64ー時々おいで
「あ、ぎるどにとうろくちゅればいいんら」
「それでも、作れる者は少ないだろうね」
なんだ、残念だな。一気に便利になるのに。使用人さんたちは超便利になるぞ。
「ワシは好きなもんを作っているだけだ」
「親方、どこか目立つところにホルハティ家の紋章を入れておく方がいいよ」
「殿下、そこまでですか?」
「万が一を考えてね。盗まれたりしないようにさ。紋章も消せないように、魔力で彫る方がいい」
「なるほど、そうだな」
欲がないね。俺ならがっぽり儲けたいとか思ってしまうぞ。
作れないならプレミアがついたりしてな。いや、それこそ争奪戦になってしまうか。どっちにしろ、秘密らしい。
戻ってきたブレイズ様が王子に、こうして乗るのですよと教えている。
颯爽と走り出した王子は、意外にも最初から結構スピードを出している。
おいおい、大丈夫か? 加減しなきゃ駄目だぞ。もしかしてアクセルをベタ踏みしてないか?
「ブレイズちゃま、あぶねー」
「大丈夫だ。殿下はああ見えて身体能力が高いから」
ほう、なら見ていよう。ふふふ、遠目でも楽しそうな顔をしているのが分かる。ノリノリじゃん。
王子って、身体を動かすのが好きなんじゃないか? ストレスが溜まってるのだろうなぁ。まだ子供なのに。
あれ? 魔石で動くのに身体能力って関係あるのか? そんなことを思いながら見ていた。
すると一人の騎士が、表から慌てて走ってきた。血相を変えて追いかけている。
「殿下! 何をなさっているのですかッ! 危険ですーッ!」
なんだなんだ? どうした? いつからいたんだ?
「あれは殿下の護衛だ」
「ほう」
さすが王子殿下だね、護衛なんて付いているんだ。
「待機していたのだろう。殿下が見慣れない物に乗っているから、慌てているんだな!」
そう言いながら、ワッハッハッハ! と、フラン爺は笑った。
綺麗な騎士服に身を包み腰に帯剣した大の大人が、ブッブーと魔道バイク(?)に乗って走っている王子を追いかけている。
しかも王子は超笑顔だ。アハハハ! と声を上げて笑っている。
「殿下ぁーッ!」
「アハハハ! 平気だよ!」
「いや、殿下! 早いですってッ! アハハハ!」
追いかけている護衛まで笑っている。王子のあんな笑顔って、もしかして珍しかったりして? ヒョイとフラン爺の顔を見上げる。
「ん? ベル、どうした?」
「でんか、わらってる」
「おう、そうだな」
「もちかちて、めじゅらちい?」
「ああ……最近は見たことがなかったな」
少し寂しそうな顔をしているフラン爺。あれか? 王妃からの愛情を諦めたからとか? 王妃が黒幕かも知れないから? どっちもキツイぞ。
「あんな子供らしいお顔を、忘れてしまわれたのかと思っていた」
「なんらちょれ? こどもなのに」
「そうだろう? だから、あの笑顔を見て安心したぞ」
フラン爺みたいに、心配してる大人がいれば大丈夫だろう?
それにほら、あの護衛だって嬉しそうだ。きっと護衛も、心配していたんだ。王子の周りには、気に掛けてくれる大人がいる。
「殿下! 何周してるんですか!」
ほら、ブレイズ様もいるしな。うるさいけど。
「だいじょぶら」
「おう、そうだな!」
こうしてみんな笑顔でいられるのって良いことだぞ。その中でも花が咲いたような、お嬢のあの笑顔だよ。
今度こそ、うひょ~ッ! て飛んでもいいかなぁ? チビドラゴンになっちゃうぞ。
「ベル、しつこいで」
「ガンちゃん、やめらんねー」
「ほな、しゃーないな」
仕方ないとか言いつつ、またきっとツッコんでくるんだ。ガンちゃんってそういう奴だ。
「そら、わいはベルの使い魔やからな!」
意味が分からないぞ。使い魔って関係ないし。ブレイズ様だって、いちいちツッコんでくるし。
見ていると、今度は王子の護衛が乗ってみるらしい。真剣な顔をして王子に教わっている。
そんな大きな身体で、あの小さいのに乗るのか? なかなかチャレンジャーだな。
ぶおーッと、いきなりアクセルを踏んだらしくて急発進した。
「おぅわわッ!」
「アハハハ! 徐々に踏まなきゃ駄目だよ」
それでも乗ってるぞ。おいおい、長い足が邪魔そうだな!
あれって重量は大丈夫なのか? 動いてるからいいのか? それにしても、やっぱあれが欲しい。
「おやかた、ぷっぷーって」
「アハハハ! また言ってんのか!?」
「らって、ほちい」
だって乗りながら、ぷっぷー! て鳴らしたい。俺のあのおもちゃのラッパを付けて欲しいぞ。
「おう。今度付けてやるよ!」
「ベル、乗りながらラッパなんかどうやって吹くねん?」
「ちょれは、おやかたにまかちぇる」
「おう、任せとけ!」
ほらな、親方に任せておけば大丈夫だって。楽しみだな。お嬢を後ろに乗せて、ぷっぷーって鳴らすんだ。
「あれはベルのお気に入りやもんな」
「ちょうちょう」
だって今回、起きてすぐにあのラッパを吹いて走っていたし。
目の前では戻ってきた護衛の兄ちゃんが、片足を付いてギュインと車体を回しながら止まった。なかなか乗りこなしている。
俺はまだちびっ子だから、あんなことはできない。あれは足が長いからできるんだ。かっちょいいな、真似したい。
「かっけーな!」
「ワッハッハッハ! 大人でも乗れるのだな!」
王子も護衛もブレイズ様も、そしてお嬢もみんな笑っている。子供らしい笑顔だ。




