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溺愛は最上級爆裂魔法のあとで〜ちびっ子従者は運命を巻き戻す〜  作者: 撫羽


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58/100

58ー疑っている

 水属性の回復魔法はそこまでじゃない。

 剣で軽く斬られた傷なら治せるけど、剣でグサッと刺されてしまうと一命は取り留めるけど完全には治せない。そんな差があるらしい。

 第1王子も回復魔法が使えるから、そんなところでも話が合ったのだろう。

 何より王妃が一番嫌っているのは、側妃の実家と家同士仲がいい。それは王妃にとって、敵が増えるとでも思ったのだろうね。

 その令嬢と婚約が決まったと、王妃が知った時に荒れたんだ。大騒ぎして王と王子、そして側妃に食って掛かったらしい。

 それが王城では噂になっていた。

 なんでも側妃にカップを投げつけたとか、王子はぶっ飛ばされたとも噂されている。

 それは大袈裟なのだろうけど、私は聞いてない、私は許してないって大騒ぎをしたことに変わりはない。


「私は王太子になるべく、母に厳しく育てられた。厳しいという言葉では表せないくらいにだ」

「はい、存じております」

「幼かった私は愛情に飢えていたのだろう。それを何度も母に訴えたのだけど、その度に体罰を受けた」


 そんなになのか? そこまでは旦那様も知らなかったらしくて、場の空気が冷たいものに変わってしまった。


「ああ、申し訳ない。それを今更どうこう言うつもりではないんだ。ただ、そんな経緯もあって、幼い頃から私の支えになってくれていたのが彼女なんだ」


 第1王子の婚約者、ブリジット・クァンイン。侯爵家のご令嬢だ。

 第1王子の婚約者で侯爵家出身というのは、しばらくぶりらしい。

 前例がなかったわけではないし、必ず公爵家から選ぶと決まっているわけでもない。そして家柄も申し分ない。だから王も賛成したのだ。


「それが母上は、まだ納得できないらしい」


 ほうほう、でももう公に婚約を発表しちゃったし。今更反対したってどうしようもないんじゃないのか?


「彼女は今王子妃教育で登城する機会が多いのだが、その度に僕は心配なんだ」

「殿下、何をそんなに心配しておられるのでしょうか?」


 話が見えなくて、旦那様がそう聞いた。

 案の定、フラン爺は借りてきた猫状態だ。どこを見ているのか、目線まで定まらない。

 ちゃんと話を聞いているか? 緊張しているのか?


「ベル、大丈夫だ」


 親父が俺に小さな声でそう言った。だってあまりにも普段のフラン爺と違うからさ。その親父の声を聞いて王子が俺を見た。


「ああ、君がベルか?」


 え、突然俺か? 俺なのか? 俺は何もしてないぞ?


「ベル、ご挨拶しなさい」


 旦那様に言われちゃったよ。仕方ないな。ピョンと椅子から降りて、俺はペコリと頭を下げた。


「おはちゅ()にお()にかかりまちゅ、ベルでちゅ」

「アハハハ、本当にお利口だ。父上がおっしゃっていた通りだ」


 え? 何を言っていたんだ? 俺は昨日は大人しくしていたつもりなんだけど。お嬢を嫁にするとも言えなかったし。

 もしかして、ここなのか? 今がチャンスなのか!? 今言うべきか!?

 そう思って、グリンと首を動かして親父を見る。なんなら椅子の上に立っちゃうけど。


「違うぞ。大人しくしてなさい」

「あい」


 なんだ、違うのか。俺はいつでも言うぞ。キューを出してくれると助かる。


「父上が褒めておられたよ。また遊びにくるといい」

「あい、ありがとごじゃまちゅ」


 そう言った王子の目が、俺の肩の付近で止まり目を見開いた。ああ、これってあれだ。やっぱ目につくよな。


「なんやねん、わい、めっちゃ見られてるやん」

「ガンちゃん、ちょっとだまっていよう」

「なんでやねん、わいは自由やっちゅうねん」


 ほら、王子がガン見しながら固まっているだろう? だから、目立たないようにさ。

 もう今更、俺の亜空間に入ったりすると余計に目立つから仕方ないんだけど。


「ア、アハハハ! 僕は陛下から聞いた時に信じられなかったんだ。本当にいるのだな。普通に喋っているじゃないか。アハハハ」


 えっと、めっちゃ笑われてるんだけど。どうする? ガンちゃん。


「わいに聞いても知らんっちゅうねん。使い魔くらい、どこにでもおるやろ」

「ガンちゃん、少なくともこの国にはいないと思うぞ」

「え? 親父、そうなん? なんや、わいってアイドルやん!」


 だから、どこをどう考えたらアイドルなんだよ。意味が分からない。こんな自由なところがガンちゃんだ。


「殿下、陛下がおっしゃっておられたように、ベルの使い魔のガンちゃんです」

「そのネーミングも楽しいね」


 いや、ガンちゃんはまだマシな方だぞ。ガンちゃん一族のネーミングは笑えるから。言わないけど。


「使い魔を持っているということは、ベルは人じゃないんだね?」


 おう、よくそこに気付いたぜ。城に行った時は、王も公爵もそこを突いてこなかったからな。だから敢えて俺も触れなかった。


「ベルは竜族です」

「なんだって!? あの最強種の竜族なのか!?」

「はい。まだチビドラゴンですが」

「チ、チビなのか? 皆は見たことがあるのか?」

「ええ、もちろんです」

「それは凄い」

「凄くないですよ、だってチビです。人攫いに攫われて奴隷になっていたくらいですから」


 なんてツッコミを入れたのは、それまで大人しくしていたブレイズ様だ。


お読みいただき有難うございます!

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