21ーブレイズ様の思い
「けろな~……」
お嬢の体育会系のスイッチが、入っていそうなんだよな。ガツンと言ってやるとか言っていたし。
その上、体育会系の元であるフラン爺も来ちゃったから余計なんじゃないか?
こうなったら俺がしっかりしないと! と、決意の拳を握っていた。
「ベル、起きてるか?」
少しだけ遠慮気味にノックしてドアを開けたのが、ブレイズ様だ。意外な人物の登場だ。
「ブレイズちゃま」
「ベル、ネネのことなんだ」
おう、どうした? ブレイズ様は、俺とお嬢を近付けたくないのだろう?
「僕はやはり、王子と会うのは回避したいと思っている。もしまた前の時みたいに婚約を打診されたら、ベルがネネを連れて竜族の里へ逃げてくれ。まさか竜族の里に行ったなんて、誰も思いつかないだろう」
「え……」
意外な人が超意外な提案をしてきた。でも親父がそれは遠すぎるから無理だと言っていたぞ。なのに、どうした?
「僕はあれを繰り返したくない。あの時だけじゃない。それまでのネネの苦労を見ていただろう? もうあんな思いをさせたくないんだ」
「ブレイズちゃま」
「竜族の里まで行くのはネネにとって辛い旅だろうが、それよりも……」
それだけあの王子と婚約させたくない。それは俺も同じ思いだ。
魔力が暴走して最上級の爆裂魔法をぶっ放すくらいだ。お嬢は完全にキレていた。それだけ腹が立って許せなかったんだ。
婚約破棄だけじゃない、執務は変わらずやれと言われて、虚しくも思っただろう。馬鹿にするなって話しだ。
それまで12年間のお嬢を見てきているのは、俺だけじゃない。ブレイズ様だってそうなんだ。
シスコンのブレイズ様にとっては、俺が思っている以上に我慢できないことなのかも知れない。
「ネネには幸せになってほしいんだ」
「おれも、ちょうおもう」
「だからベル、頼んだ」
「おー、まかちぇろ」
悲しいような、やるせないような表情をしてブレイズ様が俺に言った。だから、そんな顔をするなって。
「けろ、ブレイズちゃま。おじょうは、かじょくといっちょにいるほうが、ちあわちぇだ」
「分かっている。だからまた婚約を言ってきたらと言った。そうならないように、できることはする」
「うん。おれも、ちゅる」
「ベルがちびっ子じゃなかったら、まだ……」
こら、それは言ってはいけない。俺が一番そう思っている。俺がちびっ子じゃなかったら、もっと……て思ってしまう。
今は親父に助けられて、生き延びたちびっ子だ。
「おれも、まほうがちゅかえる」
「ああ。そうだな」
「ブレイズちゃまだって、ちゅかえる」
「もちろんだ、僕はそのために色々鍛練してきた」
そこから前の時とは違う。なによりも一家全員が、あの王子とは婚約させたくないとはっきりと思っている。
みんなで力を合わせたら、前の時の出来事を変えられるさ。だってもうブレイズ様自身が、前とは違うのだもの。
「ブレイズちゃまが、まえとは、ちげー」
「ああ、確かにそうだな。前ならまだ別邸に籠っていただろう」
「だから、だいじょぶだ。かえられる」
「ベル、ありがとう」
ポンと俺の頭に手を乗せる。優しいその手は、少し震えていた。
ブレイズ様も不安なんだ。お嬢を守りたくて心配で、前と同じになったらどうしようと思っているんだ。
「けろ、おじょうは、おれのヨメにちゅる」
「ふふ……あの馬鹿王子より、ベルの方がずっといいよ」
こらこら、そんな弱気でどうするよ。
「ブレイズちゃま、これからは、いっちだんけちゅだ」
「なんだって? 一致団結と言ったか?」
「ちょう!」
「よし! 団結だ!」
ブレイズ様とげんこつを合わせる。よし、ベッドでパン粥を食べてる場合じゃないぞ。
「よちッ!」
ピョンとベッドから出る。
「ちゃくちぇんかいぎだじぇ!」
「いや、僕たちはまだ子供だからと入らせてもらえない。実際、できることもあまりない」
なんだよ、俺の決意を折るなって。
「だからこうしてベルに頼みにきたんだ」
俺だけじゃない。ブレイズ様だって子供になってしまって悔しいんだ。子供だから自分は何もできないと。それでもできることをしようと。
時を戻したことは後悔していない。そうするしかなかったと今でも思う。
だけど、マジでやり過ぎだ。ここまで戻るとは思わなかった。でもそれも考えようだ。なにしろお嬢が婚約する前に戻ったのだから。
「婚約は何が何でも回避する。だけどもしもの時はベル、頼む。ネネを連れて出てくれ」
「わかってる! けろ、ちょれまでに、できることをちゅる!」
「当たり前だ! 僕はネネと離れるなんて絶対に嫌だ!」
やっぱそこか。筋金入りのシスコンだもんな。その方が、ブレイズ様らしくていいさ。
「ブレイズちゃまは、おじょうをヨメにできねーけろな」
「だが、僕は永遠に家族だ」
ふふふんと、自慢そうな顔をしている。いや、嫁にしても永遠に一緒だぞ。
「ヨメもいっちょだ」
「じゃあ、ベルも僕と永遠に一緒になるぞ」
「ちゃーねー」
「アハハハ! 僕はそれでもいいさ。ベルなら安心して任せられる」
それは嬉しいことを言ってくれる。そうだとしても、竜族の里で暮らすのは駄目だ。もし行くとしても一定期間だけだ。
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遅くなりました!
もう一話投稿します。




