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溺愛は最上級爆裂魔法のあとで〜ちびっ子従者は運命を巻き戻す〜  作者: 撫羽


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17/100

17ーお嬢の乳母

 お嬢は苺が大好きなんだ。瞳もストロベリーレッドだし。て、関係ないけど。

 苺をハートの形に切って、俺のラブを伝えたい。普通に並べるより、可愛いだろう?

 良い匂いがしてきた。えっと、一人二枚ずつと考えて、何枚焼こうか?


「お嬢様と奥様と旦那様とブレイズ様に、大旦那様もいらしたか?」

「ちょうら、おれもほち()いじょ」

「アハハハ、そうだな。俺も食べたいな」


 結局みんなの分と俺と料理長の分、それでも生地が余ったから全部焼いてしまう。厨房のみんなも食べたがっているし。

 温かいうちに持って行こうぜ。俺は持って行けないけど。


「私がお持ちしましょう」

「ありがちょ」


 最初から調理場の隅で気配を消して待っていた、お嬢の乳母のアイレ・バッヘムだ。

 オレンジ色の髪をいつもお団子にしていて、イエローグリーン色の瞳をしている風属性魔法の使い手だ。

 その風魔法を使って、さっき飛び散ったパンケーキの生地が自分に付かないように風の障壁を展開していた。

 魔力の無駄使いのいいとこだと俺は思う。いや、それは生地を全部飛ばしちゃった俺か?

 そのアイレは、乳母といってもまだ若い。奥様より年下らしい。

 お嬢が生まれる前に、自分の赤子が流行病で亡くなり、それが原因で離縁された。その頃に奥様から、乳母として声を掛けてもらったと前の時に聞いた。

 母乳も出て、お嬢の乳母に丁度良かったのだろう。アイレも自分の子供のように、お嬢を育てている。

 乳母といっても貴族の令嬢だったから、ちゃんと教養もある。今はお嬢に勉強も教えているはずだ。

 だけど、今のお嬢は前の時の記憶があるから、勉強なんて必要ないだろうな。

 

「おれ、べる」

「はい、ゲイブさんから聞きましたよ。ベルちゃんですね」


 いやいや、『ちゃん』て。やめてくれ。こっ恥ずかしい。


「べるでいい」

「あら、可愛いのですもの、ベルちゃんで」


 まあ、仕方ない。なにしろまだちびっ子だから。いや、このアイレは前の時に俺が成長しても『ベルちゃん』と呼んでいたぞ。

 前に聞いたことがあるんだ。赤ちゃんが亡くなったのは病なんだから仕方ない。

 なのに離縁されて腹が立たなかったのかってさ。そしたら意外な答えが返ってきた。


「お医者様がどうしようもないことだと、おっしゃったのです。なのにそれを理由に、一方的に離縁を言い渡されました。旦那様や姑のことも好きじゃなかったので、思わずグーパンをお見舞いしてしまいました。ふふふ」


 な、びっくりだろう? グーパンだぜ。そこまでする理由がきっとあったのだろう。


「だって旦那様には外に愛人がいたのですよ。しかも妊娠中だったのです。その愛人を家に入れるために、私は邪魔になったのでしょう。もう腹が立っちゃいました」


 なんだ、それは! 理不尽じゃないか。


「今しかないと思っちゃったのですね。プッツンきちゃいました。ふふふ」


 それを聞いて俺は、女性を怒らせたら駄目だと思った。

 アイレは風属性魔法もそこそこ使えるのだけど、この家に来てから何故かフラン爺に傾倒していて師事している。

 大剣は持てないから短剣を、そして体術も習っている。

 フラン爺は時々しかこっちにこない人なのに、一体何がそうさせたのか? と思って、前の時に聞いたんだ。そしたら……。


「元夫と元姑にグーパンした時に、相手に全然ダメージがなかったのですよ。私の手は痛いのにです。それが悔しくって」


 なんて言ってた。けどもう必要ないだろう? て、そうじゃないらしい。

 今度はお嬢様をお守りするためにとか言って、毎日鍛練を欠かさないストイックな人だ。

 アイレとメイドがワゴンを押して、出来立てのパンケーキとお茶を持って行く。

 俺はその横をトコトコと歩いている。3歳児にとってはこのお邸って広いんだよ。今はまだ体力がないから、ちょっと辛い。


「ベルちゃん、抱っこしましょうか?」

「ううん、あるく」

「そうですか?」

「うん。たいりょく、ちゅけねーと。おじょうを、まもれねー」

「まあ、ふふふ」


 皆に生温かい目で見られている気が、しなくもないのだけど気にしない。気にしたら負けな気がするから。

 そして俺が作った……いや、違う。俺が口を出して料理長に焼いてもらったパンケーキを、お嬢が可愛らしいお口でハムッと食べた。

 どうだ? 美味いだろう? 久しぶりだろう? 前の時は色々作っていたけどさ。


「んん~ッ!」


 とっても目をキラキラさせて、自分のほっぺに手をやるお嬢。なんて可愛いんだ。

 やっぱ天使がここにいるぞ。神様に気付かれて連れて行かれないように、隠しておかなきゃ!


「ベル、変なことを考えてないで、お前も食べなさい」

「あい」


 今度は旦那様に突っ込まれちゃった。俺ってそんなに分かりやすいか?


「お前は顔に全部出ているんだ」

「おやじ、ちょう?」

「ああ、黙って食べなさい」

「あい」


 3日も気が付かなかったからかな? 起きてから、すぐにお腹が空いてしまう。成長期だからな、うん。え、違うか?


「そんなにガリガリなんだ、身体が欲しているのだろうよ」

「おやじ、ちょうおもう?」

「ああ、だから少しずつこまめに食べるようにしよう」

「おー」


 みんな食べている時はとても静かだ。アイレさんも食べてるかな? と思って見てみると、しっかりとメイドさんたちと一緒に食べていた。


「おいちい?」

「はい、ベルちゃん。とっても美味しいです」


 ふふふん、良かったぜ。いい仕事したぜ。


お読みいただき有難うございます!

応援して下さる方、続けて読んで下さる方は是非とも下部↓の☆マークで評価をして頂けると嬉しいです!

宜しくお願いします。


今日ももう一話投稿します〜?

リリ同様にベルもよろしくお願いいたします(*ᵕᴗᵕㅅ)

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