49ーツンデレか
さあ、動くよ。しっかり掴まってね。
「おじょう、うごくじょ」
「ええ、いいわよ」
「ベル、僕がネネを乗せる!」
あらまあ、煩いわよ。そんなのスルーしよう。
「ちゅっぱーちゅ!」
「キャハハハ!」
ブレイズ様の言葉をスルーして、俺は全力で足を動かした。だけど、やっぱそんなにスピードは出ない。
これって魔石を大きくしたら、もう少し速く走れるかな? 親方に要相談だ。
――キコキコ
「ベル、聞いているのか!?」
――キコキコキコキコ
「ベルー! もっとはやくー!」
「おー!」
「こら、ベル! ネネ!」
「キャハハハ! おにいちゃま! はちって!」
俺がお嬢を後ろに乗せて、必死でキコキコして走る隣を余裕の表情で走って付いてくるブレイズ様。どんな状況なんだよ。
俺はなんとかブレイズ様を引き離そうと、必死で足を動かすのだけど所詮三輪車だ。全くスピードが出ない。
やっぱあれだ、ゴーカートを作ってもらおう。足で漕ぐのじゃなくて、ペダルを踏んで魔力を流しスピードを調整して走るみたいな感じが良くないか?
「ベル、それって何なん?」
「のりものだ。これよりじゅっとはやい」
「おー、そらええやん」
「おやかたに、ちゅくってもらおー!」
「おー!」
「おやかたー!」
走りながら、親方を呼ぶ。作業場の前で手を振っている親方。めっちゃ笑顔じゃないか、どうした?
「ベル! また魔力を流してくれ!」
あー、そっちかぁ。俺もうそれ飽きちゃった。
「アハハハ! そんな問題とちゃうやろ!」
とっても常識的なガンちゃんだ。使い魔なのに。
「ベルの使い魔のイメージってどんなんやねん」
「いっちょに、いろいろちゅる」
「やってるやん!」
「まーなー」
親方はまた魔道具を作るらしい。俺の魔力が必要なのだろう。
「おやかた、またちゅくるのか?」
「おう、だってベルも欲しいって言ってただろう?」
「おやかた、ちょれもほちいけど。のるやちゅ、あたらちいのほちい」
「あん? なんだって?」
「アハハハ! わいが説明したるって」
ゴーカートを説明したんだ。こんな感じと地面に絵を描いてみる。
「なんだ、ここに座るのか?」
「ちょうちょう。で、あちでペダルをふんで、まりょくをながちてスピードをちょうせいちゅる」
「ほう、なるほどな」
それに忘れてはいけない物がある。これは是非とも搭載してほしい。
「おやかた、ぷぷーって」
「ガハハハ! 昨日言ってたラッパか?」
「ちょうちょう。ぷぷーって」
「よし、考えてみよう」
やったね、ゴーカートにお嬢を乗せて……乗せて? どこに? どこに乗せれば良いんだ?
「おやかた、おじょうをのちぇたい」
「ああん? じゃあ二人乗れるようにしとこうか?」
「おー!」
よしよし、良い感じだ。
「僕はネネを乗せるのは反対だぞ」
またまたお邪魔虫なブレイズ様だ。
「ブレイズちゃまにも、かちたげる」
「いらないッ!」
素直じゃないんだから。三輪車だって嬉しがって乗っていたのに。ゴーカートはもっと楽しいぞ。
「ぶぶーって、もっとはやい」
「速いのか?」
「ちょうちょう、まりょくでちょうせいちて、はちる」
「おお、それはいいな」
だろ? やっぱブレイズ様も男の子だから、そそられるよな。
「あたちも! あたちものりたいわ! おやかた、ちゅくって!」
「ガハハハ! お嬢もか!?」
ほら、お嬢ったらお転婆さんだ。手を上げながらその場でピョンピョン飛んでいる。その度にスカートがフワリと揺れて、髪も揺れる。
ああ、なんて可愛いんだ。何をしていても可愛い。
「ベル、見るんじゃない」
「ええー」
とっても無茶なことをいうブレイズ様だ。さて、俺はだね。
「こばらが、ちゅいた」
「アハハハ! ベル、またか?」
「だってガンちゃん、あんまりたべられないから」
「そうやな、ちょっとずつやもんな」
「ちょうちょう」
俺とガンちゃんのそんな会話を聞いていたお嬢が、心配そうに聞いてきた。
「ベル。まだからだがなおってないの?」
「ちょんなことねー」
「ずっと食べてへんかったから、いっぺんに食べられへんだけやで。お嬢は心配せんでええねんで」
「ガンちゃん、ちょうなの?」
そうなんだよ、眠っていた三日間は何も食べてなかったけど、その前も奴隷だったからな。まともに食べさせてもらえなかった。
だから胃が受付けないんだ。こればっかりは回復魔法では治せない。
「ベル……」
「おじょう、らいじょぶらって」
「ベル、調理場に行って何か食べてくるといい」
おや、ブレイズ様まで心配してくれるのか? 意外だ。
「何かあったら、ベルには飛んでもらわないといけないからな! だから心配なんかじゃないんだぞ」
おやおや、ここにもツンデレさんがいるぞ。まあ、親父のツンデレよりはまだ需要があるか?
「素直とちゃうねんな」
「な」
思わずガンちゃんと、つぶやく。
「さっさと行って食べてくるんだ!」
「はいはい。おじょうもいっちょにいく?」
「ネネは僕と一緒にいるんだ!」
「えー」
まあ、いっか。どうせお邪魔虫だし。料理長に何かもらってこようっと。
「ガンちゃん、いこう」
「おー」
フワフワ浮いていたガンちゃんが、俺の肩に乗ってきた。
ふぅ~、それにしても燃費が悪い。すぐに小腹が空いてしまう。一度にもっと食べられるようになったら違うのだろうけど。
そんなことを考えながら、トコトコとお邸に入って行った。
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