉いと、賢いと自覚しているんだ。
しかも王族だ。他人を理解しようと努力する必要なんてないと、思ってるんじゃないか? いや、それ以前の問題か? 人がどう思うとか、人の気持ちを考えたりすることがない。
そんな態度だったぞ。それは間違っていると教えなきゃ駄目だ。人を思い遣る気持ちをさ。
まず教え諭すのは、親の役目なんじゃないか? それを教育係に丸投げしてしまった、王と王妃も悪い。なんだ、結局王族が悪いんじゃないか。
「ベル、おこらないで」
「おじょう、おこってない」
怒ってないさ。ただあいつは駄目だ。お嬢に会わせたくない。お嬢があいつの犠牲になる必要なんてない。
今回いろんなことが変わっているが、大まかな出来事は変わらないらしい。お茶会も前の時も同じようにあった。
だけど、大きな違いもある。フラン爺が来ていること、ブレイズ様が最初から魔力操作ができていること、そして第1王子がやって来たこと。
慎重に流れを読まないといけない。俺は改めてそう思った。
何気に親方がいることも大きいぞ。俺は超大好きだぞ。色々作ってもらおうって思っている。
「ネネは我慢しなくて良いのだぞ!」
「ありがとう、おじいちゃま」
ほう〜、可愛い。ニッコリするだけで、お嬢の周りに花が咲いたみたいになる。お嬢だけ輝いて見えちゃう。
「まあ、確かに可愛いわな」
「ガンちゃん、ちょうだろう?」
ふふふ、ガンちゃんも分かっているじゃないか。
それよりも、明日のお茶会はどうなるのかな? 前の時は、俺は付いて行かなかった。
まさかその時に婚約者にと打診されるなんて、旦那様も考えもしなかった。
それ以前に前の時の今頃だと、俺はまだそんなに打ち解けてなかった。だって親父に買われて、このお邸に来たばかりだったから。
「ベルがいることも大きな違いだぁ!」
また部屋の中だというのに、大きな声を出しているフラン爺。
いつもこんな感じの人が、まさか偉い人の前では緊張するなんて誰が思う?
大きな身体を小さくして黙り込んでいるんだぞ。マジで使えねー。
「かりてきたねこ」
「ん? ベル、何だ?」
「うちべんけいか?」
「ベル! 私のことかぁッ!?」
ふふふ、また大きな声を出してる。その豪快な感じを、どんな人の前でも出してほしいものだ。
気の良いフラン爺だから、領民には慕われている。
領地では自分が苦手な偉い人もいないから、自由にいきいきとしているらしい。
それで調子に乗って、大奥様に叱られちゃうのだろう。
そういえば、大奥様も来るって言ってなかったっけ?
「おやじ、おおおくちゃま」
「大奥様がどうした?」
「いちゅ、くるんだ?」
「領地は遠いから、まだまだだろう」
「ちょっか」
あれれ? 俺が『大奥様』と言っただけなのに、フラン爺の目が泳いでいるぞ。どうした?
「ふ……ベル、触れるんじゃない」
「おやじ、どちて?」
「大奥様が来られたら、叱られると思っておられるんだ」
「あー、ちかたねー」
フラン爺って、小心者だよな。今回それがよく分かったぞ。
これも前とは違うことだ。ふむふむ。
「だって私は、ネネとブレイズに会いたいのだぁッ!」
今ここで、大きな声を出しても仕方ない。それを大奥様に言うといいぞ。
でもきっと叱られるだろうな。だって大奥様も、お嬢とブレイズ様は可愛い孫だから会いたいだろう。それを我慢して、領地でフラン爺を支えておられるのに。
「ふらんじい、だめだめ」
「ベル! またそんなことを言う!」
「アハハハ、お祖父様はお祖母様に弱いから」
「ブレイズまで、そう言うでない!」
ふふふ、可愛いお爺ちゃんだ。その時、俺の膝の上に、ポテンと何かが落ちてきた。
「え、ガンちゃん」
「アハハハ! ガンちゃんはもう限界だな」
肩に乗っていたガンちゃんが、寝てしまって落ちてきた。座っている俺の足の上に、ポテンと。
どこが有能な使い魔だよ。睡魔に負けてるじゃないか。
「遅くならないうちにお開きにしよう。ネネ、くれぐれも明日は用心するのだよ」
「はい、おとうちゃま」
さて、俺も部屋に戻ろう、ガンちゃんを抱っこしてさ。
動かしても起きもせず、スピーとお腹に両手を置いて眠っている。腹を見せても平気なのか? どんだけ警戒心がないんだよ。
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