27ーお嬢と俺の物語 5
まだ生後半年だったブレイズ様が泣くと火がチラつき出すようになり、その内火の玉になった。
世話をしていた乳母が、部屋に入ったメイドが火傷をした。
泣き出すと、ところを選ばす火がチラつく。それだけで済まなかった。その内、小火を起こしてしまった。
まだ1歳になっていないブレイズ様は、もちろん自分が何をしているのか分からない。
そんな歳の子供って、泣いて意思表示をすることだってある。その度に火が出る。
それで仕方なく、ブレイズ様は別邸に移された。それからも毎日何度も両親はブレイズ様に会いに行っていた。
奥様は周りが止めるのも聞かず、夜は必ずブレイズ様のいる別邸で就寝されていたそうだ。
その頃は両親も火傷が絶えなかったらしい。
だけど、自分だけどうして? と思った時期もあっただろう。
その理由が分かった時は、火なんて使えるからこんなことになったんだと、憎らしく思ったこともあったかも知れない。
一時は、奴隷につける『隷属の首輪』をして魔力を抑え込むか? なんてことも考えたそうだ。俺が奴隷商につけられていた首輪だ。
「ちょんなの……かわいちょうだ」
「そうだろう?」
今は魔術師団に依頼して、少しでも魔力を抑える魔道具を作ってもらっているらしい。
仕方ないな、俺が一つ協力してやるか。ほんの気まぐれだ。お嬢の兄ちゃんだし、て程度だった。
「おれにむかって、おもいっきり、おっきいのだちて」
「爺、何と言ってるんだ?」
「ベルに向かって、思い切り大きい炎を出してと言ってます」
「そ、そんなことができるわけないだろう!」
「きにちゅんな、へいきら」
「ぼ、僕は思い切り出したことなんてないんだ! いつも抑えて、抑え込んで……」
ああ、だから余計に身体の中で出ようとするんだ。いや、知らねーけど。
「いいから、おもいっきり」
俺は短い腕を広げた。ドンとこいってな。
「爺……」
「ベル、本当に大丈夫なのか? ドラゴンブレスは駄目だぞ」
「ちょんなの、ちゅかわねー」
「ブレイズ様、大丈夫だそうです!」
「おやじ、はなれててくれ」
「ベル、任せたぞ」
「おー」
ブレイズ様は少しの間、戸惑っていた。でも何か決心したように顔を上げると、涙を流しながら俺に言った。
「本当に知らないぞ! 火傷をしたらすぐに医師に診せるからな! いや、無理だと思ったら逃げてくれ!」
一応、俺のことを気遣ってくれているらしい。でもそんなの不要だ。よし、いつでもどうぞ~だ。
離れていた従者が自分の周りに水の障壁を展開させたのを確認して、ブレイズ様が両手を俺に向けた。
「ベル! いくぞ!」
「おー」
ブレイズ様の両手から、大きな炎が現れた。それはこの別邸の玄関ホールがいっぱいになるくらいの大きさだった。
ブレイズ様が今まで自分の中に抑え込んでいた気持ちが、そのまま炎になったかのような悲しい炎だった。
その場の空気が熱くなり、ゴーッと音を立てながら渦を巻くようにどんどん大きくなっていく。
当然、俺の小さな身体が炎に包まれてしまったように見えただろう。
次の瞬間、あれだけ大きかった炎が一瞬のうちに消えた。何も起こらなかったかのように。俺は平然として立っていた。
「え……? 何が起こったんだ?」
「だから、だいじょぶだっていった」
「ベル、お前本当に竜族なのか?」
「ちょうら」
ポポンとチビドラゴンの姿になって、ブレイズ様の側まで飛んで行く。
「え? え!? アハハハ! ドラゴンってまだチビドラゴンじゃないか!?」
笑うんじゃないよ。それでもドラゴンに変わりない。
ブレイズ様の目の前をフワフワと浮いているチビドラゴンの俺を見て、手を伸ばしてきた。
「ベル、本当なんだな。とっても……綺麗だ」
その時、俺の亜空間で寝ていただろうガンちゃんがひょっこりと顔を出した。俺の頭に顎を乗せている。なんて、太々しい態度だよ。
「ベル、終わったんか?」
何が、終わったかだよ。絶対に寝てただろう? それともあれか? 面倒なことに巻き込まれたくないとか思ったか?
「何言うてんねん! わいは竜族と違うんやで! 炎に焼かれて丸焼きになるっちゅうねん! 魔モモンガの丸焼き見たいか!?」
何を馬鹿なことを言ってるんだ。ガンちゃんだって魔モモンガなんだから、あれくらいの炎なんてなんともないだろう?
「まあ。人の使う炎なんて、大したことあれへんな」
ほら見ろ。
「おい、ベル。この小さな生意気な奴はなんだ?」
ああ、そっか。ブレイズ様は初めてだな。ポポンと俺はちびっ子に戻ったのだけど、階段の上だってことを忘れていた。
着地に失敗して、そのまま階段の下へ真っ逆さまと思いきや、親父がいた。ポフンと親父の腕の中だ。
「ベル、お前はもう少し考えて行動する方がいいな」
「うるちぇー」
「アッハッハッハ! ベルは考えてへんからな!」
ガンちゃん、笑い過ぎだ。よいしょと親父の腕の中から出た俺はブレイズ様のすぐ側に行く。
ガンちゃんはしっかりもう俺の肩に乗っている。
「これ、ガンちゃん。おれのちゅかいま」
「へ? 使い魔と言ったのか?」
「ちょうら」
「わいは魔モモンガのガンちゃんや。よろしくな!」
「あ、ああ。いや、信じられないが……」
「ブレイズ様、竜族には使い魔がいるのですよ」
「そうなのか?」
それよりも、気付いてるか? もう火が出ないだろう? 本人より親父の方が早くそれに気付いた。
お読みいただき有難うございます!
応援して下さる方、続けて読んで下さる方は是非とも下部↓の☆マークで評価をして頂けると嬉しいです!
宜しくお願いします。
投稿が遅くなりました(*>ㅅ<)՞՞




