23ーお嬢と俺の物語 1
俺はまだちびっ子なのに、どうしてフラン爺やブレイズ様にこれだけ頼りにされているのか、不思議に思わないか?
だって3歳のちびっ子だぞ。喋るのだって舌足らずで、なんにもできない。
それは前の時にあった。
俺が巻き戻す前に親父に買われてこの邸に来た時のことを、少し話そう。
今と同じようにガリガリに痩せこけて、しかも身体中傷だらけで片手片足を骨折していた。もう瀕死状態だった俺を買ったのが親父だ。
ボロボロの俺を見て「こいつを助けないと」と思ったらしい。
そんな状態の俺を連れ帰った時に、邸の皆が驚いたそうだ。
「ゲイブさん! どうしたんですか!? その子は!?」
「アイレ、すまない! 医師の先生を呼んでくれ! 私の部屋に連れて行く!」
「は、はい!」
親父に言われてアイレが走る。他の者は遠巻きに見ていたそうだ。だって、本当にボロボロのちびっ子を親父が抱えていたから。あんなのもう無理だろうと、誰もが思っていたらしい。
でも親父は違った。
「大丈夫だぞ、しっかりするんだ。俺が助けてやる。お前は竜人だろう、これくらい必ず治る!」
そんな親父の言葉を薄っすらと覚えている。
それから俺は意識がなかった。丸3日だ。その間に何度も医師に診せてくれた。医師は怪我を治療し骨折している腕と足を固定し、竜人なんて診たことがないから分からないと言いながら、薬湯も出してくれた。
それを根気よく親父が飲ませてくれて、俺は一命を取り留めた。
「ん……」
「おう、気が付いたか?」
「なんら……?」
「俺が奴隷商から買ったんだ、覚えているか?」
「おー……」
「隷属の首輪は外したぞ。お前の魔法で回復できるだろう? 俺は回復魔法が使えないんだ」
親父にそう言われ、力が入らなくてプルプルと震える手で俺は自分の首を触った。本当に首輪が外されていた。
どうしてだ? だって奴隷を買ったのに? そんなことを思いながら、俺は自分の中の魔力を確認した。
首輪をつけられていた頃はなかった感覚が蘇ってくる。よし、これならいけるぞ。俺は魔力を練り、自分に回復魔法をかけた。
自分の身体が強く光ったのが分かった。この光は怪我が酷いほど強く光る。この時親父は、眩しくて目が開けていられなかったと話していた。それほどの怪我だったんだ。
ゆっくりと手を動かしてみる。小さな手をグーパーして確かめる。よし、動くな。ゆっくりと身体を起こした。
「ほう、さすがにチビでも竜人だな。あれほどの怪我を一発で治すか」
「あんた、おれをかったんだろ?」
「おう、そうだぞ。俺はこの邸の執事で、ゲイブという。どうとでも好きに呼ぶといい」
「おれ、べる」
「ベルか。どうして竜人が奴隷商なんかに捕まってたんだ?」
そりゃ、そう思うだろう。なにしろ最強種の竜人だ。その経緯を親父に話して大爆笑された。
「ワッハッハッハ! お前やんちゃ坊主だな! まさか里の結界を出るか!?」
「おまえじゃねー、べるだ」
「おう、ベル。腹が減ってないか? 腹に優しいものを作ってもらおう」
そうして親父に看病された。もう大丈夫だっていうのに。
「まだ体力が戻ってないだろう? 回復魔法は体力まで回復できないのだから」
まあ、その通りなんだけど。だけど俺はちびっ子だけど竜人だ。
「これくらい、どーってことねー」
「これを食べたら風呂だ。クリーンはしていたけど、風呂には入りたいだろう?」
風呂か……それはいいなと思って、俺は大人しく親父が持ってきたパン粥を食べた。
その後、風呂でガッシガッシと洗われた。頭なんて、毛が抜けてしまうんじゃないかというくらいにだ。
クリーンしてくれてたのなら、汚れてないってのに。
大人しく、湯舟に浸かっていると親父が言った。
「俺は半分なんだ。竜人と人とのハーフだ」
そんなことがあるのかと俺は驚いた。だって、竜人ってドラゴンだぞ。そのドラゴンと人とのハーフなんて意味が分からん。
竜人が人と婚姻したって話も、俺は聞いたことがなかった。
「ドラゴンになれんのか?」
「いや、なれないんだ。鱗は出るし寿命も人より長いんだがな。だからずっと人の国で暮らしてきた」
その時に鱗を見せてもらった。上級の魔法を使うか、親父が「ふんッ!」と気合を入れると腕に鱗が出る。純白に輝く鱗だ。
「はくりゅうか」
「おう、そうだろうな」
「おれは、くろだ」
その時だ、湯舟にヒュゥ~……ポチャン! と何かが落ちた。
「ぶへッ! ベル! 助けてや! ぶぶぶぶ……わいは泳がれへんねんて!」
短い手足をバタバタさせて湯舟でおぼれていたのは、俺の使い魔のガンちゃんだ。前の時は、こんな初登場だったんだ。
「ワッハッハッハ! その小さいのは何だ!?」
「ガンちゃん。おれのちゅかいま」
「ほう、お前は使い魔を持つのか」
「だから、お前じゃねー。べるだ」
こいつも洗ってやろうと、親父に捕まったガンちゃんもガシガシと洗われた。なんて強引なオッサンなんだってその時は思った。
「ふぅ~、ええお湯やったな!」
なんてガンちゃんは言ってたけど。馴染むのが早いモモンガだ。
それから綺麗な服を着せられ。親父に抱っこされて庭に出た。
げ! これって貴族の家じゃないか。と、その時改めて気付いた。
親父が自分は執事だと言っていたから、そこそこの家なのだろうとは思っていたけど。
こんなの俺は家の中で迷子になる自信があるぞって、マジで思ったんだ。
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数話、巻き戻す前のお話が続きます。




