48ー告白もできねー
「おう、ベル! お前改良して欲しいって言ってただろう?」
おっと、お邪魔虫な親方だ。お嬢と二人っきりになれると思ったのに。
「ベル、なんか作って欲しいって思ってたやん」
「ガンちゃん、ちょうらけど」
今じゃなくてもいいんじゃね? と思うわけだ。お嬢と二人っきりになる方が大事だから。だからここはお嬢が優先だ。
「おじょう、おれがのせてあげる!」
「ええ? どうちゅるの?」
トコトコとお嬢の側に行って、こうだよって教える。三輪車の後ろのところにお嬢が立って、俺がキコキコ漕ぐからって。
「まあ! たのちちょうだわ!」
「だろう!?」
お嬢って見た目と違って体育会系だからな。別名、お転婆さんとも言う。絶対にのってくると思ったんだ。
「よち! おじょう、のって! おれに、ちっかりちゅかまって!」
「うん!」
お嬢が後ろに乗って、両手で俺の肩を持つ。うひょひょ! お嬢が俺の肩を持ってるぜ! くすぐってー。めっちゃ肩に意識が集中してしまうってもんだ。
「ベル、しょうもないこと言うてんと、お嬢に怪我させたらあかんで」
「ちょんなことちねー」
いいかな? 動くぞ!
「ちゅっぱーちゅ!」
お嬢を後ろに乗せて、キコキコキコキコ。ああ、なんて幸せなんだろう。お嬢の手の温もりを肩に感じて、俺は三輪車を漕ぐ。
「キャハハハ! ベル、もっとはやく!」
「おー!」
キコキコキコと足を早く動かす。これってやっぱ魔石が小さいからじゃないのか? いくら漕いでもスピードが出ないじゃないか。
それでも優しい風が頬を撫でていく。こうして平和でいられるように、俺はできる限りのことをしようと思う。もう二度と、後悔しないように。
「ベル! ありがと!」
「えー、おじょう。なんら?」
「ベルがいてくれて、こころぢゅよいわ!」
「ちょっか! おれはいちゅれも、おじょうのちょばにいるじょ!」
「ええ! ふふふ」
三輪車の後ろに乗って、俺の肩を持っていたお嬢が突然首に抱きついてきた。
え、なに? これって何かのご褒美なのか? それとも俺はこの天使と一緒に、天に昇っちゃうのか?
ドキドキなんてもんじゃない。身体全部が心臓になったみたいで、血液が流れているのさえ感じる気がする。
しかも頬を撫でていた風も周りの景色も止まって感じる。
「ベル! お前しっかりしろよ! こんなチャンスにヒヨってたらあかんで!」
三輪車のハンドルの真ん中にチョコンと立っていたガンちゃんが、サムズアップしながら俺に叫んだ。ウインクまでしてる。
ガンちゃんったら、とっても強気なのだから。俺はそんな余裕もないっての。
「ふふふ、ベルがきてくれて、ほんとうにうれちいの」
「おじょう……」
俺は三輪車を漕ぐ足を止める。
「おじょう、ごめんな。ちょばにいなくて」
「ちょんなことないわ。ベルがだきちめてくれた、うでのあたたかちゃを、おぼえているもの」
あの時だ。お嬢が爆裂魔法をぶっ放して、それを止めようと後ろから抱きしめた時だ。
あの時のお嬢の目には、なにも映ってなかった。俺の言葉も届いていなかった。
「ちゃんときこえてたわ。ベルがきたから、もうだいじょぶだって、おもったの」
「ちょっか」
「だいじょぶだったでちょう?」
「おじょう、けどあれはやりちゅぎら」
「ふふふ、ちょうね。ちょっとやりちゅぎちゃったわ」
いいんだよ、お嬢が何をしたって俺がなんとかする。お嬢は自分の思うようにしていいんだ。何も我慢しなくていい。
「おじょう、ちゅき」
「あー、言うてもたな」
ガンちゃんったら今いいとこなんだから、黙ってて。
「おじょうが、だいちゅき。おれのヨメになって」
「まあ、ふふふ」
俺の首に回されたお嬢の手を握る。いい雰囲気じゃないか。このシチュエーションもバッチリだ。爽やかな風が俺とお嬢の髪を撫でていく。俺の頬に長いお嬢の髪が掛かる。フワリと良い香りがする。
「ベル! お前何しているんだ!」
ああ、天敵が来ちゃった。ブレイズ様が、叫びながら走ってくる。こなくて良いのに。
「あら、おにいちゃま」
あっという間に俺の前に来たブレイズ様は、無理矢理お嬢の腕を引っぺがした。
俺の至福の時間は、あっという間に終わりを告げた。ああ、もうせっかく良い雰囲気だったのに。
「ネネ、ベルにくっつくんじゃない!」
「おにいちゃま、いっちょにあちょんでたのよ」
「だからって、くっつく必要はないだろう!」
「ちッ」
「ベル、今舌打ちしたか!?」
そりゃ、舌打ちもしたくなるさ。お邪魔虫だって分からないかなぁ? ゆっくりお嬢に告白もできねー。お嬢の柔らかい腕を堪能してたのに。
「アハハハ! ベル、お前ほんまに、おもろいな!」
だからガンちゃん、煩いって。
「ベル、親方が何か作るって言ってたぞ」
「あー」
まあ、それよりお嬢と二人の時間の方が大事だから。なのに、ブレイズ様っていつも邪魔するんだ。
「さあ、親方のところに戻ろう。それに……」
ん? なんだ? 真剣な表情で俺を見る。
「父上の話次第では、ベルに飛んでもらわないといけない」
「おー、わかってるじょ」
「分かっているなら、もう少し緊張感を持てないか?」
「えー」
そんなずっと緊張してたら持たないって。こうしてお嬢と触れ合うのって大事だよ? 俺にとっては何より大事だ。
そういうブレイズ様だって、ずっとお嬢と手を繋いでいるじゃないか。それを見ると余計にさ。
「ちッ」
「また舌打ちしたな!」
はいはい、戻ればいいんだろう? 戻れば。
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