65ー王子の護衛
時々こうして遊びに来るといいぞ。気晴らしにいいだろう?
「な、フランじい」
「ん? なんだ?」
「ときどき、あちょびに、くるといいんら」
「おう、私は時々と言わずにネネとブレイズの顔を見に来るぞ!」
「ちげー」
本当に、フラン爺ってもっと頼りになると思っていた。まあ、頼りにはなるのだけど。
偉い人たちの前では、気後れしちゃうってのが盲点だった。まさか豪快なフラン爺がそんな性格だったなんて。
「でんかが、あちょびにくるといいって」
「殿下か、それはどうだろうな。あまり出歩くと王妃に目を付けられてしまうだろう」
「え、ちょんなに?」
「今は第2王子に掛かり切りだろうがな。それに殿下は部屋の中に、護衛を連れて来られなかっただろう?」
そういえば、そうだ。護衛が王子の側を離れてもいいのか?
「あの話はまだ護衛にも、話しておられないということだ」
「フランじい」
「なんだ?」
「フランじいも、ちょっとはかんがえてんだな」
「ワッハッハッハ! ベルは私を何だと思ってるんだ!?」
「えらいひとがいると、ヘタレになる」
「へ、ヘタレとか言うでない!」
今は例のお茶会があるから、王妃の目を盗んで出て来られたのか?
しかもあんな王妃の陰謀とも言えるようなことを、護衛にも知らせていないなんて。そんなの俺なら我慢できないぞ。
俺ならあのお城で、大人しくじっと我慢なんてできない。ウズウズしちゃうし、一日でもお嬢の顔が見られないなんて耐えられない。
「ベル、それはお前だけやな」
「ちょう?」
「そうやな。まさか王子がそんなわけないやん」
そりゃそうだ。魔道バイクから降りてきた王子の護衛が、フラン爺に挨拶をしてきた。
この護衛を王子はどれだけ信用しているのかだ。それとも、巻き込みたくないから話してないのか? それはまだ分からない。
「私は殿下の専属護衛の任を仰せつかりました、ティム・シュバルツと申します。今後は殿下とご一緒しますので、よろしくお願いいたします!」
そう言って、頭を下げた。裏表の無さそうな、朗らかで明るい人だ。明るいオレンジ色の髪を短くしていて、イエローグリーン色の瞳をしているから風属性魔法の使い手かな?
「シュバルツ家ということは、代々騎士団におられる侯爵家か?」
「はい! 私は三男です。兄たちも騎士団におります!」
貴族は、余程のことがない限り長男が家督を継ぐ。次男は大抵領地経営を手伝うか、小さな領地を貰って代りに治めたりだ。
王都に邸を構えている貴族は、大抵領地経営もしながら他に職を持っている。
だから長男か次男のどちらかが、領地で実務をしていることが多い。彼の家もそうなのだろう。
三男からは、身の振り方を考えないと、爵位もないしただの平民になってしまう。食い扶持を自分で考えておかないと、ずっと家の世話になるわけにはいかない。
跡継ぎのいない貴族家に養子に入るか、仕事を見つけないといけない。ぐうたらしていると、あっさりと貴族籍から抜かれてしまう。
この護衛の場合は家系が武官家系なのだろう。なら騎士団は就職先の有力候補になるわけだ。
そのティムと自己紹介した護衛が、ブレイズ様と楽しそうに話している王子を見てしみじみと言った。
「この数カ月、あのような笑顔をされることはありませんでした。ですので今日はホッとしました」
「そうか、それに気付いていたのだな」
「もちろんです! どうか、殿下共々よろしくお願いいたします!」
「もちろんだ! 時々来ると良いぞ!」
「はい! ありがとうございますッ!」
うん、気持ちの良い護衛さんだな。
「えっちょ、ティムしゃん」
「はい! ティムです!」
「おれは、ベル。よろちくな」
「アハハハ! 可愛いなぁ! 小さな執事くんですね! なんだか弟の幼い頃を思い出します」
「おとうといるの?」
「私は、男ばかりの五人兄弟の真ん中です」
「おー」
それはご両親は大変だったろうな。男ばっか五人って、どんだけ食うんだろう。子供の頃は煩いだろうな~。
「確かご兄弟は皆騎士団だったか?」
「はい、父が騎士団の副総長をしておりますので」
副総長とは、騎士団を取りまとめる立場の人だ。
この国に騎士団は第1から第4まである。王子の護衛をしているのは第1騎士団だ。主に王族の護衛をする。
第2が城内でも王族の生活圏の警備、第3が王城全体の警備。だが有事の際はもちろん臨機応変に国を守る。
そして高位貴族にしか知られていないのが、第4騎士団。
カラスと呼ばれる王族の影はここに所属している。表に出ないし公にもされていないから、高位貴族の一部にしか知られていない。
王と王妃、側妃の身辺警護をするのは近衛兵だ。騎士団とは違って、制服が白でちょっと派手。
常に王の側に付いているから、公の場に出ることもある。それで騎士団とは違って、見た目も重視しているらしい。
騎士団の制服は第1から第3までデザインとメインカラーは同じでアクセントカラーが違う。第4騎士団の制服は公にはなっていない。噂では、カラスと呼ばれるだけあって真っ黒だとか。
他には王都のパトロールや、日常の警備をする衛兵もいるが騎士団と違うのは平民でも衛兵になれることだ。
騎士団は入団試験も難しく、ある程度の文武両道が求められる。
騎士団に入団するためのアカデミーがあって、皆そこを卒業している貴族子息ばかりだ。
そして騎士団は入団時に王に忠誠を誓うが、衛兵は職業的な兵になる。
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