20ーガンちゃん!
関西弁もどきで喋っているのが俺の使い魔のガンちゃんこと、魔モモンガの子供だ。一応男の子らしい。
どうして関西弁なのかは知らない。ガンちゃんの一族は皆この言葉だ。
真っ黒な体毛に目の周りだけシルバーで、ゴールド色のクリックリの目が際立っている。とっても愛嬌のある顔をしている。
魔がつくのだから、一応魔物だ。その証拠に、頭に小指の爪ほどの小さな角が二本ある。
けど、魔物なんて怖さが全くない。だってちびっ子の俺の肩に乗れるくらい小さいから。そうだなぁ、20センチくらいかな。
「なんでやねん! わいは大きさなんて関係ないんや! いつでも自由自在やで!」
なんて言ってるけど、大きくなったところは見たことがない。
ガンちゃんは竜族の里にいる頃からの付き合いだ。俺が結界を出た時も、肩に乗っていた。
でも俺の魔力を封じられてしまうと、姿を現すことができなくなり俺の亜空間に閉じ込められてしまう。だから今まで登場できなかった。
いや、きっと爆睡していたな。そうでないと俺の魔力が戻った時点で、即行で出てきていただろうから。
「もう亜空間にいるのは飽きたでぇ」
そう言いながら、ちびっ子の俺の肩にヨイショと乗る。後ろ脚で首の辺りを、カッカッカッカと掻いている。
「ガンちゃん、ひちゃちぶり」
「なんや、なんでまたちびっ子になってんねん?」
「いろいろあったんだ」
「まあ、ええけどな」
落ち着いたのか、毛繕いなんてし出した。ガンちゃんは結構肝が座っていて、俺が里の結界を出てしまった時も爆笑していたくらいだ。
笑ってないで教えて欲しかったぜ。何のための使い魔なんだ?
「何言うてんねん。わいかて、結界出たの初めてやっちゅうねん」
ガンちゃんには口に出さなくても、俺の思っていることが伝わってしまう。使い魔契約をしているからだ。
もっとちびっ子の時に、親から使い魔をもらう。それがガンちゃんだった。
その時にお互いが良いと思ったら、使い魔契約をするんだ。それはよほどのことがない限り、どちらかの命が消えるまで続く。
俺は可愛いし、いいじゃんって思ったんだ。ガンちゃんは、竜族の使い魔になれるなんてラッキーやん! て言ってた。どうラッキーなのか分からないけど。
それから一緒にいる。俺が奴隷商に捕まって魔力を封じられていた時も、姿を現せないだけで実は俺の亜空間にいた。
姿を現せないということは、何もできないってことなんだけどな。
「ふぅ~、久しぶりの外や。なんかうまいもん食べたいな」
「ワッハッハッハ!」
ずっと親父がお腹を抱えて笑っている。親父は何を隠そうって、隠してないけどガンちゃんを気に入っている。
こう見えて一応魔物だから、普通のモモンガにできないことができる。
前脚から後ろ脚にかけて張れる飛膜を広げて滑空する。それは普通のモモンガでもできる。
でもガンちゃんはそれだけじゃない。そのまま転移できるんだ。ガンちゃんの視認できる範囲に限られるけど。
ああ、そうだ。ガンちゃんが認識している人のところへは、距離に関係なく転移できるってのもあった。
それに闇に紛れて存在も消せる。ガンちゃんの息が続く時間だけだけど。めっちゃ中途半端だ。
「ワッハッハッハ!」
こうして親父は笑ってるけど、親父の手伝いなんかもしていた。
例えば、離れた領地にいるフラン爺のところにお手紙を持って行ってね、なんてお使いもできる。
ただし一度行くとフラン爺と一緒に遊んでしまって、なかなか帰ってこない。
「ガンちゃん、久しぶりじゃないか」
「なんや、親父。若返ったか?」
「ワッハッハッハ!」
な、俺とは対応が違うだろう? 結構気に入ってるんだ。
もしかしてあれか? 親父ってこう見えて可愛いものが好きなのか? やっぱツンデレさんを標準装備しているな。
「ベル、また何か馬鹿なことを考えているだろう?」
「え、かんがえてねー」
「親父はツンデレなんやって」
こらこら、言うなって。ほら、親父が睨んでいるじゃないか。
「けどな、またちびっ子ってことは、時を戻せたんやな?」
「うん、ちょっと、やりちゅぎたけろ」
「まーなー、ちびっ子になってしもてるもんな。ベルは魔力の加減ってもんを、せーへんからな」
加減なんて竜族はしないぞ。
「そうやった、ベルも一応竜族やったわ。忘れとったわ。竜族は加減っちゅうもんを、せーへんからな」
「ワッハッハッハ!」
「おやじ、いちゅまでわらってんだ」
「いや、アハハハ! ガンちゃんは面白いだろう」
まあ、いいけども。ガンちゃん食べる? と、フニフニのパン粥をスプーンで口元に持っていく。
「なんでやねん、わいは病人とちゃうっちゅうねん。もっと真面なもんないんか?」
「ガンちゃん、一緒に調理場に行くか?」
「おう、行くで!」
そうしてあっさりとガンちゃんは親父の肩に乗り移り、一緒に部屋を出て行った。誰の使い魔なんだって話だよ。
静かになって、俺はまた考える。お嬢のことだ。やっぱあの第2王子にまた会わせたくない。
お茶会には王妃もいるんだ。前の時にお嬢をロックオンした王妃だ。なのに、時を巻き戻す直前にお嬢を責めていた。あの王妃も俺は許せない。
無理矢理強引に婚約者にしたのも、なんて勝手なんだって思った。
だから第2王子だけじゃなくて、王妃も避けたい。
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