63ー魔道バイク
三輪車の時とは全然違う。しかも漕がなくていいんだ。フワーッと風で髪が靡く。広い裏庭を一周だ。
これってエコだよな。だって魔石で動いているから、公害もなにも関係ないし。しかも音も静かだ。
ブレーキを少し握ってみると、ちゃんと思ったとおりに減速してくれる。
これはいいぞ。これの大きいのを作ったら、大人も乗れるじゃん。小さくても良ければ、これでも十分に乗れそうだ。
裏庭を軽く一周して、戻ってきた。お嬢の横に、キュッとかっちょよく止まった。ちょっとお顔もキリリと格好つけて。ふふふん、俺に惚れてもいいんだぜ。
「ちゅごいわ! ベル、はやいのよ!」
「めっちゃいいよな!」
「ベル! 次は僕だ!」
「だめ、ちゅぎはおじょうをのちぇる!」
「おにいちゃま、ちゅぎは、あたちでちゅ!」
「ネネは僕が乗せるって!」
はいはい、もうお嬢は乗る気で後ろに回ってるし。三輪車の時に乗ってるから、慣れたもんだ。
だけど、三輪車よりスピードが出るから気を付けないと。お嬢に怪我なんてさせられない。
「おじょう、ちっかりおれにちゅかまって!」
「ベル! いいわよ!」
「よち! ちゅっぱ~ちゅ!」
「ちゅっぱ~ちゅ!」
ゆっくりとアクセルペダルを踏んで、徐々にスピードを出していく。お嬢は怖がってないか?
「ベル! もっとはやく!」
「おー!」
全然大丈夫そうだな。これって二人乗りになっちゃうから、本当は危ないのだけど。お嬢も安全に、一緒に乗れるように何か考えないとな。
少しずつアクセルを踏んでいく。お嬢はなかなかのお転婆さんだ。怖がる素振りもなく、俺の肩を持ってバランスよく乗っている。
「きもちいいのよ~!」
「おじょう、ちゃんともってないと、あぶないじょ!」
「へいきよ!」
お嬢の手が俺の肩を持っている。その感触でドキドキしてソワソワして落ち着かない。
まるで肩に心臓があるみたいにドクドクして、そこに意識が集中する。ああ、こんな幸せなことがあるのだろうか!
「ベル、お前はほんまに、一途なんやな!」
「あたりまえ」
「今度こそ、頑張らんとな!」
「おー!」
ガンちゃんったら、風は大丈夫か? 尻尾が風に靡いてるぞ。被膜がパタパタしないか?
「何言うてるねん! こんなスピードなんて、どうってことないっちゅうねん」
ガンちゃんが被膜を使って飛ぶ時は、もっと早いもんな。
裏庭を一周してブレイズ様の待つ場所へ戻る。今度は待ってくれないらしい。
「ベル! 交代だ!」
「ええー」
「ふふふ、おにいちゃま、とってもきもちいいわよ!」
「そうか! ネネはまた後で一緒に乗ろうな!」
「ええ!」
「アハハハ! ブレイズの印象が変わっちゃったよ!」
王子もそんな俺たちを見て、良い笑顔で笑っている。
「次は殿下ですよ!」
「ええ? 僕も乗るの!?」
「当たり前ですよ!」
そう言ってブレイズ様は走って行った。最初にアクセルペダルを踏みすぎて、ちょっとびっくりしている。
加減が分からないんだな。だってこの世界にはこんな乗り物なんてないから。まだ三輪車に乗ったことがあるから、少しはマシだけど。
「ネーネルヴァ嬢は怖くないの?」
「じぇんじぇんこわくないでちゅよ! たのちいでちゅ!」
「アハハハ、そうなんだ」
俺は親方に、ちょっと話を聞こうかな。
「おやかた、まえにいってたのは?」
「あん? なんだっけか、カートだったか?」
「ちょうちょう」
「あれはな、ちょっと待て。難しいんだ」
「ちょう?」
「ああ。今ブレイズ様が乗ってるのは、ここにあったのを手本にしたからすぐだったけどな」
「あー、ちゃんりんちゃ」
「あんだって?」
「ちゃんりんちゃ」
「えっと、三輪車か?」
「ちょうちょう」
なるほどね、あの三輪車を手本に作ったってことか。それでも魔石で自動にするアイデアは超いいぞ。しかもカッコよくなってるし、親方は天才か!?
「おやかた、あれのおっきいのをちゅくったら、おとなものれる」
「大人もか、そうだなぁ」
あれれ? 親方の反応が微妙になっちゃった。どうして? と思っていたら、フラン爺が待ったをかけた。
「ベル、あれはここでは邸の外で乗っては駄目だ」
「フランじい、どうちて?」
「量産できないだろう? あんなもん、親方にしか作れないだろう。なら、争いの元になる」
ええー、勿体ないなぁ。絶対に便利だぞ。前とか後ろに荷物を載せられるような籠を着けたら、お買い物に超便利じゃん。
重くてもへっちゃらだし、馬車みたいに場所を取らないし。
「お前が思うことは分かるが、駄目だ。だが、領地ではかまわんぞ!」
「ええー、じゅりー」
「ワッハッハッハ!」
フラン爺ってそういうとこ適当だよな。なんで領地ならいいんだよ。領地だって王都だって一緒じゃん。
「ベル、ちゃんと理由があるんだよ」
話を聞いていた王子が教えてくれた。
「どうちて?」
「王都は人も多いし、貴族も多い。新しい便利な物には飛びつくだろう。でも作り方が分からないとなると、今度は親方を手に入れようとする者も出てくるだろう。そうなったら危険だ。だけどホルハティ家の領地なら別だ。フラン爺が長だからね」
「ちょんなもんか?」
「そうだよ。だからあれは秘密だ。話せる魔道具も秘密だよ」
「へえ~」
なんだ、せっかくの親方の発明なのにね。
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ご存じの方もおられるかと思いますが、カクヨム様で先行投稿しているものです。
こちらに投稿する前に読み返して、小さな修正を入れてます。
あちらでは、117話まで投稿してますので先が気になる方は是非(^◇^;)
ですので、微妙な表現が変わっている場合があります。
ご了承くださいませ(*ᴗ͈ˬᴗ͈)ꕤ*.゜




