54ーみんないた
「くるまえに、クロックムッシュたべたとこ」
「なんだって?」
「陛下、クロックムッシュです」
「それを私は知らないぞ」
他の公爵も知らないと首を振っている。あれれ? そうなの? 料理長は普通に作っているぞ。
「うちの料理長は一時期、王都の店で修行をしていた所為でしょう」
「ほう、そうなのか?」
「はい、王都民が食べるような物も作りますから」
「それは珍しいな」
「けろ、ちょーうめー」
「本当に美味い。この肉は最高だ」
さっきから、ゲブソル・ティエーラは肉しか褒めていない。
「このプリンもそうなのか? 王都ではこのようなものが食べられているのか?」
「ああ、それはこのベルの考案だ」
「なんだとッ!?」
えっと、急に皆で俺をガン見するのは止めてほしい。
いくら気さくに話してくれるといっても公爵だ。眼力があるってもんじゃない。
「えっちょ、プリンはあま~くて、おいちい」
「おう、確かに甘くて美味い。ベルは料理ができるのか?」
「できねー」
だってまだちびっ子だし、この小さな手では作れない。ほら、と手を開いて見せる。
「アハハハ! そうだな、まだちびっ子だから無理だな」
さて、用事は終わったしガンちゃん帰ろう。と俺は立つ。
「ベル、もう帰るのか?」
「うん、おじょうとあちょんでたから」
「そうか、届けてくれてありがとう」
おう、いいぜ。これくらいお安い御用だ。
一応、公爵たちと王様にペコリと頭を下げる。
「アハハハ! お利口じゃないか」
王がそう言ってるけど、笑っているからあんまり褒めているように思えない。
「ガンちゃん、かえろ」
「おー、ほな行くでー!」
じゃーなー! と、ガンちゃんを頭に乗せて、俺は手を振りながらペカーッと光って消えた。
その後、マジで消えたぞ。なんて言われていたことは、俺は知らない。
シュンッと転移して調理場に戻ると、料理長が待っていた。
「ベル、お渡ししてくれたか?」
「おー、みんなうまいってたべてた」
「んん? みんな?」
「みんなって、どなたがいたんだ?」
なんだ、親父も待っていたのか? そりゃ、悪かったね。ちょっとゆっくりしちゃったから、待たせちゃったかな?
「えっちょぉ、フランじいとこうしゃくとおう」
俺がそう言うと、親父がビックリ目になってしまっている。なんで? てか、みんなは昼飯食べたのか? お嬢は食べたのかな? 俺の分は?
「ベル、公爵と王と言ったか?」
「ちょうら」
俺もちょっと食べようかな? いや、クロックムッシュ食べたしな。
「ベル、わいは、なんか食べたいで」
「ちゃっきも、たべてたのに」
「あんなん、食べたうちに入れへんっちゅうねん」
よく食べるガンちゃんだ。食い意地が張っているとも言う。
「りょうりちょうのプリン、えっちょぉ、シュートスちゃまがおいちいって」
「おう、そうか!」
「ちょれから、にんじん」
「人参がどうした?」
「フォスヌンちゃまが、きれいって」
「ふふふ、そうだろう」
「ちょれから、ローストビーフがちょーうまいって、ゲブソルちゃまがいっぱいたべてた」
「ベル、他の公爵様方が揃っていらしたのか?」
「ちょうちょう、おうもたべてた」
またまた料理長と親父がビックリして固まっている。だから最初に王もいたって言ったじゃん。何を今更びっくりしてるんだ?
「ベル、陛下もお食べになっていたのか!?」
「うん。おいちいって、たべてた」
「そうか! アハハハ! そうかよ!」
料理長は喜んでいるけど、親父はちょっと微妙な表情をしていた。
「まさか……お話しされている最中だったのじゃないか?」
「ん~、ちょうかも。けろ……」
そう言えば、フラン爺は家にいる時より大人しかったような気がする。
「どうした?」
「フランじい、おとなちかった」
そう言うと、親父と料理長が顔を見合わせている。ふぅ~と親父が大きなため息をついた。
「大旦那様が大人しかったのか」
「ちょうおもった。いちゅもよりな」
「ゲイブさん、大旦那様のお話がうまくいってなかったのでしょうかね?」
「そうではないだろう」
親父が多分と言いながら話してくれた。
フラン爺は畏まった場が苦手だ。公爵家の現当主が全員集まっていて、しかも王が一緒だとは思いもしなかったのだろう。
フラン爺は、一人一人と話すつもりだったらしいから。
「それで緊張されたのだろうな」
「えー、フランじいが?」
「大旦那様は、そういう場が苦手だと言っただろう」
そりゃそうだけど、そんな畏まった感じじゃなかったぞ。とっても和やかな雰囲気だった。
俺が突然現れて、最初は驚いてたけどな。そうだ、騎士に斬りつけられそうになったっけ。
「大丈夫なんでしょうかね?」
「旦那様がご一緒なのだから、大丈夫だろう」
「大旦那様って肝心な時に、小心者になるんですね」
「ああ、どうしても苦手らしい」
よくそれで当主をしていたものだ。かなり無理をしていたな。普段はあんなに豪快なのに。
「けろ、ベーコンエッグサンドたべてた」
「アハハハ、そうか。あれは大旦那様がお好きだからな」
「帰ってこられるのを待つしかないな」
え? なんでそこで俺を見る? 俺になにか期待していたのか? 俺はただ弁当を持って行っただけだって。
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