59ー良い機会だと
そうだった、ブレイズ様と第1王子って仲が良かったんだ。歳は5歳違うけど、何故か第1王子に気に入られている。
前の時は、側近にならないかと声を掛けてもらっていた。ブレイズ様はその時もう魔術師団に入るって決めていたのだけど。
「奴隷だって!? それは本当なのか?」
「先日、当家の執事が助け出してきたところです」
「ああ、だからそんなに痩せているのか。それは可哀そうなことをした」
え? なんで申し訳なさそうな顔をしているんだ? 王子がそんな顔をする必要はないぞ。
「ベルはもっと勉強をしないといけないな! 僕が教えてあげようか?」
「うじぇー」
「こら、ベル」
おっと、つい言っちゃった。だって、ブレイズ様ったらウザイんだもん。
ブレイズ様がニマニマして俺を見ている。なんだよ、その言ってやったぞって顔は。
意味の分かっていない俺に、親父が教えてくれた。
「ベル、この国では奴隷取引は禁止されているんだ」
「え? けろ、どうどうとみちぇをだちてた」
「あの奴隷商人は、あれから捕まっているぞ」
「おやじ、ちょうなの?」
「ああ、私が報告しておいた」
おう、そうなのか。俺を買った後で親父は衛兵に、あそこに奴隷商人が店を出してるぞと報告したらしい。
「まだそんなことが、まかり通っているなんて」
王子がとっても辛そうな顔をしていた。王子の所為じゃないのに。
「ベル、この国の上に立つ者がしっかり摘発していたら、そんな思いはしなくて良かったのに」
「きにちゅんな」
「ベル、言葉使いに気を付けなさい」
「あい、ちゅみまちぇん」
旦那様に怒られちゃったよ、もう黙っていよう。そうして俺はスンと無表情を作った。
「アハハハ、楽しい子だね」
俺のことはいいから、話の続きを頼むぜ。
その後の、第1王子の話を聞いて俺は驚いた。
「彼女のお茶に毒が盛られたんだ。母上が裏にいると僕は考えている」
もうその一言で驚く。まさか、そこまでするのか?
「そのこともあって、私は城では気が抜けないんだ。母上が何をするか分かったものじゃないからね。だからここで飲むお茶は、とてもホッとする」
ああ、だから最初に口を付けた時に、そう言っていたのか。まさか自分の子供にまで、そんなことはしないだろうけど。
それにしても、毒ってどうなんだ? 相手は子供だぞ。
しかも王城の中で毒が使われたなんて、警備体制は一体どうなっているんだ? その王家のカラスは見てないのか?
「殿下、それはカラスがそう言っていたのですか?」
「いや、母上は動いてない。だが、カラスが付いてないメイドを動かしたとも考えられる。僕はそう思っている」
「しかし確たる証拠もないのに王妃殿下を疑うなど、口に出されてはなりません」
「公爵、父上にはもうそう話してある」
「なんと……」
王子がそう思うだけの理由がある。お相手が侯爵家の令嬢だということと、側妃の実家と仲がいいということだ。何しろ王妃は大反対していたのだから。
だけど、それだけでそんなことをするのか?
「毒といっても数日寝込むだけのものらしい。殺傷能力はないと分かっている。だけど、そんなことは関係ないんだ」
だって毒だものな。それがもし、体内に蓄積するものだったりしたらどうするんだ?
まだ子供じゃないか。その子供を害するなんて、いくら望んでいない婚約だとしてもやって良いことではない。
「母上は僕の婚約者には公爵家の令嬢をと、強く望んでいる。それに僕が母上に相談しなかったのも、気に障ったのだろう」
だけど今更そんなことをしてどうするんだ? 俺はその必要性が全然分からないぞ。
「だからベル、もっと勉強しろと言っているんだ」
あ、またブレイズ様が突っかかってきた。
「ブレイズちゃまは、わかってるのか?」
「当然だ。そうして健康に不安があるのに王子妃として務まるのかと、婚約者の変更を進言するおつもりなのだろう」
なるほどね。時々ブレイズ様は賢いな。
「ベル、なんだその顔は?」
「なんれもねー」
「アハハハ、本当に仲がいいんだ。ブレイズのそんな顔を見たのは初めてだよ」
ブレイズ様は俺に対してはいつもこうだぞ。本当、時々めっちゃウザイ。
「うじぇー」
「こら、ベル。またそんなことを言う」
おっと、だってついさ。それよりも話を戻してくれ。話が逸れると余計に俺は理解できなくなる。
王子がそのことを王に相談した時に、王は眉間に皺を寄せて困惑しながらも否定しなかったらしい。
その後、カラスから王妃の素行を聞き出し本格的に調査を始めた。そして、昨日の話になる。
「だから良い機会だと思ったんだ」
ん? 話が飛んでないか? 何が良い機会なんだ? 俺には分からないぞ。
「次のお茶会で、母がしようとしていたことを阻止できる。ネーネルヴァ嬢に関係することだ。第2王子シリスの婚約者にと言い出すつもりだろう」
「それは私どもも、阻止しようと考えておりました」
「公爵がそう考えていると分かって、私は安心したんだ」
そして王子がはっきりと言った。
「あの弟に、ネーネルヴァ嬢は勿体ない」
おっと、やっぱ俺の出番だよな。な、親父。そう思ってまた親父を見ると、目を伏せて首を横に振られた。
なんだよ、まだ違うのか。俺はいつでも言うぞ。いつでもGOを出してくれ!
親父がなんだか呆れた表情をした。あれれ? どうしてだよ、だってアピらないとって言ってたじゃん。
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