37ーお邪魔虫
俺だって捕まりたくて捕まっていた訳じゃない。不可抗力だっての。
「だって、ちゅばちゃをいられたんだ」
「ああん? なんて言った?」
「ワッハッハッハ! 翼を射られたらしいぞ」
「そりゃ、そんなことされたら、飛べねーなッ!」
そうそう、だから捕まっちゃった。それに、あの首に着けられてた魔道具だよ。あれがなかったら魔法でチョチョイと逃げたんだけどさ。
「隷属の首輪を着けられたのか?」
「ちょうら」
「あれはいかん、あんな物を使うなんて、けしからん!」
あの隷属の首輪は、主人になった者にしか外せなくなっている。
着けられた者が無理矢理外そうとすると、首に極太の針が刺さって命を奪うって代物だ。
そんなの人権無視もいいとこだ。人の命を何だと思ってるんだ。
「ベル、料理長には話してあるからさっさと調理場に行って食べてこい」
「おー」
「ベル、わいも行くで」
ガンちゃんがそれまで親父の肩に乗っていたのに、ヒョイと俺の肩に乗ってきた。食べ物には弱い。
「なんか美味いもん食いたいわ」
「りょうりちょうにいう?」
「そうやな」
そんなことをガンちゃんと話しながらお邸に入ると、そこに天使が舞い降りた。キラキラと光の粒子を纏いながら……と、俺には見えた。背中に真っ白な翼はないか?
「まあ!」
ここに天使がいるぞー! 早く隠さないと神様に連れて行かれちゃうぞー!
「ベル、何あほなこと言うてんねん」
「いってねー」
こっそり心の中で思っただけだ。そこにはお昼寝から起きてきたお嬢がいたんだ。
お嬢は立っているだけで可愛い。周りがキラキラ輝いて見えるってもんだ。
「ガンちゃん! ひちゃちぶりだわ!」
「おー! お嬢!」
俺の肩から、ピューッとお嬢の肩に乗りに行くガンちゃん。ガンちゃんは一応俺の使い魔だよな? 変わり身が早すぎないか?
「お嬢は、ちびっ子になってしもても可愛いな!」
「ふふふ、ガンちゃんは、いちゅも、かわいいわ」
お嬢の可愛い指で喉を撫でられて、ガンちゃんはご満悦だ。
いいな~、代ってくれよ。俺もお嬢に撫でてもらいたいぞ。そのまま抱きしめてくれないかなぁ?
「ベル、お前キショイって」
「うっちぇー」
ほら、行くぞ。とりま、今はオヤツだ。小腹が減ったら力が出ない。
「ベル、お前ほんまにヨワヨワやな」
「ベルはガリガリになっちゃったから、はやくたいりょくを、ちゅけなきゃね」
「おじょう……!」
なんて優しいんだ! 俺は感動だよ! いや、このまま抱きしめてもいいかな? いいよな? 今はお邪魔虫なブレイズ様がいないし。
「ベル! 僕は見ているぞ!」
あー、いるじゃん。つまんねーの。いつの間にかブレイズ様がやって来て叫んでいた。
なんだか見張られているみたいじゃないか。俺ってそんなに信用ない?
ブレイズ様がツカツカとやってきて、お嬢と俺の間に立ちはだかった。
「おれは、おやちゅをたべにいく」
「おう、なら早く行くんだな!」
「おー」
仕方ない。ほら、ガンちゃん行くぞ。
「え、わいはお嬢といるで?」
「おやちゅはいいの?」
「そうやったわ、行く行く!」
現金な奴だ。また食べ物に釣られている。ま、今回は仕方ないか。ブレイズ様が来ちゃったし諦めよう。
「ベル、何を諦めるねん?」
「なんでもねー」
本当、余計なことは読むんだよ。
「おじょう、またあとで!」
「ええ、ベル」
「いいから、早く行け。しっかり食べてこい」
本当、ブレイズ様はお邪魔虫だ。ちょっとお嬢に抱きつきたいな~なんて、思っただけじゃないか。行動には移してないのにさ。
「だからな、ベル。そう思うのがもうキショイねんて」
「おもっただけ」
「まあな、前の時からやもんな。ベルのお嬢好きはさ」
「おー」
そうだよ、前の時は諦めたんだ。あんな王子と婚約してしまったから。さすがに王族に逆らったら駄目だと思ってさ。
「久しぶりやな、料理長のおやつ。楽しみやわ」
もうおやつのことを考えている。切り替えが早いな。
でも、何を作ってくれてるかな? 俺も楽しみだ。
「りょうりちょう」
「おう、来たか」
親父が話してくれていたからだろう、ちゃんとおやつを用意してくれていた。
「おやちゅ、なんだ?」
「俺特製、フワトロなフレンチトーストだ」
「おー、うまちょうだ!」
「わいも食べるで!」
「なんだ? その小さいのは?」
「おれのちゅかいま、ガンちゃん」
「使い魔? そんなの持ってるのか?」
「おー、よろちく」
「アハハハ、ガンちゃんか。たくさん作ってあるから食べな!」
「やったぜ!」
ガンちゃんは本当に現金だ。何度も言うけど、俺の使い魔だよな? なのに、もう料理長の肩に乗ってるじゃないか。
「りょうりちょう、ちろっぷもある?」
「シロップか? 蜂蜜でいいか?」
「おー」
蜂蜜も良いのだけど、この世界では蜂蜜ってまあまあ高価な物だった気がする。
「りょうりちょう、はちみちゅって、おたかい?」
「ん? 高いって言ったか?」
「おー」
「そりゃな、そこそこのお値段はするぞ」
ふむ、それならあれだ。カラメルシロップの作り方は知らないのか? 本当はメープルシロップがいいんだけど、おれはそれでも十分だぞ。
この家で使っているのは領地から運ばれてきたきび砂糖だから、風味とコクがあっていいと思うんだ。
「りょうりちょう、ちゃとうとみじゅでちゅくる、ちろっぷ」
「あ? なんだって?」
「アハハハ! ベル、言えてないやん!」
笑いながらガンちゃんが通訳してくれた。くっそー、ガンちゃんにまで負けるなんて!
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申し訳ありません!遅くなってしまいました(*>ㅅ<)՞՞




