55ーもう遅い
「ベルなら何か聞き出してくるかと、思っていたんだが」
「ええー。おれはまだちびっこら」
「何言ってる、竜族なのだから見た目より年上だろうが」
「ええ!? そうなんですか!?」
あれれ? 料理長は知らなかったか? そうか、料理長は前の記憶がないから。それを忘れてた。
「ベル、お嬢の婚約を回避したいのだろう?」
何を当たり前のことを聞いてるんだ。当然じゃないか。今回は俺が嫁にするんだ。思わず俺は拳を握りしめる。
「あたりまえら! おれがヨメにちゅる!」
「なら、もっと真剣にやれ」
「なんらよ、おやじ。おれはちんけんら」
「小さなことの積み重ねが大事なんだぞ」
「ええー」
まあ、いいじゃん。旦那様とフラン爺が帰ってきたら分かるじゃん。
「お前が何かできたかも知れないだろう? お嬢様を自分の嫁にするんだと、公言しておけば良かったかも知れんぞ」
どっしぇーッ!? マ、マジかぁッ!? それを先に言ってくれよ!
それなら何度でも言ってやるのに! そんなの考えもしなかった!
「おじょうはヨメにちゅる!」
「アハハハ! ここでいくら言ってもな、ベル」
「だから馬鹿息子なんだ。公爵様方が揃っておられて、しかも陛下までおられるんだ。そんな好機は滅多にないぞ」
「アハハハ! それは言えないでしょう!」
そう言われてみれば、そうか。俺としたことが。ちょっと項垂れちゃうぞ。
料理長ったら笑ってる場合じゃない。これはミスった。
親父が言うように、滅多にない場なのだから言ってしまえば良かった。
「いまから、もいっかいいってくる!?」
「もう遅いわ!」
ええー! 勿体ないことをした! よし、次は頑張るぞ。
その日、旦那様とフラン爺は一緒に帰ってきた。二人とも疲れた顔をしていたけど、夕食前には帰ってきていた。
すぐに呼ばれるかな? て思っていたのだけど、その日は呼ばれなかった。いや、違うな。
俺は夕食後を食べたらすぐに寝てしまうから、夜に大人たちは何か話していたのだろう。
翌日、朝食後に旦那様の執務室に呼ばれた。もちろん、全員揃っている。
「ベル、ちゃんと食べたか?」
「おー、おなかいっぱい」
ブレイズ様が心配してくれる。な、本当は優しいんだ。そう思ってちょっとニヤつく。
「べ、別に心配しているわけじゃないんだぞ!」
また意味の分からないツンデレを発動している。それって照れ隠しだよな? 何を照れることがあるんだ? 何もないだろうに。
「ふふふ、おにいちゃまったら。ほんとうは、ベルのことがちんぱいなのよ」
「ネネ、何を言う!? 僕はベルのことなんて、心配してないって言っただろう!?」
お顔が赤くなってるぞ。俺もブレイズ様に心配されるより、お嬢に心配される方が嬉しい。
「まあ、ベル。座りなさい」
「あい」
旦那様に言われて、俺は親父が立っている側に座る。所謂一番下座の席だ。
だって俺は家族じゃない。本当はお嬢の隣がいいのだけど、そこはブレイズ様が陣取っているから我慢だ。
それから旦那様とフラン爺の報告を聞いた。
「お前たちにも、ちゃんと話しておこうと思ってな」
昨夜のうちに、大人には話したらしい。ブレイズ様やお嬢、それに俺は早くに寝てしまうから、今日改めて報告の場を設けてくれた。
昨日どうしてみんな集まっていたのかというと、公爵家の当主に話すために行ったフラン爺も旦那様が拝謁する場に呼ばれたそうだ。
しかも公爵家の当主全員もだ。そこに俺が弁当を持って転移したわけだ。
まず旦那様は昨日皆が集まっている場に、俺が旦那様の弁当を持って転移してきたのだと説明した。
「そうか、ガンちゃんは転移できるのだった」
そうなのだよ、ブレイズ様。いつもふざけているだけじゃないのだよ。俺の使い魔だからね。
「ベル、わいはふざけてへんっちゅうねん」
いや、その喋り方だよ。そのノリもな。
「そうか? 普通やろ?」
「ちょっと、ちがう」
まあ、それはいい。
「ベル、陛下がまた遊びに来ると良いと、おっしゃっていた」
俺は別に王に用事はない。
「ベル、何がどう繋がるか分からないぞ」
「おやじ、ちょうかな?」
「ああ、そうだ」
なら今度こそ、王の前でしっかりアピるとしよう。お嬢は俺が嫁にするってさ。
「公爵たちもベルを何故か気に入っていた」
何故かってどういうことだよ。やっぱ俺って性格が良いのが滲み出るんだ。ブレイズ様と違ってさ。
「ベル、どうして僕を見るんだ?」
「なんれもねー」
それよりも、昨日旦那様たちはどんな話になったのかだ。
「私がどう話を切り出そうかと思っていたら、陛下の方から王妃殿下のことを聞かれたよ」
ん? 王妃のことを? 昨日はお嬢が婚約者にはなりませんって、話しに行ったのだよな?
「おやじ、わかんねー」
「何がだ?」
側に控えて立っている親父に、小さな声で聞いてみた。
「おじょうの、こんやくはだめっていいにいったんだよな?」
「そうだが、そうハッキリは言えないだろう?」
「ちょう?」
「ああ、そういうもんだ」
ハッキリと、第2王子との婚約は願い下げだぁ! て、言ってやればすっきりするのにな。
だって前の時のことを覚えているから、第2王子には虫唾が走る。
俺の大事なお嬢を、あんな奴と婚約させてなるものかと思ってる。
なんか仕返ししたいよな~なんて俺は思う。
「がちゅんといってやりてー」
「ベル、ちょれはあたちがいうわ」
お嬢ったら、またそんなことを言う。駄目だぞ、お嬢に何かあったらどうするんだ。ガツンと言ってやりたい気持ちも分かるけど。
お読みいただき有難うございます!
応援して下さる方、続けて読んで下さる方は是非とも下部↓の☆マークで評価をして頂けると嬉しいです!
宜しくお願いします。
めっちゃ遅くなってしまいましたー!
申し訳ありません(*>ㅅ<)՞՞




