46ーもち~
「ほら、ベル。頬についているぞ」
「えー、ちょんなことねー」
だって俺はちゃんと大きなお口を開けて食べてるもの。
「ベルの小さな手には、スプーンが大きいんだな」
そんなことを言いながら、俺のほっぺを拭いてくれる。親父ったら本当は優しいんだ。時々ツンデレさんが発動するけど。
「おやじ、うめーな」
「ああ、料理長のスープは絶品だろう?」
「おー」
「めっちゃ、美味いな!」
ガンちゃんも気に入ったらしい。ガンちゃんって俺より食べてないか? その小さな身体でさ。
テーブルの上で足を投げ出して座っていて、両手でスープの入った小さな容器を抱えて食べている。可愛いぞぅ。
「何言うてんねん、ベルが少ないんやって」
「ちょお?」
「そうやって」
いやいや、何を言うか。その身体の大きさと比べて、食べている量がおかしいだろうって。どこに入っているんだ。
とっても美味しく朝食を食べて、親父に連れられて裏庭に向かった。そこに変なテンションの親方がいた。
「おう! ベル! やっと出てきたか! ガハハハ!」
いきなり、何で大声で笑っているのか知らないけど。このハイテンションはなんだ? ただでさえ、声が大きいから煩いのに。
とっても満足そうにしている親方が、朝から元気よく大きな声で言ってきた。
ちょっと目の下にクマができているぞ。これは寝てないから、テンションが変になっている感じか?
「ベル! お前のお陰だぁッ! まあ、ワシの才能ってとこもあるんだけどなッ! 思わず徹夜で仕上げてしまったぞ! ガハハハ!」
ガハハハってなんだよ。やっぱ寝てないんだ。
「おやかた、れきた?」
「おうよ! ワシの手に掛かればこんなもん朝飯前だ!」
何言ってんだよ、徹夜したのだろう? それに俺の魔力が必要だとか、言ってたじゃないか。
「ベル、使ってみるか?」
「おー」
親方が出してきたのは、耳の軟骨に挟んで装着するイヤーカフ型イヤホンみたいになっている声を聞く物と、ブローチ型になっている声を拾う物だ。
それぞれに昨日親方が作っていた魔力回路と、内部だけでなく枠や飾りにも何個も魔石を着けてある。
両方に魔石を使うことで、魔石を設置する必要を無くす目的がある。
「ただしだ。これはまだ小さな魔石しか使ってないから、この王都内くらいの距離しか使えねーんだ」
いや、十分だろう。城にいる旦那様と、その周りにある貴族の邸にいるフラン爺が使えれば良いのだから。
「最終的には領地と、ここと話せるように改良したいんだ。大奥様がそれを望んでおられるからな」
「あー、フランじいが、うろうろちゅるから」
「ガハハハ! そうだな!」
一つを俺にセッティングしてくれる。小さな耳に挟んで、胸のところにブローチを着ける。
じゃあ、俺は離れよう。トコトコと表の庭へ行く。何故か親父もついて来た。
「ベル、本当にそんな小さな物で会話ができるのか?」
「おー、たぶんな」
あ、しまった。これってどう使えばいいんだ? それを聞いてないじゃないか。
「おやじ、ちゅかいかたが、わかんねー」
「アハハハ、魔力を流すそうだぞ」
「ほう」
じゃあまあ、やってみるか。
「もち~?」
俺が魔力を流して話しかけると、耳に掛けた物から親方の声が聞こえてきた。
『『もち』ってなんだ!?』
「もちもち? てことら」
『だからその『もちもち』ってなんだってんだぁッ!?』
ん? ああそっか。この世界では知らないか。しかも俺が舌足らずだから『もちもち』になってしまってるじゃないか。まあ、いいや。
「はなちゅときのことば」
『なんだそりゃ!? ガハハハ!』
うん、音声良好だぞ。いいじゃん、俺も欲しいぞ。
「おやかた、おれもほちい」
『おう、すぐに作ってやるぞ!』
やったね! お嬢と『もち~』てするんだ。『おやちゅみ』とか言いたい! めっちゃ言いたい! いや、きっと『だいちゅき』て言っちゃうぞ!
親方のところに戻ると、もうブレイズ様が出て来ていた。親方が持っていたもう一つの物を手にして見ている。
「ベル、これで話せたのか?」
「おー、かんぺき」
「なら、僕とも試してみよう」
「えー」
いや、どうせなら俺はお嬢がいいって。おっと、ブレイズ様の目が怖いから余計なことは言わないでおこう。
せっかく戻ってきたのに、俺はまたトコトコと表に回る。そして魔力を流して。
「もち~?」
『なんだその『もち~』って』
だからそれはもうさっき親方と話したからいいって。
「きこえる?」
『ああ。完璧だな』
よし、じゃあ戻ろうと思っていたところに、またまた天使が舞い降りた。この世界の神って大盤振る舞いだな!
「あら、ベル。おはよう」
「おじょう! おはよ~!」
トコトコとお嬢の側へ走って行く。早く行かなきゃ、天に戻ってしまったら大変だ。
「ベル、それもういい加減にしぃや」
「ガンちゃん、やめられねー」
「アハハハ! そうかよ」
ふふふ、いいじゃん。思っているだけなんだからさ。だってお嬢が可愛すぎるのだもの。
「おじょう、みて。おやかたがちゅくった」
「はなせるの?」
「うん、ちゅかってみる?」
「ええ!」
よし、なら俺がセッティングしてあげよう! ふふふ、お嬢の可愛らしいお耳にこれを……
「ベルちゃん、私が」
「え……」
思わぬところで妨害が入った。俺がお嬢の可愛らしい耳に、着けてあげようと思ったのに。
アイレはさっさと俺が耳に挟んでいるのと、胸のところに着けているのを取っている。
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宜しくお願いします。
今はもう『もしもし』て言わないのかなぁ?(^◇^;)




