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溺愛は最上級爆裂魔法のあとで〜ちびっ子従者は運命を巻き戻す〜  作者: 撫羽


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16/100

16-料理長

 この料理長は、ヒューゴ・イーグニスという。

 ちゃんと家名のある貴族で、ホルハティ家の遠縁にあたる伯爵家の五男坊だ。

 料理が好きで、自分は家督には関係ないから料理人になると言って家を出た変わり者だ。

 そして才能があったのだろう。修行を始めてすぐに頭角を現し、店を任されるまでになった。

 その頃に旦那様に声を掛けられ、この家の料理長になったそうだ。

 気のいい奴で、俺は仲良くしていた。ホルハティ家と同じ火属性魔法の家系だから、赤茶色の瞳をしているが、何故か髪まで真っ赤だ。

 だからといって強力な炎を出せるわけじゃないらしい。

 炎の強さは飽くまでも瞳の色で判断する。この料理長はせっかく髪が真っ赤なのに、残念なことに瞳は赤茶色だ。そこそこって感じだろう。


「料理するのに、丁度いい火加減ができるんだ」


 と、意味の分からないことを話していた。

 さて、材料を用意して卵を卵白と卵黄に分けて冷やしてもらう。

 この世界、冷蔵庫なんてないんだ。なら、どうしているのか?

 これがなんと魔石だよ。大き目の箱の蓋の部分に氷属性を付与した魔石が付いていて、それで冷やしている。冷気は上から下に流れるからな。

 その箱も魔道具師が発明したとかなんとかで、冷気を漏らさないようになっている。

 この冷蔵箱はそこそこのお値段がするのだけど、便利だから小型の物を庶民は一つ持っている。

 貴族だと、これは肉類こっちは野菜とか分けて使っていて、大型の物を何個か持っているらしい。

 それからひたすら混ぜ混ぜだ。


「これ全部混ぜるのか?」

ちょうちょう(そうそう)。けろ、らんぱく(卵白)は、べちゅ()にまぜまぜ」

「別か、ほうほう」

「とちゅうで、さとう(砂糖)をいれて、まぜまぜ」

「ほう」


 ずっとひたすら混ぜ混ぜ。料理長がだけど。俺の小さな手では、まともに混ぜられない。だから俺は口だけ出す。ふっふっふ、ビップみたいだぜ。


「ベル、なんでこんなの知ってるんだ?」

「え、()らねー」


 まあ、前世のことを言っても良いのか分からないので、あやふやにしておこう。


「おれがまほう(魔法)で、まぜまぜちてみる?」

「できんのか?」

「わかんねーけろ、やってみよう」


 ピョンと椅子からおりて、椅子をズリズリと引っ張って料理長の隣に持って行く。悪いね、椅子に乗せてくれるかな? と、両手を出す。


「待て待て、そんな小さな丸椅子だと危ないだろう」


 そう言って、料理長が大き目の木箱を持ってきてくれた。そこに乗せてもらう。おう、丁度いいぜ。じゃあ、やってみよう。

 料理長が混ぜているボウルに手を翳す。風属性魔法を使って混ぜ混ぜできたら楽じゃね? なんて思ったのだけど。


「えいッ」


 小さな竜巻がボウルの中に入って、グルグルグル。だけど、ピュゥ〜、ベチャッ! と混ぜているパンケーキの生地が空を飛んだ。


「あー! ベル! 止めろ! せっかくの生地が飛び散ってるじゃないか!」

「ええー、だってかげん(加減)がな」


 こんなもんか? なんて少し威力を抑えてみる。でも、ピュゥ〜ッ! ベチャベチャーッ! と飛びまくる。


「あー、なくなっちゃった」

「だから全部飛び散ってるんだって!」


 そこら中に飛び散って、ベットベトにしてしまった。


「ふむ、むじゅかちいな」

「アハハハ! バルのほっぺについてるぞ」

りょうりちょう(料理長)もら」


 微妙な力加減が全然できなかった。飛び散った生地を他の料理人も一緒にふき取ってくれて、また最初からやり直しだ。


「こんどこちょ!」


 よしッ! と腕を捲る。やる気満々だ。


「いやいや、なんでだよ! 俺が混ぜるって」

「え、ちょう?」

「ああ、ベルは見てな」

「あーい」


 まあ、プロにお任せしよう。ドラゴンって大きな魔法は得意なんだけど、微妙な力加減が苦手だ。

 任せちゃって、悪いね。と思いながら、口は出す。


「りょうほう、さっくりまぜまぜ」

「ほうほう、ここはさっくりか」

「あとは、()くんら」

「これはあれか、ふっくらするのか?」

「ちょうちょう、ちゃちゅが(さすが)、りょうりちょう」


 作り方で分かるんだ。やっぱプロだね。


「まあるく、ちょっびっとちっちゃく」

「小さくなのか?」

「うん、おじょうが、たべやちゅ()いように」

「アハハハ、分かったぞ」


 料理長が初めて作るのに、お上手に焼いてくれる。ふんわり膨らんで良い感じだ。


「あ、めーぷるちろっぷ(メープルシロップ)が、ねーな」

「ん? なんだって?」


 俺の言葉を分かってもらえない。舌足らずだから。ちょっともどかしい。


「あま〜い、ちろっぷら」

「ああ、シロップか。蜂蜜ならあるぞ」

ちゃーねー(仕方ない)ちょ()れでいいじょ」

「ベル、これって生クリームも添えたらいいんじゃないか?」

「おー、いいね!」


 いやいや、料理長ったらグッジョブだよ。あと苺とかあったら良いのにな。


「ふるーちゅねー?」

「フルーツか? そうだな、苺ならあるぞ」

「おじょうが、ちゅきだもんな!」

「アハハハ! そうだな!」

「ちょれも、ちょ()えるか?」

「おう、いいな」


 話しているうちに、大分俺の言葉が理解できるようになったみたいだ。慣れてくれたら嬉しい。


「りょうりちょう、いちごを、ハートにきって」

「え? ハートにか? どうするんだ?」

「たてに、はんぶん」

「おう」

「ヘタのとこを、ちょっとへこませて、ま〜るくなるように、きる」

「なるほどな〜、ベルはこんなのよく知ってるな」

「おれの、らぶ」

「アハハハ! ラブってか!?」


 笑うんじゃねーよ。パンケーキもハート型に焼いてもらえば良かったぜ。ラブがいっぱいになったのに。


お読みいただき有難うございます!

応援して下さる方、続けて読んで下さる方は是非とも下部↓の☆マークで評価をして頂けると嬉しいです!

宜しくお願いします。


お嬢へのラブがいっぱいです♡

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