51ーここはどこ?
「あー、大きくて持てないのか」
「ちょうちょう」
「じゃあ、首から下げるか?」
「ええー」
「それしかないだろう?」
「ちゃーねー」
お弁当の包みの上からもう一枚布で包んで、それを俺の首に掛けてもらって下から両手で支える。重いじゃん。どんだけ入ってるんだよ。
「おめーな」
「だから余分にある」
「ちょうらった」
じゃ、ひとっ飛び行ってくるか。城だよな。
「ガンちゃん、わかる?」
「おう、旦那様のとこに転移したらいいんやろ? 楽勝やん」
「旦那様に渡したら邪魔せず、すぐに帰ってくるんだぞ」
「おー」
「よっしゃ、行くでー!」
ガンちゃんが俺の頭の上に乗ってきて、一緒に転移だ。
じゃあ、ちょっと行ってくる~。と、手を振りながら俺とガンちゃんは転移した。
ペカーッと一瞬光ったら、もう俺たちの姿は消えている。
転移する寸前に、安心している料理長とは正反対の心配そうな顔をした親父が目に入った。
心配いらないって、お弁当を持って行くだけなのだから。
王城の中にいる旦那様のところにだ。まあ、旦那様がどこにいるのかまでは分からない。とにかく、旦那様の側に転移する。
だからまさか、あんなところに転移するなんて全く予測もできなかった。
シュン! と転移して、またペカーッと一瞬光って姿を現しポテンと落ちた。
あれ、これってテーブルの上じゃね?
「みんなのアイドル、ガンちゃんの登場やでー!」
なんだよ、それ!? ガンちゃん、変に張り切らなくていいから。そんなポーズをとらなくていいから!
ジャジャーンと効果音がつきそうな、ポーズをとっているガンちゃんは放っておこう。
目の前にはちゃんと旦那様がいる。お馬鹿なことを言っているけど、さすがガンちゃんだね。大成功だ。
「だんなちゃま! おべんとー!」
「持ってきたったでー」
元気に登場したのだけど、あれれ? えっとぉ……ここはどこ?
旦那様が頭を抱えているけど、フラン爺もいるぞ。それに他にも何人かいる。
おやおや〜? と部屋を見渡すと、びっくりしたお顔になっているとっても偉そうな人が一人、大きなデスクの前に座っていた。
どう見ても、この中で一番偉い人だと分かる。その人の後ろの側近らしき男性も、あんぐりとお口を開けて立っている。
その前にある応接セットのようなものに、旦那様やフラン爺、それに知らない人たちが座っていた。とっても深刻そうな雰囲気じゃないか。
入口のドアのところには、騎士が一人。何が起こったのか理解できないで、ただ立ったまま動けないでいる。
そりゃ、何もない空間からちびっ子が飛び出てきたら驚くか。
「あれれ?」
「ベル、ガンちゃん……」
「ワッハッハッハ!」
え? フラン爺ったら笑ってないで説明して。ここはどこ? あの人たちは誰?
なんならこのまま転移して帰ろうか? なんだか場違いなところに出てきたのは、とってもよく分かる。
しかもみんなの中心にあるテーブルの上に、足を投げ出して座っちゃってるし。
やっと騎士が動こうとした時だ。
「ああ、この子はうちの子だ。大丈夫だ」
そう旦那様が言うと、立ち位置に戻った。コエー! なに? 俺たちって不審者認定されちゃった? 剣に手を掛けてたのって、そういうこと!? 俺たち斬られちゃうところだったのか!?
「ひょぇー!」
「何言うてんねん! ベルの方が強いやろ!」
「え、ちょう?」
「そうやって! 騎士の一人や二人、魔法でチョチョイや!」
ああ、そうだった。俺ってもう魔法を使えるのだったね。忘れてたよ。
「ベル! ガンちゃんの転移か!?」
フラン爺が嬉しそうな顔をして、俺を抱き上げ自分の膝に座らせてくれた。ふぅ~、フラン爺の膝の上なら安全だろう。
「りょうりちょうが、だんなちゃまに、べんとう|わたせなかったからって」
「ああ、今日はいつもより早く出たからだ」
「ちょうちょう。ちょれで、りょうりちょうが、あわてちゃって」
「それは悪いことをしたな。持ってきてくれたのか」
「うん、これ、とって」
俺が首から掛けているのを取ってくれ。結構、重いんだって。
「ワッハッハッハ!」
なんだ? 突然一番偉そうな人が、大声で笑いだした。俺はちょっとびっくりして、そっちを見る。しっかりとフラン爺の腕を握りしめながら。
「ベル、陛下だ」
「えっちょぉ、へいか……おうちゃま?」
「そうだ」
え? 陛下? 王様? えっとぉ……俺どうしようっか? 一応挨拶しとくか?
「はじめまちて、ベルれちゅッ」
噛んじまった。まさかの王様だから。一応、ペコリとしておいた。
「ベル、何噛んでんねん。だっせー」
「うるちぇー」
「ワッハッハッハ! お利口じゃないか! フランヴァは、毎日弁当持参なのか?」
「は、失礼をいたしました」
旦那様が俺を紹介してくれた。俺は一応、畏まってるふりをしておこう。
「いや、それよりもベルとやら。どうやってここに来た?」
「えっちょぉ。、ガンちゃんのてんいで、ぺかーって」
「陛下、このベルの肩に乗っているのが、使い魔のガンちゃんといいます。魔モモンガで、私や父のように認識できる人のところに転移できます」
「なんとッ! それは凄いではないか!」
王様の目がキラキラ輝いたのと反対に、後ろに立っている人が項垂れている。
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