34ー大型の魔道具
「ああ、それは魔石が入ってないんだろう」
ちょっと降りてみな。と親方が言って、俺が座っていたところをパカッと開けた。そこに小さな窪みがあって、何か回路っぽいものがあった。
「おー!」
「な、ここに魔石を入れるんだ」
親方がズボンのポッケから小さな魔石を出した。
「おやかた、ちっちゃくね?」
「手持ちがこれしかないんだ、我慢しろ」
「ちかたねー」
窪みにカチンと魔石をはめて、またパコンと閉じる。
「乗ってみな、これは大型の魔道具だな。もう動くと思うぞ」
「おー」
「けど、チビしか乗れねーじゃないか」
「おやかた、のるか?」
「乗らねーよ!」
「ワッハッハッハ!」
俺はそれに乗り、短い足でキコキコと漕いでみた。すると親方が言ったとおり、ゆっくりと動き出した。
ああ、本当に魔道具なんだ。足の力はほとんど必要なくて、とっても楽に進める。いいな、これ。お嬢を乗せてやりたいぞ。
「ちょっちいっちゅうちてくる!」
――キコキコキコ
「アハハハ! ベル、ええやんそれ!」
ガンちゃんが俺の肩に乗ってきた。
「ガンちゃん、ここにのったら?」
「おー、先頭やん!」
俺が握っている物の真ん中に、ガンちゃんはチョコンと乗っている。小さいから丁度いいな。ガンちゃんだけの特等席だ。
「ちゅっぱーちゅッ!」
「おー!」
――キコキコキコキコ
作業場を出て邸の広い裏庭を走る。いや、走るってほどのスピードではないんだけど。俺がトコトコ歩くよりは、ほんの少し速いかな~って程度だ。
「ベル、おせーな! アハハハ!」
「こういうもんらって」
俺が何に乗っているか教えてあげよう。
ハンドルを軽く握り、ペダルをキコキコと漕いで進む。目線は真っ直ぐ前だ。まあ、ちびっ子の俺だからお似合いなんだな。
そう、三輪車だ。しかも魔道具だから、ほとんど力は必要ない。言うなれば、電動三輪車みたいなんもんだ。
だからってスピードは出ないんだけど。風を感じて走るなんてことはできない。これって魔石が小さいからパワー不足なんじゃないのか?
これを大きくすれば、大人が乗れる電動自転車が作れるのじゃないか?
「ワッハッハッハ! ベル! お似合いだぞ!」
親父がそう叫ぶから、俺は片手を上げて応える。
――キコキコキコキコ
それにしても、裏庭広いな。こんな小さな三輪車だと結構遊べるぞ。
でも一つ残念なことがある。俺が邸の中を走りながら吹いていたおもちゃのラッパ。あれを付けたい。ぷぷー! と鳴らしながら走りたい。よし、親方に相談だ。
そう思って方向転換して親方と親父がいる方へ向かうと、いつの間にか一緒にブレイズ様が立っていた。
「ベルは何をしているんだ!?」
あれれ? 怒っている? なんでだ? 俺のこの超可愛い姿を見ろよ。
あ、もしかしてブレイズ様も乗ってみたいか? ちょっとブレイズ様は似合わないんじゃないかなぁ。だってもう8歳だし。
「ベル! フラン爺に言われた魔道具はどうした!?」
「あ、やべ」
「ワッハッハッハ!」
親父は笑ってるけど、共犯だぞ。親父だって何もしないで笑って見ていたじゃないか。
よし、ここは逃げよう! またまたクルッと方向転換をして、俺は一目散に逃げ出した。
「ワッハッハッハ!」
また親父が笑ってるけど、そんなの気にしていられない。だってブレイズ様が激オコなのだから。
――キコキコキコキコ
「こら! ベル! 止まれ!」
――キコ……キコキコ
「止まれと言ってるんだ!」
――キコ……キ……
やべ、逃げられないじゃないか。ここはなんとか誤魔化さないと。クルッと顔だけ振り返って俺はシレッと言った。
「ブレイズちゃま、のる?」
「乗らない!」
あら、そう? 楽しいのに。それよりこの場を、なんとか乗り切らないと。
「おやじ、おれのらっぱ」
「ああ、あのおもちゃのか?」
「ちょう、ちょれをちゅけたい。ここに、ぷぷーって」
「アハハハ! お前は本当に馬鹿だな! どうやって吹くんだよ」
「あ、ちょうか」
「なんだ、ラッパを付けたいのか?」
「おやかた、ちょうら」
「なら、手で鳴らすのをつければいいじゃないか」
「おやかた、てんちゃい!」
「ワッハッハッハ! ワシに掛かれば作れない物なんてないぞ!」
三人でわちゃわちゃとそんな話をしていると、ブレイズ様が割って入ってきた。
「親方は、作れない物はないんだね?」
「おう、ブレイズ様! あたぼーよ!」
「じゃあ、お祖父様がおっしゃっていた魔道具も、当然もうできているよね?」
おっと……すっかり忘れてた。親方を見ると、ダラダラと汗を流している。だって何も考えてないって言ってたもんな。
そんな親方をブレイズ様が追い詰める。ブレイズ様の方が実際の身長は低いのに、目の錯覚か? ブレイズ様の方が大きく見えるぞ。
「ね、親方。できているんだよね? 見せてもらおうかな? 楽しみだな~」
「いや、ブレイズ様。それがだな」
「ん? どうしたの? できているんだよね? ほら、今すぐ見せて」
おふ、ブレイズ様ってお嬢と話す時と全然違うんだな。なんて呑気に見ていた。
「ベルもだよ。お祖父様に協力するように言われたよね?」
「え……」
「ほら、できているから、二人でそうして遊んでいるんだよね? そうだよね?」
おっと、ブレイズ様の目が怖い。表情は微笑んでいるのに、目が笑ってない。しかも、圧が強い。
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